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TS.異世界に一つ「持っていかないモノ」は何ですか?  作者: かんむり
ChapterK 〝アルカナメモリア ―25years a go―〟
102/220

K:2 「ゲーム」★

「エルちゃん!100話目よ!」

「うん」

「ひゃくわよひゃくわ!!!」

「そだね 俺ら出番ないけどね」


……というわけで今回が通算100話目です!

これからもよろしくお願いします!


挿絵(By みてみん)


……100話以内に完結とか息巻いてたのになんでだろう?

 ある程度支援系の魔法が使えるミァから筋力アップと耐久アップの魔法を受け、オレが先陣を切ってサタンへ攻撃を仕掛ける。

 こう見えて剣の速さにはそれなりに自信がある。中級クラスの魔物であればまず間違いなく、上級クラスでも7,8割は一発お見舞いできる横なぎの一撃。

 しかし相手はその頂点に君臨する者。難無くこれをかわして見せると、隙ができたオレのわき腹めがけて、どす黒い魔力の帯びた拳が襲い掛かる。

 もちろんオレとて、こんな見え透いた攻撃がラスボス相手に通用するとは思っていない。

 オレは振りぬいた勢いのまま、カウンタ―を仕掛けにくるサタンから距離を置くように体を動かす。そうしてできた隙間に盾役であるガレイルがすかさず入り込み、防御態勢を取った。


「†漆黒ノ拳衝ダークネス・インパクト†!!」

「せえェいやァ!!!」


 ガレイルの大盾とぶつかり合う、小さくも強大な禍々しい拳。

 爆発音にも似た音をこの薄暗い部屋に響き渡らせると、その直後にサタンはガレイルの大盾に向けて回し蹴りを叩き込む。

 先ほど同様……いや、それ以上に魔力の込められた一撃を受け、ガレイルは守りの姿勢をそのままに、後ろへと大きく足を滑らせた。

 オレはガレイルの影から出てサタンへもう一撃与えてやろうと動くが、サタンはコレも余裕の笑みを浮かべながら避け、再び王座の前に立つ。


「うーん、今のは『†漆黒蹴圧衝ダークネス・ブレイカー†』かな! 相手は死ぬ!」

「死んでねえだろが」

「ありゃ、そっか! ……いや、でもやっぱりガレイル君じゃなかったら死んでたから相手は死ぬ!」

「……クソ、調子狂うなぁもう。 それで、準備運動は済んだかよ」

「おや? 今のが全力じゃなかったんだ! へぇ」

「こんのガキぃ……」


 完全に舐められてら。

 まあ、向こうとて一度圧勝した相手に負ける気なんざさらさらないわけで……にしても一々言動が癪に障る。

 ダークネスなんだって?

 ちょっと前の恵月みたいなこと言いやがって、なんだ、そういうお年頃なのか?

 見た目そのまんまの中身中学生なのかあいつは!?


「前会ったときはもうちょっとマシなヤツだと思ってたんだけどな……闇の王にマシも何もねえけどよ」

「スケさん、落ち着いて……あっくんも」


 あっくんもと言うアルカの言葉を耳にして、ちらりとだけミァの方へ視線をやる。

 確かに少しばかり落ち着かないという様子を見せているが……そういえば、お前も丁度そういう年頃だったな?


「大丈夫です。少々癇に障っただけですので」

「それ大丈夫か? ……まあいい、オレも大丈夫だ。アルカも次から手だしていいからな」

「う、うん」


 斥候であるミァが先導、奇襲を仕掛け、その後はオレとガレイルの前衛部隊が斬り込み、アルカの攻撃魔法で締める。これがいつもの流れなのだが、今回のように最初から正面対決の場合はミァに最後まで中間管理の支援を任せている。

 支援系の魔法は比較的簡単ではあるものの、先ほどオレが受けたような肉体に作用する物は、力加減を間違えば大惨事にもなりかねない……非常に集中力を要するものだ。

 オレらの中では一番冷淡な性格をしているミァだからこそ任せているのだが……。


「大丈夫です。あの気取ったような技名が嫌いなだけです」

「お、おう……そうか」


 本当に大丈夫なのだろうか……?


「お話はもういいかい?」

「おう、問題ねぇよ。わざわざ待ってくれるとは優しいな?」

「ラスボスってそういうもんじゃん? ゲームの中でも、HPMP全快させてくれたりさ!」

「……何?」


 こいつ、今なんて――。


「さあ! 続きをしよう! ボクを倒してみなよ、勇者御一行様!!」


 考えようとしたところで、サタンがそう叫びながらオレへ向けて突進を仕掛けてくる。

 オレと互角か、それ以上の速さで仕掛けてくるサタンにガレイルもギリギリ追いつかず、オレは咄嗟に体をひねろうと―――。


(―――!! ダメだッ!!)


