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召喚術師と白聖女 ~転生した殺人カップルは異世界ハネムーンを満喫する~  作者: 結城 からく


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第52話 殺人カップルは家を手にする

 そばに置いた音楽プレーヤーが上品なクラシックを再生する。

 大して高価ではない機種だが音質は実に良好だ。

 気に入っているメーカーだけにそこは信頼している。

 たとえ魔術で召喚したとしても、そのスペックには些かの劣化も生じない。


 私はソファで寛いでいた。

 カップのコーヒーを飲みながら小説を読む。

 ちなみにこの世界の書籍だ。

 典型的な英雄譚で、展開は意外と悪くない。


 良い気分でページをめくっていると、背後から声がかかった。


「ダーリン、朝食ができたわよ」


 振り向くとキッチンに立つジェシカが見えた。

 彼女はちょうどテーブルに料理を運ぶところだった。

 ピンク色のエプロンがよく似合っている。

 彼女の家庭的な面を強調していた。


 私はコーヒーを持ってテーブルに移動する。


「ありがとう。今日は何かな」


「トーストとサラダ、それにスクランブルエッグ。ジャムはどうする?」


「ベリージャムを貰おう」


 私が瓶詰のジャムを掴むと、ジェシカが苦笑した。

 彼女は自分のトーストを手に取りながら言う。


「ダーリンはいつもベリーなのね。バターもシンプルで美味しいのよ?」


「知っているとも。でも私はこっちが気に入っていてね」


 ジャムを塗った私はトーストに齧り付いた。

 カリッとした食感から始まり、小麦の香りとベリーの酸味が続いてくる。

 程よい甘みもマッチして、素朴ながらも最高の味わいである。


(幸せな日常……まさしく夫婦だな)


 ジェシカとの朝食を満喫しながら私は思う。


 各国への通達を始めてからおよそ二カ月が経過した。

 大陸上の主要国に同じ内容を伝えて回り、現在はこの魔王城の跡地に別荘を築いて生活している。

 ちなみに生活に必要な物は、別荘そのものも含めて召喚魔術で賄っていた。

 外は殺風景だが不便に感じることはない。


(愉快だな。異世界らしくなってきたじゃないか)


 此度の通達を受けて、各国がどのようなリアクションをするのか。

 現状はかなり静かだが、今からそれが楽しみであった。

 きっと大きな騒動に発展することだろう。


 各国が新たな魔王を放っておくはずがない。

 戦争が勃発するのではないか。

 もしそうなったら、数十年は楽しめそうだ。


 我々は魔王の肩書きが欲しかったわけではない。

 地位も名誉もそこまでこだわりはない。

 ただ、退屈とは無縁な素晴らしい日々を送りたかった。


 我々は思う存分に人生を謳歌したい。

 ただそれだけなのだ。

 充実した毎日を送るための方法が、他人より少々過激なだけである。


 とは言え、今の我々は夫婦だ。

 殺人鬼としての人生も大切だが、愛する妻との時間も重視すべきだろう。


 こうして二人の家を手に入れたのだ。

 現在はまだ不毛の地であるものの、力を合わせて開拓していきたい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >我々は思う存分に人生を謳歌したい。 >ただそれだけなのだ。 >充実した毎日を送るための方法が、他人より少々過激なだけである 不謹慎ながら、ここで笑ってしまった。w ……うん、末永くお…
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