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13話

 3日目 午前3時



 僕と柏木さんと閻魔様の三人は端末のマップ機能を使って、公園の公衆トイレに置き去りにされたラブドール回収作戦の推移を机に乗り出して上空から見下ろすように見守っていた。


 柏木さんが「あのぉ、伊藤さんってどういう人なんですか?」と閻魔様に尋ねる。


「ギャンブル中毒のクズだよ。未練は『もっとギャンブルがしたかった』。だけど、天国でも地獄でもギャンブルは大流行だって教えたら目をキラキラさせてた。けど、ボクは猛烈に眠かったから、月曜に出勤してから天国に送ろうと思ってこの部屋に通した」


 サラッと言ったけど、職務怠慢じゃない? まぁ、残業続きで大変だとは思うけど。


 しばらくすると、ラブドールが横たわる個室の中に、伊藤さんと思われる全裸の男がスマホ片手に姿を現した。


「キャッ」と柏木さんが両手で自分の目を覆う。


 男がスマホをいじりだすと、閻魔様のスマホから着信音が鳴った。


『これから、どうすればいいんだ?』画面とスマホから同時に声が聞こえてくる。


「まず、目の前の人形を仰向けに寝かせろ、そうしたらその上に自分も仰向けになって重なれ。いいか? 仰向けだぞ! 断っじて、うつ伏せじゃないからな!」


 それを聞いた柏木さんは両手で目を隠しながら、耳を真っ赤にしてぷるぷると小刻みに震えている。


『よいしょっと、それから?』


 伊藤さんは言われた通りの体勢になり、続きを尋ねてくる。真上からの映像だから局部が丸見えだ。


「目を瞑って、雲の上で寝そべっている所をイメージしろ。波に漂いながら昼寝をしている状況でもいい。イメージ出来たら、その体勢のままゆっくりと沈む感覚をイメージしろ」


『了解』そう言って、伊藤さんは、お腹の上で手を組んで目を瞑り、少しすると、スっとラブドールの中に沈むように姿を消した。


「意識はあるか? ゆっくりと立って、辺りを見回してみろ」


 伊藤さんが膝を立ててヨイショと男らしく立ち上がり、スマホを拾ってこっちを見上げる。


『それからー?』柏木さんに似た声で伊藤さんが尋ねる。


 本物の柏木さんより大分豊満な胸の谷間が真上からだとバッチリ見えて、目が釘付けになる。加藤さんは「クケケケケ」とニヤけながらごぞごぞしている。


「体操でもして、体と魂を馴染ませろ。身長の違いとか、声の違和感とか、そういうのを出来る限り感じないようになるまで試みろ。あと、もう少し声を抑えろ」と閻魔様が応える。


『了解』と伊藤さんは了承し、自分の(?)胸を揉み始めた。


 テーブルの向こうで加藤さんが「ヒャッヒャッヒャッ」と爆笑する。


「馬鹿、何をしている! そこまでするな! 股間をまさぐるんじゃない!」


 それを聞いた柏木さんは「イヤぁぁぁぁぁぁぁ」と顔を隠しながら走り出し、遠くで蹲って泣き始めた。顔は見えないけど、泣いてると思う。


『なー、この人形、パンツ履いてねーぞ? スカートすら慣れないのに、ノーパンは難易度高いわ』


 まぁ、そういう目的で作られた物だしな……え? 柏木さんもノーパンで活動してたの? と変な想像をしてしまう。


「なにぃ?!」伊藤さんの言葉を聞いた閻魔様は驚いて、すぐさま柏木さんの元まで走り、何か内緒話をしてから、こっちを振り返ってこう言った。


「小林君、ちょっと来い」


 あれ? 僕、何かしました? と思いながら閻魔様と柏木さんの元に小走りで向かう。


 閻魔様が立ち上がり、手をかざすと、ドアが現れ、僕はいつもの暗い部屋に連れて行かれる。


「いいか?! 変な事するんじゃないぞ!」テーブルに向かって閻魔様が大声で怒鳴る。


『は~い』と遠くから返事が聞こえた。


 暗い部屋に入り、椅子が無いので、僕は机の前に立ち、なんで呼び出されたんだろう? と不安になっていると、閻魔様は机の上から書類とペンを取って、それを僕に渡しながらこう言う。


「君には、今から、柏木君のパンツを回収して来てもらう」


「は?」


「どうやら、金を持ってなかった柏木君は苦肉の策でその時履いていたパンツを売ってネカフェ代に使ったらしい。そういう店だからまだ開いてるはずだ。金はこっちで用意するから、買い戻して来い。金に糸目は付けない」


 そう言って、クレジットカードを手渡された。


「場所は現世に着いたら目の前にある茶色いビルの2階だ。カードのサインは君のサインでいい。あぁ、念のため上様宛で領収書も貰ってきてくれ」


「わ、わかりました……」そう言って、手渡された書類にサインをして閻魔様に渡す。


「じゃあ、よろしく頼む」ポンッと閻魔様が判子を押す音と共に僕は現世に送られた。


 パンツのお使いを頼まれて。

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