第31話 殺人カップルは肉塊を量産する
我々は颯爽と階段を駆け下りていく。
高鳴る鼓動は、歓喜のあまりはち切れそうだった。
私はリボルバーとバタフライナイフを回転させながら、魔物達の位置や動きを観察する。
ジェシカは左手にククリナイフを携えていた。
緩く湾曲した分厚い刃を持つ武器だ。
右手にピアノ線の束を握り、カタナソードと斧は腰に吊るしている。
彼女の勇姿を映像として記録したいが、生憎と今回は私も参加者である。
たまに目視でチェックするくらいに留めておこう。
「右側は貰ってもいいかな」
「じゃあ私は左ねっ」
それだけ言葉を交わすと、我々は跳躍する。
階段と境に左右へ別れて魔物達の只中へ飛び込んだ。
刹那、大量の肉塊或いは血飛沫が宙を舞う。
私のリボルバーが六発の弾丸でその十倍以上の命を奪った。
閃いたバタフライナイフが、迫る魔物の首や胸を切り裂き貫き殺す。
弾切れとなったリボルバーを消して、一瞬でショットガンに切り替える。
フルオート式でドラム型マガジンを備えたそれを構えると、魔物達を嘲笑うように乱射した。
破滅的な威力を持つ散弾のシャワーがばら撒かれる。
憐れな魔物は為す術もなくミンチと化していった。
「キャハッ」
甲高い声が響いた。
ゴブリンの首をナイフで払いながら確認すると、消えゆく光の階段の向こうでジェシカが暴走していた。
ククリナイフが魔物を高速で解体する。
相手の反撃や防御を無視して斬り刻んでいるようだった。
刃にはやはり光が灯っている。
斬撃そのものを魔術的に強化し、腕力に任せて押し切れるように工夫してあるのだろう。
彼女の右手が動いて、ピアノ線が浮き上がる。
それが勢いよく張られれば、弾みの軌道上にいた魔物達が腰辺りで切断された。
内臓を晒しながら上半身がずり落ちていく。
ちょうど遠距離攻撃を行おうとする個体が集中的に始末されている。
ククリナイフの間合いが不利な魔物をピアノ線で倒しているらしかった。
よく見ると、ピアノ線の端が死体に括り付けられている。
あれで起点を作り、動き回るジェシカとの間に切断ゾーンを構築しているのだ。
きっと戦いながら細工したのだろう。
ジェシカの常套手段である。
彼女の操るピアノ線は人間でもパトカーでもビルでも無差別に切り崩す。
見慣れた光景だが、相変わらず大した度胸である。
「キャハハッ」
ジェシカは高らかに笑いながらピアノ線を引っ張る。
肉の裂ける音がして、括られていたピアノ線が勢いよく外れた。
よほど力が込められていたのか、解き放たれたピアノ線はジェシカを中心に遠心力に従って回転する。
血肉でどろどろになったその先端が私にも迫る。
「おっと」
私は紙一重で屈む。
頭髪を掠めるようにしてピアノ線が通過し、周囲の魔物達をまとめて切断した。
見事なコントロールでスピードを落とした末、ジェシカの手元に巻き取られていく。
私は周囲の魔物が崩れ落ちるのを見つつ、軽く手を上げて発言した。
「助かったよ。おかげで殺す手間が省けた」
「ふふ、それは良かったわ。横取りになっちゃってごめんなさいね」
「気にすることはないよ。まだたくさん残っているのだから」
私はフランクに応じながらショットガンを構え直す。
総量の一割も減っていない軍勢は、仲間の屍を踏み越えながら迫りつつあった。




