第九章 それぞれの仕事-23-
西では、ミーシャとエザフォスがすべてを終わらせていた。
街から逃げ戻ってきた小さな種の音を、アベレスがすぐに察知したのだ。
そのまま土の中で押し潰してやると、巨大な闇の植物は苦しみながら崩壊していった。
崩れ落ちる欠片を、ミーシャとタクシィの風が、穴へと吹き飛ばした。
幻獣の欠片を吸い込み、穴は完全にまた塞がった。
その後は、昨夜と同じ。夜の静寂だけが残る。
「……あんなのがいるの? タクシィ達も知らない……」
地に降り、エザフォス達と合流したミーシャは、どこか恐怖を抱いている
ようだった。
『幻獣は消えては生まれを繰り返すからな。俺様達が狭間の時を離れている間に、生まれた奴かもしれん』
「厄介だな……」
『最近は特に知らない顔が増えた。それだけ世界が混沌としているのだろうな』
「最近って二人からしたらどのくらいの時間なの?」
ふとミーシャは疑問に思う。
『そうだな、二、三百年前は、最近になるな、タクシィ』
「二、三百って……」
人間の感覚と随分違う。
『うむ。我は二百年ほど、狭間の時に戻っておらぬから、さらに時間の感覚が鈍っておるが』
幻獣達にとって、『最近』は、人間でいう、一、二月なのだろう。
共に過す時は、彼にとってそれこそ一瞬だ。
『だが、そのような中でも、どうしてか忘れられぬ者もいるのだ』
「え?」
タクシィがゆっくりと言う。
『おまえの父親、スィエラもその一人だ』
ミーシャの瞳が揺れた。
最も知りたくもあり、一番聞きたくないことだった。
『おまえが聞きたければ、いつでも、話そう』
タクシィの言葉に、ミーシャは口を開きかけ――
「とりあえず、戻るか」
エザフォスの声に、タクスィは少し救われたのだった。