 ひねろうとして後退させた右足を踏ん張り、剣を胸の位置で構える。

 避けてしまえば後ろにはミァとアルカがいる。

 前衛が敵を足止めできないだなんてもっての外だ。


(それにこうすれば……)


 オレがこの手に持つ片手剣。

 所謂『聖剣』……伝説のつるぎってやつだ。その昔、魔王を葬り去ったと言われるこの剣。闇の王とやらに効くのかは半信半疑だったが、さっきサタンのヤツはオレの攻撃をどちらも『避けて』見せた。

 まだ確証に至るには足りない気もするが、恐らくヤツはこの剣のことを知っていて、触れたらヤバいことを理解している。

 つまりオレがこうすれば、ヤツは軌道を変えざる負えない。


 その想定通り、聖剣の間合いギリギリのところで軌道修正にかかるサタン。

 オレは逃すまいと一歩踏み出し、サタンの動きに合わせて聖剣を振るう―――が。


「へぇ、君がアルカさんかぁ」

「!?!?」


 確かにサタンのヤツが通るであろう軌道をなぞり、剣を振るったはずだった。

 しかし気がつけばヤツは後ろ……アルカの目の前で彼女を見上げ、興味深そうにそう呟いていた。


「アルカッ!!」

「この――!!!」

「おっと?」


 サタンがアルカの頬に触れようとしたところでガレイルとミァがサタンに向けて襲い掛かるが、これもヤツに触れることはなく、そのまま三度玉座の前へと飛び退いた。


 疑いようもなく……完全な舐めプ。

 ヤツの楽観的な態度も相まって、全員が少なからず冷静さを見失いつつあった。


「……ちょこまかと!」

「ダメだよーこんなわかりやすい罠にはまっちゃー。ボクちょっとがっかりしたよ?」

「んだとッ!?」

「スケさん!」

「……わーってる」


 事実、オレは完全に安直な罠にはまっていた。

 オレが聖剣を構えれば、サタンはそれを避けるように動かざる負えない――それが分かっているのなら対処など容易い。それはオレもヤツも同じこと。

 オレが軌道を逸らしたサタンめがけて仕掛けるのであれば、サタンもその軌道に入らないようにするのは当たり前じゃないか。

 冷静さを欠いたオレはそんなことにも気が付かず、ご丁寧に用意されたサタンの幻影を真っ二つに斬っていた。

 本物は幻の影に隠れ、ひとっ飛びに後ろへ……ああ、実にシンプルなもんだ。


「さあ、もっと楽しもうよ! せっかくのゲーム、こんな程度で終わらせちゃったらつまらなさ過ぎるでしょ? ハハハッ」

「チッ……ゲーム感覚かよ」

「ゲームだし?」

「……もう喋るなお前」


 これ以上相手のペースに乗せられるな。

 冷静になれ。

 そう言い聞かせ、オレはその気を聖剣一つに集中させる。


 既にヤツの弱点は割れているんだ。

 だったら答えは一つ……どうにかしてこの聖剣の一撃をヤツの脳天に叩きこむ。ただそれだけだ。

 そのためだけに意識を集中させろ。


 これはゲームなんかじゃねえ。

 最初にヤツが言った通り……これは殺し合いだ。

 4対1で、しかも油断しきってる今のうちにカタをつけろ。

 殺し合いに卑怯も何もねえ――ヤツをその土俵に添えたまま殺せ。


 一瞬の思考を済ませると同時に、オレは聖剣(あいけん)へ魔力の蓄積を開始する。

 それは「オレがトドメを刺す」という、仲間に向けた合図にもなる。


「……目つき、変わったね」

「ちっとばかし頭が冷えたんでな……お前のおかげで」

「それはよかった。じゃあ無駄話はこの辺にしておこう♪」

「オウ」


 多少感づかれるのは致し方なし。

 それでもサタンは自分が勝つと確信している。

 余裕上等、第三ラウンドだ――!!


 * * * * * * * * * *


「―――かはっ!?」

「何が……」

「うぐ……」

「みんな!?」


「……♪」


 意気込んだ直後のこと。

 まばたきするほど一瞬の間に、オレたち……サタンとアルカの二人以外の面々は、血反吐を吐きながら床に伏していた。

お読みいただきありがとうございます。

感想、誤字報告等ありましたら是非よろしくお願いします!

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