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戻ってきたワケ

 チェーブはゴクリと息を呑み、少しの間をおいて口を開いた。


「どう殺された?」

「右肩口から袈裟斬りさ。ヘソの上までザックリやられた。」


 チェーブの表情が驚きに変わる。少女の回答は当たっていた。俯いていた少女がゆっくりと前を向く。チェーブは自身の表情を見せぬように一度体ごと横を向きテーブルに右腕を乗せ、息を吐いてから顔だけを前に向け質問を重ねる。


「・・・場所は?」

「北の端っこのゲナプ村だ。ほとんど領の境だった。仕事が終わったあとに村外れの小屋を借りて寝泊まりしてたんだが、そこで殺られた。」

「依頼の獲物は?」

「ムステラだ。大きさは牛ぐらいだったか。あれはミンクが魔獣化したヤツだな。イタチのムステラよりいい毛皮が取れた。」

「何人で狩った?」

「いたのは俺含めて3人だが、1人は見学だから実質2人だ。」

「一緒に居た2人は?」

「マーレとリースの兄妹だ。」

「マジかよ・・・。」


 全て正解だった。チェーブから殺気がなくなり、右手で顔を覆って天を仰いだ。しかし、まだ信じてはいない。


「よく調べてるじゃんか、お嬢ちゃん。あんた何者だ?」

「やっぱり信じらんねぇよな。」

「当たり前だ。タータさんは死んだ。マーレとリースが目撃してる。実は生きてましたってんなら、その見た目はありえない。」

「だよなぁ。俺もそう思う。」


 少女が手を上げてヒラヒラとしてみせる。どう見ても10歳前後、よっぽど発育が悪いとしても13歳未満にしか見えない。


「助かった理由もこうなった理由も嘘くせぇ話になるんだが、まぁ聞いてくれ。」

「・・・わかった、聞こう。」


 チェーブが居住まいを正し、正面を向く。少女は手を組み前に乗り出しながら話し始めた。


----


 端折って言うとだ。俺は魔法使いに助けられた。いや、そんな怪訝な顔すんなよ。俺だってそんなこと言われても信じねぇだろうが、本当なんだからよ。いいから聞いてくれ。


 魔道士っているだろ?貴族は魔力を持ってるが、その中で才能あるヤツがなる、俺らとはまるで関係のないお偉いさんだ。色々やってるらしいが、魔力を流せば効果が出るって道具を作ってたりしてる。魔道具ってやつだ。ああ、関係ないこともないか。この衝立なんかそうだな。ただ、道具も作れるし魔力がある連中でも、魔道具が無けりゃ魔法は使えねぇのが普通だ。火を出したけりゃ火を出す魔道具が必要ってな。


 で、魔法使いだ。こいつは魔道士のすげぇ版だ。道具も無しに魔法が使える。火や水をいきなり空中に出したりするんだぜ。それでいて桁違いなことが出来るんだわ。暖炉に火をつけるのが楽になる、なんてレベルじゃねぇ。鉄を溶かすのだって簡単にやっちまう。実際に見せられたからな。ああ、そうだ。まさに御伽噺そのままだぜ。


 とりあえず順番に話すぞ?切られた俺はその場にぶっ倒れた。動けねぇし声も出ねぇ。相手はどうやら貴族で、自称正義の味方ってヤツをしてんだとよ。悪は切られるべきだとかなんとか言ってた。まぁそれは関係ないから置いとくぞ。


 なんだ?違ぇよ、俺がんなことするかよ。あん?あぁそうだよ!俺は見た目で勘違いされて殺されたんだよ!悪いか!クソッ、リースの言うこともうちょっと聞いておくんだったぜ。よく「もう少し身なりを整えないと勘違いされるよ?」って言われてたんだ。お陰で酒場の笑い話そのままの死にっぷりだったんだよ!


