第22話 殺人カップルは次の標的を定める
瀕死の魔族が掠れた声で懇願する。
「もう、十分だろう……殺し、て、くれ……」
「そうだね。君は役目を全うしてくれた。楽にしてあげよう」
私はフレンドリーに応じると、血だらけのチェーンソーを稼働させた。
高速回転する刃を魔族の首筋に当てて力を込めて、さほどの抵抗を見せずに首を切断する。
役目を終えたチェーンソーを消して、分離した頭部にショットガンを密着させて発砲した。
指の僅かな動きだけで、人類の脅威と呼ばれる魔族は即死する。
飛散した残骸は再生しない。
さすがにこの状態からは復活できないようだった。
「献身的な情報提供に感謝するよ」
私は魔族の死骸に礼を告げて、ハンカチで顔を拭う。
地下室は全体的に血で染まり上がっていた。
私自身も汚れ切っている。
せっかくのスーツが赤くなってしまった。
拷問中は着替えておけばよかったと今更ながら反省する。
それだけが唯一のミスだった。
痙攣する魔族の死体を眺めていると、端の階段からジェシカがやってきた。
彼女はグラス入りの飲み物を持っている。
どうやらそれは果実酒らしい。
暇になったので買ってきたのだろう。
「お疲れ様。素直に殺してよかったの?」
「ああ、必要な情報は手に入った。これ以上は何も得られないだろう」
余興もしっかりと楽しんだ。
魔族からは何度も謝罪を受けた。
それを私が受け入れた形で決着したのである。
「ダーリンは優しいのね。私ならあと半日は拷問しちゃうもの」
「時は有限なんだ。フラストレーションは他の相手で解消するのも手だと思うよ」
そんな会話をしながら我々は後片付けを進める。
召喚した道具を残らず消して、魔族から聞き出した情報のメモをポケットに入れた。
壁や床の汚れは放置し、死骸もそのままに階段を上がる。
そこは狭い倉庫だった。
ちょうど何らかの話をしていた作業員は、こちらを見てぎょっとする。
彼らはこの倉庫の所有者で、隣接する店舗を運営する商人である。
魔族を拷問するのにちょうどいいスペースを探していたところ、快く地下室を提供してくれたのだ。
私は彼らに笑顔で声をかける。
「地下室を貸してくれてありがとう。助かったよ」
「そ、それで……死骸は貰ってもいいのか?」
「もちろんだとも。レンタル料として受け取ってくれ」
魔族の死骸には相応の価値があるらしい。
交換条件の材料としては破格だ。
少し勿体ない気もするが、どうせ我々には不要である。
あれだけ地下室を汚した以上、クリーニング費用も兼ねて渡してしまうのが一番だろう。
倉庫を出た我々は街の通りを進んでいく。
「魔王と接触するつもりなの?」
「ああ、向こうからオファーをかけてきたんだ。こちらから出向いて、しっかりと断りを入れるのがマナーだろう」
「きっと報復を考えているわよ」
「我々なら対応できるはずさ。魔王だろうと薙ぎ払ってやろうじゃないか」
「まあ。さすがダーリンね。私も張り切っちゃうわ」
「頼りにしているよ」
思わぬ出来事だったが、別に悪いことではない。
ターゲットとしてはむしろちょうどいい。
次の狙いは魔王だ。
文字通り生まれ変わった我々の力を披露してやろうと思う。




