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第六章 土獅子-8-

 翌日も、二人はまたルイーズの元へと向かった。

 次の仕事を紹介してもらうためだ。

「もう少しお金を貯めて、情報を集めてから次の街へ行きましょ」

「情報か……俺みたいに、別の世界から来た人間がいるのかな? てか、どこで情報を?」

 この国の勝手は少しずつ分かってきているが、まだ一人で動くには不安が残るカズホである。行き来できても、宿屋と役所、露店の品を見る程度だ。

 サリアの住人達は、まだ余所者に寛容だが、場所によっては危険だった。首都イーリアは特に、余所者にはあまりいい顔をしなかった。イーリアを離れた理由は、それもあった。

「ルイーズさんなら、変わった過去を持つ傭兵も知っているだろうから、訊いてみましょ。代わりに、カズホのことも話すことになると思うけどいい?」

「それは構わないよ」

 もしかすると、同じような目にあっている者がいるかもしれない。自分の経験談が何かの役に立てば、と思った。

(でも、何も得られないとなると、俺と同じ境遇の人間はいないってことになるよな)

 実際に、カズホが元の世界にいた時だって、そんな話を聞いたことは一切ない。

 SF映画で、宇宙人を受け入れているがそれは各国の政府が秘密裏に行っているという設定を見る。本当にそうされているのなら仕方ないが、ほぼそんなことはないだろう。

(あればもちろん面白けど)

 夢は夢のままでいてほしいものもある。

 役所の立派な造りが見えてきたところで、カズホは驚きを隠せず立ち止まった。ミーシャも、目を丸くして彼に倣う。

 それは、役所の前に立っているある人物のせいだった。

「……盗賊、さん?」

 そこには、つい昨日、複雑な想いで別れた男がいた。

 男はこちらに気付くと、満面の笑みで腕を振った。完全に知人扱いだ。

「おお! カズホ、ミーシャ嬢ちゃん! やっぱりここに来たか!」

「なっ、なんで? どうしてここに?」

 言ったのはミーシャだった。

 今まで盗賊討伐の仕事を請け負ったことはあるが、次の日に釈放など聞いたことがない。

 が、目の前の盗賊は、意気揚々とカズホとミーシャに歩み寄ってくる。

「捜す手間が省けたぜ。あの役人、俺にまで馬鹿正直に教えてくれんだな」

「あの役人って、ルイーズさんのことか?」

 カズホが訊けば、男は「確かそんな名前だったな」と笑った。

「陰険な奴かと思ったが、人は見た目に寄らねぇな。俺を昨日捕まえた傭兵達を教えてくれってつったら、今日も仕事をもらいに来るだろうって言ってよ。まだ来てねぇつぅから、役所の前で待ってたらどうた? とさ。で、おまえらを待って立ってわけよ」

「待ってたって、なんで……? まさか、しかえ……」

 ミーシャが疑うような口調で言い終わる前に、男が上着を脱いだ。

「ちょっ……公衆の面前でッ……!」

「ミーシャ、違う、これ!」

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