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第60話 殺人カップルは街を築く

 ショッピングモールを召喚してから数日が経過した。

 やってきた人々との生活はなかなかに良好だ。


 彼らは近くに召喚したマンションで生活している。

 建築直後で住民がまだいない状態だったものを選択したので、特にトラブルはなかった。

 必要な物資はショッピングモールで補充させている。


 それでも足りなくなってきたので、他にも似たような商業施設をまとめて召喚した。

 ただし、今回は人間を抜きに呼び出したので住民は増えていない。

 これで当分は持つだろう。

 今後は不測のたびに新たなショッピングモールを召喚していくつもりだ。

 敷地が圧迫されてきたら消せばいい。

 改めて召喚魔術の利便性を思い知らされる。


 各施設やマンションには発電機を設置し、生活面は不自由ないようにしている。

 ゆくゆくはこの地に大規模な工事を施して、空気中や地面に含まれる魔力から発電できるようにしたい。

 そうすれば半永久的なエネルギー確保が可能だろう。

 発電機を増やす手間もなくなる。


 もっとも、それは将来的な予定だ。

 今すぐに着手するつもりはない。

 ある程度の地盤が整ってから始めようと考えている。


(今のところは大人しいな)


 自宅から外を眺める私は、コーヒーを飲みながら観察する。

 ショッピングモールの近くでは畑が耕されていた。

 クワを持った男達が汗水を垂らして働いている。


 女性陣は大きな鍋で料理を作っていた。

 モール内では別のグループが掃除や荷運び、住民の管理リストの作成などを行っているだろう。

 彼らは熱心に己の役割を演じている。


 我々は人々に仕事を与えた。

 混乱する彼らに業務を押し付けることで、他のことに頭が回らないようにしているのだ。

 仕事に慣れる頃には冷静になり、状況を受け入れられる心理状態になるだろう。

 そうならなければ、適応できずに悲惨な末路を辿るだけである。


 この二日間でそれなりの数が脱走したが、総数としては大したものではない。

 人々は滞りなく暮らしていた。


「はぁ、退屈だわ。そろそろ暴れたいわね」


 隣に座るジェシカが憂鬱そうに呟く。

 心なしか顔色も悪い気がする。

 せっかくの美貌に陰りが差していた。


 生粋の殺人鬼であるジェシカは人殺しに飢えている。

 穏やかな日々が嫌いというわけではないが、本能を誤魔化し続けるのは難しい。

 フラストレーションは発散すべきだろう。


(しかし、他国に遠征は実行しづらいな)


 せっかくこの地に街を築き始めたばかりだ。

 我々が何日も不在となる事態は避けたいところである。


 かと言ってジェシカだけを他国に送り込むのは不味い。

 彼女がやりすぎてしまう恐れがあった。


 そもそも移動手段が限られてしまう。

 行きは私の召喚した乗り物を使えばいいものの、彼女は高確率で大破させる。

 そうなると帰路に使う乗り物が無くなってしまう。


 乗り物以外で帰還するのはさすがに面倒だろう。

 月日をかければここまで戻って来れるものの、気軽に承諾できるものではない。


 暫し悩んでいた私だったが、ふと妙案を閃く。


「ん?」


 そのアイデアを脳内で吟味する。

 問題ないことを確信したところでジェシカの顔を見た。


 彼女は期待に目を輝かせて視線を返してくる。

 私が何らかの打開策を思い付いたことに気付いたのだろう。


 だから私は得意げに提案する。


「――ハンティングに行こう。きっと楽しめるはずだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第60話到達、おめでとうございます! [気になる点] >「――ハンティングに行こう。きっと楽しめるはずだ」 ……一体何を狩るんだろう? [一言] 続きも楽しみにしています。
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