第49話 殺人カップルは絶望を与える
我々はその後も建物内を蹂躙していく。
出会った兵士を問答無用で始末し、屍の道を築きながら探索を進めていった。
兵士達は必死で防衛に勤しんでいる。
あちこちで策を講じてくるが、いずれも我々を止めるほどの効力は持たない。
しかし彼らの動きが妙だった。
露骨な時間稼ぎが目立つ。
まるで誰かが駆け付けるのを待っているかのような立ち回りであった。
(何か秘密兵器でもあるのか?)
バリケード越しに放たれた矢を躱しつつ、私はグレネードランチャーで返答する。
高々と積まれたバリケードが爆散し、奥にいた兵士達が火だるまになって逃げ惑う。
そんな中、無事な兵士の叫びが聞こえた。
「剣聖様を呼べ! あの方でなければ止められんっ!」
その声に他の兵士が反応した。
彼らは僅かな希望に縋るようにして防衛を続ける。
一部は我々に向かって無謀な突進を決行してきた。
「ふむ」
「うーん」
私とジェシカは顔を見合わせる。
接近する兵士を殺した後、少し気まずい感じで笑った。
ジェシカは兵士達に見えるように片手を掲げてみせる。
「それってこの人のこと?」
彼女の手は生首を掴んでいた。
虚ろな顔をするそれは、銀髪の美女だ。
数分ほど前、窓の外からいきなり飛び込んで斬りかかってきたのである。
ジェシカとほぼ互角で打ち合えるほどの達人だったが、僅かな実力差が生死を決することになった。
結局、翻ったジェシカのククリナイフが、美女の首を断ち切った。
やけに強かったので、兵士達の言う剣聖かと思ったのだ。
ジェシカも同様の思考をしたのだろう。
「あ、あああっ」
「そんな、まさか……!」
「剣聖様は既に殺されている!?」
生首を目の当たりにした兵士達は一気にパニックに陥った。
どうやら剣聖が彼らの心の支えだったらしい。
戦力的な秘密兵器であり、最後の砦だったようだ。
それがとっくに崩されていたと知って絶望してしまった。
兵士達は一斉に逃走を開始した。
何もかもを放って我先にと走り去っていく。
そこに先ほどまでの戦意は皆無だった。
取り残された我々は拍子抜けし、そして落胆する。
冷めた表情になったジェシカは豪快なフォームから生首を投げ飛ばした。
「そんなに欲しいのならあげるわ」
高速回転する剣聖の生首は、逃げる兵士の後頭部に直撃した。
その弾みで転倒した兵士は自らの剣で首を刺して死んだ。




