第八章 西に出者-4-
エザフォスとアベレスの連携は見事なものだった。
『飛ばさせんぞ、アブリストス。まあ、飛んだところで、貴様の重い身体などすぐに地へと落としてやるぜ』
アベレスの挑発に、アブリストススが咆哮し答えた。
両翼を震わせ、巻き起こる風で牽制している。
『ふんっ、そんな風など……』
「アベレス、横に飛べ! なんか来るぞ!」
エザフォスが叫び、アベレスはそれに従った。
『のぉ⁉ また雷か! 天の未知なる力はこれだから……!』
天と地、まさに神話の戦いのようだった。
雷は、岩に当たり、またジリジリと音を立てた。当たればしばらく動けなくなりそうだ。
エザフォスが再び叫ぶ。
「そんなに挑発すんな! こんなのを上から打たれたら、面倒だぞ!」
『そうだな、地で決着をつけてやる』
アベレスが唸り、地から複数の棘が生まれる。地から離れたそれは、アブリストスに向かい放たれる。
土の棘が、アブリストスの両翼を貫いた。
耳を劈く咆哮が辺りに響き渡る。
「これで飛べんな。その首を切り落としてやる!」
アベレスが、エザフォスを背に乗せた。獅子が、全速力で地を駆ける。
アブリストスの周りに、複数の雷の球体を生み出した。無秩序に放たれるそれを、アベレスは速度を落とすことなく避けていく。
『アブリトス、これで終わりだ。跳べ! エザフォス!』
「おうよ!」
スピードに乗ったアベレスの背を踏み台にし、エザフォスは跳躍した。
天高く跳んだ人間を、アブリトスは見やる。その咢を開き、金色の雷を吐き出そうとすれば、下からアベレスが体当たりする。
『やっと見つけた俺様の唯一の相棒だ。貴様に葬られては堪らん』
アブリトスは、一気に放電した。
『ぐぬっ……!』
「アベレス!」
『己の心配をしろ!』
このままでは、斧を振り下ろすエザフォスも巻き添えになる。
と、突風がエザフォスを包んだ。
「どわぁ⁉」
「もう! ハラハラする!」
放電の届かない場所にエザフォスを下ろしたのは、ミーシャのタクシィ・アエトスだった。
『アベレス、離れろ。こいつは、まだ何か隠し持っているようだ』
『ほお? タクシィ、おまえが俺様に話しかける時が来るとは』
『ふんっ。好きでしているわけではない。一時的なものだ』
大鷲と獅子は、互いに宿主の傍へと戻る。
風と土。本来ならば風が土を制してしまうため、共闘には向かない。
が、それはカズホとミーシャもそうだった。火が風を制してしまう。それでも、共に戦ってきた。
互いのテリトリーを侵害しない戦い方を仲間だからできる。
「足元、頼んだわよ、エザフォス」
「おう、そっちは頭を、ミーシャ」
「分かってる。行くわよ、タクシィ!」
『了解した』
巨大な鷲の背に跨り、ミーシャは空へと舞い上がった。
風が心地良かった。




