第63話 殺人カップルは来訪者と対峙する
(まずは反応を見てみるか)
私はショットガンを右手に保持しつつ、左手にマシンガンを召喚した。
それを腰だめで乱射する。
勢いよく地面を耕す銃撃が、揺らめく人影を薙いだ。
ところが人影は歩行を止めなずに平然と接近してくる。
命中した感じはなかった。
認識阻害で居場所を誤魔化しているのだろう。
当たっているように見えるだけで、実際は誰もいない場所に撃ち込んだのだ。
念のために扇状に掃射するも、特に効果はなかった。
「ほう、興味深い」
私は微笑して曖昧な人影を凝視する。
その本質を見極めようと試みた。
私が備える魔術的な才能は召喚のみだ。
生憎とこういった場合に役立つものではない。
しかし、私には殺人鬼としての経験があった。
前世から今世に渡って大量に命を奪ってきた実績である。
そうして培われてきた感覚は、時に論理的な思考を置き去りにして事実を浮き彫りにする。
つまり私の直感は、人影の正確な現在地を把握していた。
正体は未だ不明だが、居場所が分かった時点で問題は解決している。
何者だろうと始末すればいい。
ただ、せっかくの来客を瞬時に仕留めるのはもったいない。
わざわざ訪れた目的も知りたかった。
だから私は、人影が会話できる位置まで来るのを待つ。
幻のような挙動を見せる人影は、少し離れたところで立ち止まった。
それ以上は近付いてこない。
我々の攻撃を警戒しているのか。
いや、おそらくはそれが得意な間合いなのだろう。
人影から絶対的な自信を感じる。
中距離での戦闘に慣れているらしい。
考察を深めながらも、私は人影に向けて問いかけた。
「何者だね」
「答える義務は、あるか」
ざらついた声が返ってきた。
男女の判別が付かない。
合成音声に近い印象を受ける。
魔術で意図的に歪めているのだろう。
徹底して正体を隠蔽したいようだが、その徹底ぶりが却って本性を主張している。
それにしても、人影の返答にはこちらを嘲るような色があった。
反応を見て楽しんでいるようだ。
私は苦笑いして、マシンガンを消しながら述べる。
「私は無駄な問答が嫌いでね。素直になってくれるとありがたいのだが」
「素直……か。クカカッ、愉快なことを言う」
声がぎこちなく笑う。
人影が大きく動くことはないが、私を馬鹿にしているのはしっかりと伝わった。
どうやら真面目に話をする気がないらしい。
さすがに苦言を呈そうと思ったその時、ジェシカが私の前に進み出た。
「もういいわ、ダーリン。さっさと始めましょ。手足がなくても会話はできるんだから」
淡々とした口調で、芯まで冷え切っている。
位置的に顔が見えなかった。
それは幸いだったかもしれない。
――私を侮辱されたジェシカは、見事なまでに怒り狂っていた。




