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第五章 初仕事-8-

「どうぞぐ、は?」

「助けられる奴は、助けといた」

「ありがど」

「なんであなたがお礼を言うのよ? 盗賊達ならまだしも。まあ、言われても嬉しくないけどさ」

 ミーシャの声が震えているように聞こえた。

 彼女の顔が見たいが、まともに見られない。目が霞んでいるのもあるが、自分の顔が酷いことになっているだろうから、恥ずかしかった。

「くっ……」

 青の男のくぐもった声がする。

「あなたは、一体……」

「それはこっちの台詞よ。あなたは一体何者? こんなことをして……! 何が目的なの?」

 威嚇するようなミーシャの詰問に、青の男は鋭くこちらを睨んできた。

「簡単なことさ。奪う奴から奪う。今回は、僕が前々からちょっと気になっている物をこの下種達が奪ったという風の噂も耳にしたものだから。が、それ以上に今日は気になるものを見つけました」

 青の男が、しなやかな指先を向けた――その先に。

「お、れ?」

 声がやっとまともに出るようになり、ようやく明快になったカズホの視界には、青の男の指先があった。

 男は、出会った時と同じ真面目そうで優雅な雰囲気を纏っていた。が、この男の中身を知れば、それは恐ろしい第一印象だとカズホは思った。

「あなたのその力をもっと見てみたい。火は元々何かを滅し、奪う力。あなたがこの先どう使うのか、僕は知りたくなりました」

「俺は、何も奪わない」

「そう思っているのは、あなただけかもしれませんよ。だから、僕もあなたについて……」

「絶対に嫌!」

 すかさず言ったのはミーシャだった。

「カズホと、あんたなんかを一緒にできない!」

「別にどうこうしようってわけじゃないのですが」

「嫌ったら嫌! それでもつてくるって言うなら、あんたを世界の果てに吹き飛ばしてやるんだからぁ!」

 それには、青の傭兵もこれにはやれやれといった風に、肩を竦めた。

「今後、彼女と別れることがあれば、いつでも声をかけてください。どこへでも、お供しますから」

「絶対にそれはないから。絶対にないから!」

「ミーシャさんには言っていないのですが……」

「あんた、前々から気になる物があるんでしょ? それでも何でも持って、どっか行いきなさいよ!」

 ミーシャの剣幕に、青の傭兵はふぅと息を吐いた。

「今後も、『あんた』や『青の傭兵』では居心地が悪いので、僕の名を。僕はザフィリ。彼女の名は、エフィアルティス・フィズィ」

 ザフィリが左手首を二人に見せるように上げた。そこには、くっきりと蛇の痣がある。水使いの証だ。

「さあ、あんまりここにいると、本当に世界の果てに吹き飛ばされそうなので、僕は退散するよ。さっきエフィにちょっとこの周辺を見てもらったが、僕が気になっていた物はもうここにはないようだしね」

 ザフィリは、踵を返す前に、やはり小さく会釈をした。

「またどこかで。ミーシャさん、カズホ」

 彼はそう言って、水の大蛇エフィアルティスを顕現させたかと思えば、その中へと入り、大蛇と共に一瞬で姿を消した。

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