 オラッ、笑ってんじゃねぇよ!いいか、続けんぞ。で、ぶっ倒れて呼吸もロクに出来ねぇもんで、いよいよ覚悟を決めてたんだ。そしてふと気づいたら、横に魔法使いが立ってた。俺を斬った貴族の野郎も慌ててたな。


 ん?いや、周りに人はいなかった。貴族とその従者っぽいのに、俺とマーレとリースの合計5人だけだ。俺が気配に敏感なの知ってんだろ?お前にも教えたけど役に立ったはずだ。違うか?だろ?そうか、それで左腕は骨折で済んだのか。いや、お前は油断しやすいからな、少し心配してたんだ。そうか、役に立ったんなら師匠冥利に尽きるってもんよ。


 まぁそれはいいとしてだ。俺にも気づかれねぇ方法でそいつは唐突に現れた。いきなりだ。人間とは思えねぇから最初はお迎えだと思ったんだが、普通に声で語りかけてきたんだ。「お前はもうすぐ死ぬが、協力するなら新しい生をやってもいいぞ、どうする?」ってな。


 ああ、最初は俺も悪魔だと思った。魂を取って云々ってヤツ。でもそいつが否定したな。とりあえず話もできねぇのは困るってんで、何か俺に魔法をかけたみたいでよ。痛みが引いて、なんとか声も出るようになった。助かったかと思ったら、すぐに切れるから早く決めろって言われた。そんとき「お前は悪魔か?」って聞いたら「魔法使いだ」と答えたんだ。


 そしたら貴族野郎が「悪の魔道士め!」とか言いながら斬りかかったんだけどよ。いや、斬りかかろうとして出来なかったんだわ。こう、剣を振りかぶったままピクリとも動かなくなってな。そいつの従者も走り出そうとした姿勢で固まってた。で、俺はコイツは本物だってビビッときて、その話に乗ることにした。どうせ放っておいても死ぬだけだったしな。


 ただ、条件を鵜呑みにしたんじゃ芸もねぇし要求したんだわ。マーレとリースが貴族野郎の餌食にされねぇよう、テンプトタール、つまりココに俺のタグと荷物もまとめて逃がしてくれってな。そんな街知らんって言うから、南の一番人が多い街だって教えた。そしたら一瞬で2人の気配が消えた。あの2人はなんて言ってた?そうか、やっぱり気付いたらこっちに戻ってたってか。それが本物の魔法ってやつらしいぜ。まぁとりあえず2人がちゃんと助かっててよかったわ。


 なんだ?んなもん当たり前だろうが。師匠ってのは弟子が生きていけるように色々教えるんだ。いよいよ危ねぇってなったんなら逃がさねぇでどうするよ。そうそう、預けてるものってのはそれだ。マーレとリース、2人に会いに来たんだ。何かあったらウースの世話になることにしてたからな。しかし解散してたとはなぁ・・・ああ、また脱線してるな。悪い悪い。


 そんでまぁ、話に乗るって言ったところで気を失ったのか、記憶が飛んでな。気付いたら北の国にある魔法使いの家で、俺はガキの身体になってたってワケだ。俺が死ぬ直前に、魂と記憶をこの身体に移したんだとよ。あ?どうやってっなんて知らねぇよ。そういうことが出来るから魔法使いなんだろ。あぁ、なんでそんなことすんのかってのは知ってる。またちょっとややこしいんだがな。


 なんでも魔法使いってのは、身体を入れ替えながら生きてるんだそうだ。ボロくなった身体を捨てて、前の身体よりいいモン作ってそっちに移るんだとさ。で、次に使う身体の試験用を作ったから試したい、と。その身体を俺が動かして試験しろ、と。そういうワケさ。


 そうだ、今の俺の身体は魔法使いの身体だ。だから衝立に魔力が流せたのさ。そっからは2年間、つい5日前まで色々と試験やら実験やらさせられてた。で、5日前にしばらく自由にしていいって言われてよ。じゃあ2人は無事なのか、マーレがちゃんと育ったのか、それを自分の目で見とこうって思ってよ。色々と準備して今日ココに来たワケさ。


 なんだよ難しい顔しやがって。まぁ信じらんねぇ話だってのは俺も思うがな。こんなもん、笑い話にもなりゃしねぇ。他人には言うなよ?絶対面倒なことになるからな。弟子だったお前だから話したんだ。いいな?


説明的なセリフ多くてスマヌ・・・スマヌ・・・

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