第43話 殺人カップルは死闘を制する
網膜の焼けそうな閃光と、鼓膜を突き抜けんばかりの炸裂音が連続する。
しがみ付くジェシカをそのままにして、私は召喚したサングラス越しに発生源を確認していた。
大蛇の魔王が滅茶苦茶にのたうち回っている。
その腹が限界を超えて膨張し、破裂することなく内に秘めたエネルギーを留めている。
一万発の水素爆弾だから破滅的な威力だろう。
そして数分後。
大地には痙攣しながら横たわる魔王がいた。
鱗の隙間から煙を上げて吐血しているが、まだ辛うじて生きている。
周囲の地形は大して変わっていない。
それは魔王が爆発エネルギーを体内で相殺したことを示していた。
爆発はもう終了しており、新たな炸裂が起こる気配もない。
一万発は残らず作動したようだ。
「今の爆破でも死なないのか。さすが魔王だな」
拍手をしたい気分だった。
一応は殺す気で放ったのだが、瀕死とは言え生き延びるとは驚きである。
さすがは怪物の王だ。
想像以上に現実離れしたスペックであった。
何よりあの爆発を体内に受けて原形を残している。
馬鹿げたタフネスと言えよう。
魔王が木端微塵になった際に撒き散らされる爆発や有害物質を処理する備えを用意していたのだが、残念ながら必要なかった。
「ふうむ」
私は悶絶する魔王を観察する。
あの爆破で仕留めきれなかったのは、体表に張られた魔力の防御膜が原因だろう。
おそらくただのバリアーではない。
受けた破壊力に比例して強靭になる性質を持っている。
そうでなくては説明が付かない。
いくら頑丈と言っても限度がある。
魔王とて生物なのだ。
あれだけの爆発エネルギーを正攻法でどうにかできるはずがなかった。
防御膜は体内にも適用されていたらしい。
爆破で粉砕されそうな肉体を、あの防御膜で無理やりキープしたのだと思われる。
さらに優れた再生能力で生命を維持したのだ。
結果としてあれだけの被害に抑え込んだに違いない。
実に反則的な能力だ。
このような存在を負傷させて休眠状態に追いやった英雄に興味が湧くが、今は関係ない。
時間がある時にでも調査すればいいだろう。
「ほう、まだ起きるか」
魔王が頭を持ち上げてこちらを睨んでいた。
毒液を吐くような動きを見せるも、何も出てこない。
体内がまだ癒えておらず、毒液を発射できないらしい。
しかしその目は殺意に満ちていた。
あれだけのダメージを受けて死にかけながらも、まだ我々を始末するつもりなのだ。
その根性は素晴らしい。
だが、何事も根性だけでは解決できない。
「――君の出番は終わりだよ、魔王」
私は優越感に浸りながら指を鳴らす。
直後、魔王の巨躯が再び膨張を始めた。
しかし今度は閃光や爆発音を伴わない。
魔王が掠れた咆哮を上げる。
次の瞬間、その全身から無数の刃が飛び出した。




