第45話 殺人カップルは能力の可能性を引き出す
私に抱き止められたままのジェシカが魔王の死骸を見つめる。
彼女は目を輝かせて感心していた。
「すごい攻撃ね。あれだけの剣をどこから調達したの?」
「複製したのさ。ちょっとした裏技でね」
「裏技?」
そういえば伝えていなかった。
盗聴を警戒して何も言っていなかったことを思い出す。
私はジェシカに能力の仕組みについて話し始めた。
まず、あの魔剣は王城で見かけたものだ。
現代兵器ばかり取り寄せているので勘違いしがちだが、私の召喚魔術はこの世界にも適用される。
むしろそれが本来の使い方であった。
常人が関われるのは生まれた世界だけで、前世を利用して召喚する方が特例だった。
もっとも、この性質と複製は関係ない。
ただ次元を超えて物品を取り寄せられるだけである。
複製を成り立たせるのは、もう一つの特異性によるものだった。
それは、召喚対象の時間軸を意図的にずらしている点である。
簡単に言うと、私の術は過去の物品を取り寄せているのだ。
現在軸にある物品を召喚すると、そこにあったはずのオリジナルが手元に来るだけとなる。
本来の場所から手元に転送するだけだ。
しかし過去への召喚干渉は事情が違う。
既に通過した不変のシーンから、かつて存在していた物品を取り寄せるのだ。
そこに現在の状態は関係ない。
存在したという事実が重要なのだ。
何があろうとその事実は取り消せない。
たとえ私が干渉して強引に奪ったとしても、物品が消滅するようなことはないのである。
結果として過去は変わらず、望んだ物品を召喚したという現象が発生する。
明らか矛盾であるが、それを補完するのが魔術だ蝋。
これを繰り返すことで擬似的な複製を実現できる。
現象としてはバグみたいなものだが、私はそれを常用していた。
以上の理由から私はクローンに近い物品を入手できる。
大量の爆弾を用意したり、たった一本しかない魔剣を山のように出して魔王を切り刻むといった策を打てるのだ。
余談だが、他の召喚魔術師がこの特性を使うことはできない。
まず過去に干渉したり、複数同時の召喚が難しい。
その上に膨大な魔力を消費してしまう。
かなり燃費が悪く、仮にノウハウをマスターしたとしても一般人の魔力量では実現できまい。
無理に模倣すれば魔力が枯渇して死ぬことになる。
故に私オリジナルの術として昇華されていた。
「ダーリンってすごいのね」
「君ほどじゃないさ」
説明を聞いたジェシカの頭を撫でた私は、思い出したように手を打ち鳴らす。
無数の魔剣は消滅し、傷だらけの魔王だけが残された。




