第77話 殺人カップルは決行する
独断で英雄連合の殲滅を決意した我々は、ひとまず軍事基地の司令官達に連絡した。
ジェシカの魔術を使って一方的に通達して、向こうの返事を待たずに切断した。
とりあえず引き続き英雄連合への攻撃と魔王都市の防衛を行うように伝えておいた。
彼らがどう動くか知らないが、我々の行動に影響はない。
もし邪魔になれば粉砕するだけである。
しかし、私が揃えた戦力は聡明な者ばかりだ。
きっと自己生存を基に最適な行動を取れるはずだった。
それなりに有効なサポートを期待できるのではないかと思っている。
補給手段を持たない魔王都市は、結局は私の召喚魔術に頼るしかない。
ここで我々を死なせるような動きはしないだろう。
協力して戦争を楽しんでくれることを祈るばかりである。
「ハハ、大慌てだったな」
「計画が狂ってしまうんだもの。仕方ないわ」
「まあ我々には関係のないことだがね」
私は召喚魔術を使って、先ほど全滅した戦闘機部隊を呼び出す。
遥か前方へ突き進む部隊は、瞬く間に小さくなった。
召喚にあたって指定した時間は出撃直後。
彼らに死の記憶はなく、これから竜騎兵の部隊を殺すつもりで飛行しているはずだ。
もちろん、彼らの倒すべき敵はもういない。
いきなり現在地が瞬間移動したような錯覚に陥って、今頃は混乱しているのではないか。
私はジェシカの魔術を経由して、呼び出したばかりの部隊に指示を送る。
「標的変更だ。このまま英雄連合の別動隊を叩きたまえ。異論は受け付けない」
それだけ告げて通信を遮断する。
余計な質問をされても煩わしいだけだ。
彼らとて優秀な兵士である。
上下関係は絶対で、ここで何を為すべきか理解したに違いない。
遥か彼方へ飛んでいく部隊を見て、ジェシカはため息を洩らす。
「彼らも憐れね。使い捨ての駒にされるなんて」
「そうでもないさ。盤上でプレーヤーに反旗を翻す駒だっている。ほら、さっそく来たぞ」
飛び去る部隊のうち、一機だけが唐突に宙返りした。
ルートから外れて進路を反転すると、高速で我々に接近してくる。
遠くからでもパイロットの殺気が感じられた。
私は微笑を深めて片手の指を合わせる。
「支配に抗うのは悪くない。だが――」
戦闘機が攻撃を始めると同時に指を鳴らす。
機体を貫くようにして無数の鉄筋が召喚された。
内部のパイロットごと破壊された戦闘機は、我々のそばを通り抜けて墜落する。
「革命には暴力が必要だ。相手を打ち負かせられるほどのね」
串刺しになった戦闘機は、無残な形で大地に激突して爆発するのであった。