見たい夢「妹1」
俺には妹がいる。しかし、5歳のときにうちに来た。
つまり、彼女とは血がつながっていない。
彼女もそれを知っている。
彼女のことを思うと、彼女は長年孤独に耐えていたと思う。
俺は25歳だが、いつも仕事から帰ると、勢いよく俺に抱きついてくる。
「お兄ちゃん、おかえり。ご飯あるけど先に食べる?」
いつものやりとりである。
一つ年下で、彼女も働いている。
小中高大と同じ学校で、いつも献身的に俺を気にかけてくれる。
その優しさが、痛々しいように思えた。
俺は、「ありがとう」という言葉を伝えているが、彼女に甘えていた。
高校の頃、妹と一緒に歩いていると、中学時代の女友達が挨拶をしてきたことがある。
学校生活について話していて、すっかり妹は置いてけぼりだった。
俺は、それに気づいていなかった。
女友達が去った後、妹に話しかけると、「別に…」、「知らない」と返される。
「さっきの人とお兄ちゃんかなり仲良かったね。元カノ?」
と聞いてきた。
「違うよ、ただの友達だよ。」
「ふーん、そうだんだ…。」
家に帰ると、夕飯を食べる時間帯になり妹がいつも夕飯を用意してくれるが、夕飯が無い。
両親は、共働きで家にずっといない。ふたりとも単身赴任でバラバラである。
いつも妹は料理をするが、俺は別に無理にしなくていいよと言うと、
「私が好きでやっているだけだから…。」と言う。
今日は本当に機嫌が悪い。
彼女の部屋をノックすると、「いいよ」と聞こえた。
中に入ると、殺風景でモノがほとんどない。
あるモノは、机と椅子、本棚とベッドのみ。
彼女は、「何?」と言ってきた。
「あのさ、俺さ、お前と二人でディ○ニーシーに行きたいんだけど、行かない?小学校6年生以来行っていなくて、行きたかったんだけど…。」
俺の言葉は、消えゆくような声になり尻窄まりであった。
彼女は、「二人で?」と聞いてきた。
「別に二人が嫌だったら、友達を連れてきていいからさ、行かn」
「ううん、二人がいい。」
強い返事だった。
それから、「いつなの?」と明るい声で聞いてきた。
内心よかったと思った。
「3月27日だよ」
「いいじゃん」
と言うと、彼女ははにかんだ。
次の日から、夕飯を作るようになった。
ディ○ニーシーに行く日が近くなると彼女は、下校中に、
「手繋がない?」と言って、指を絡めてきて、恋人繋ぎをしてきた。
俺は恥ずかしかったが、妹の嬉しそうな顔を見るのが幸せである。
そして、「お兄ちゃん、ちょっと寄り道していい?」と言う。
「別にいいけど…。」
と言うと公園の森に連れて行かれた。
そして、「お兄ちゃん、大好きっ!」と言って、抱きしめられた。
俺も、「大好きだよ。」といった。
そう言うと、彼女は、俺の胸にうずめていた顔を上げて、
「違うっ!私の好きは、愛だよ!
私はお兄ちゃんのことを…、お兄ちゃんのことを…、
男の人としてずっと好きだったんだよ!」と叫び、泣いていた。
「私知っていたんだよ。
私が養子で、お兄ちゃんやお父さん、お母さんと血がつながっていないことをっ!」
俺は、呆気にとられていて、立ち尽くしていた。
「私さ、いつも、寂しくて苦しかった…。
小学校4年生のとき、偶然にお母さんの貴重品を入れている棚に市役所の書類があったの。
読んでみると、私がみんなと血がつながっていないことがわかったの。
その棚には、お兄ちゃんが生まれた頃からのアルバムはあったけど、私のは一つも無かった…。
それからだよ。みんなが信じられなくなって、お兄ちゃんも信じられなかった。
寂しかった。
苦しかった。
でも、お兄ちゃんは、私のことを必死で楽しませようとしてくれた。
それが、私としては苦しかったけど、お兄ちゃんの必死さは、私を想ってのことだと感じた。
それから、私はお兄ちゃんを兄妹の愛としてではなく、一人の男の人として、想うようになったの。
苦しかった…。」
妹は、泣き崩れていた。
「大丈夫。無理はだめだ。」と俺はそう言うしかなかった。
「お兄ちゃんは、私が養子であることを知ってたの?いつ知ったの?」
「お前が家に来たときからだよ。」
「ひどい…。」
と言って、俺の首を力強く抱きしめて貪るようにキスをした。
俺たちは、このときから付き合うことになった。
俺に後悔はない。
彼女のいつもの穏やかな笑顔を見たいと、彼女が初めて家に来た頃から、
そう想っていたのだから…。
貴重なお時間をいただき、お読みいただき誠にありがとうございます。
私が寝る前に良い夢を見るために、ノートに書いていた短編小説です。
タイトルは、ナンバリングタイトルです。また、同様な名前が現れると思います。
皆様の快眠を願って、ここに著します。皆様に神のご加護がありますように。
God Bless You!!




