第66話 殺人カップルは拷問する
数時間後、私は荒野の街の一角にいた。
住民が誰も寄り付かないスペースである。
正確には私が立ち入り禁止としている。
後ろ暗い作業をする時、決まってここを使っていた。
反抗的な住民を"教育"したり、他国から攫ってきた重役で解体ショーをするのだ。
それらの映像を各国に送り出している。
とても高価かつ稀少で記録時間も短いものの、この世界にはビデオカメラに似た魔道具があった。
召喚魔術があれば無尽蔵に調達できるため、趣味と実益を兼ねて映像コンテンツを不定期に製作しているのだった。
まだ数は少ないが、それなりの娯楽にはなっている。
辺りは血みどろで、多種多様な拷問器具が転がっていた。
当初は掃除していたが、すぐに汚れるので今では放棄している。
おかげで何とも禍々しい背景となっていた。
まあ、スナッフフィルムを撮る上では悪くない演出だろう。
そんな地獄絵図の只中で、私は映像記録の魔道具を操作する。
撮影したばかりのデータをチェックしていると、食事を終えたジェシカがやってきた。
「どう、ダーリン? あいつは素直になったかしら」
「そうだね。まるで十年来の親友のようになったよ」
私はそばに置いた金属製の棺桶に足を乗せる。
踵で軽くノックすると、内部から掠れた声が洩れてきた。
「もう……殺して、くれ…………たのむ」
「ははは、小粋なジョークだね。一ポイントあげよう」
私は笑いながら指を鳴らす。
棺桶の中に炎が召喚されて、そこに閉じ込められた老人を炙り始めた。
元気な断末魔が辺りに響き渡る。
内部から棺桶を叩く音がする。
命の危機を訴えているのだろう。
しかしこの棺桶には、ジェシカが何重にも治癒魔術を施してある。
内部にいるだけで全身のダメージが打ち消されていく。
それ以上に多数の結界や封印術を仕込んであるので脱出は不可能だが、少なくとも命を落とすことはないので安心してほしい。
そう何度か説明はしているのに、残念ながら老人は理解できていないようだった。
騒々しい棺桶を見るジェシカは気の毒そうに呟く。
「ダーリンったら悪趣味ねぇ……」
「必要なことを実行したまでさ。おかげで様々な情報が手に入った」
「聞かせてもらえる?」
「もちろんだとも」
得意げに頷いた私は、この数時間で老人が吐いた事実について説明する。




