第56話 殺人カップルは出迎える
昼食の片付けを終えた我々は家を出る。
周囲に漂う瘴気が、既にジェシカによって浄化されていた。
おかげで近隣一帯は人間の住める環境となっている。
私は数分ほど歩いて、到着した岩山を見上げる。
高さはそれほどでもないが、かなり広大なスペースを占めていた。
枯れた木がまばらに生えているだけで、生物の気配はない。
私は周囲との位置関係をチェックし、特に問題が無いことを確かめる。
「ふむ、この辺りでいいか」
「まずは何にするの?」
「見てのお楽しみさ」
私はそう返しながら召喚魔術を行使する。
岩山は一瞬にして消滅し、代わりに大きな建築物が現れた。
近代的な外観の端々には見覚えのある店名の看板がある。
隣接するように駐車場も設けられていた。
そこにはたくさんの乗用車が停めてある。
出現した物の正体に気付いたジェシカは、飛び跳ねて歓喜する。
「ショッピングモール! 懐かしいわぁ」
「品物も丸ごと残っている。あとでショッピングでもしようじゃないか」
「ダーリン大好きっ!」
ジェシカが私の腰に抱き付いてくる。
よほど嬉しいようだ。
そういえば彼女は買い物が大好きだった。
殺人ほどではないが、稼いだ金で贅沢するのが楽しいそうだ。
召喚したショッピングモールはかなり大規模である。
なかなかの量の魔力を消費するものの、別に私にとっては些事に過ぎない。
魔王戦でも枯渇することがなかったのだから、これくらいは簡単なものだった。
地盤ごと強引に召喚してきたので、建物が崩れることはない。
最悪の場合はまた別の手段で固定すればいいだろう。
ジェシカのサポートがあれば確実だ。
この地を拠点にするのなら、やはり大量の物資を備える施設は必要だろう。
いちいち用途に応じて店を召喚するのも面倒だ。
ショッピングモールは一発で解決してくれるのでありがたい。
何より地球を思い出させてくれるのが良い。
ホームシックではないが、たまには現代的な要素にも触れたくなるものだ。
久々に見たショッピングモールに感心していると、無数の視線に気付く。
私はジェシカの頭を撫でながら拡声器を召喚する。
スイッチを入れて息を吹きかけてみると、しっかりと機能してくれた。
これならばしっかりと声も通ることだろう。
「ふむ、少し待ってくれ」
「どうしたの?」
「この地を訪れる初めての来客だ。盛大に歓迎しようじゃないか」
私は一階のエントランスを指差す。
恐る恐る外に出てきたのはモール内の客達だった。
不安そうな彼らの前に、我々は歩みを進めていく。




