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次郎坊さんと電話

「まずは杏子の親に電話だな。志島さん夫妻から確認を取ったほうがいいが…昔の連絡帳はどこにやった?捨てたかな…………もっと整理整頓しておけばよかった」

『はいもしもし、志島ですが…』

「おはようございます。奥さん、お久しぶりです。あの……如月次郎坊です。覚えていますでしょうか?」

『あらあら、次郎坊さん!そろそろ電話がある頃だろうと思っていたところよ』

「昔の連絡帳を残していて正解でした。まだ引っ越されていないのですね」

『ええ、主人も退職してからにしようって』

「そうですか…それで、早速なんですが…」

『杏子のことですね?ご迷惑をおかけして…』

「あ~いえいえ!こちらこそ、とんでもない迷惑を」

『あの子ったら、次郎坊さんが転勤した時、それはもうビックリしてしまうほど泣いてしまって…私も主人も手を焼きましたよ。中学生の娘がずっと部屋に引き籠ってしまいましたから。それだけ、次郎坊さんのことが好きだったんでしょうね』

「それは何て言うかその…すみませんでした」

『でも、次郎坊さんの嫁に行くんだって、突然火が付いたように頑張り出しちゃって、アメリカに留学して、大手企業にまで就職して…次郎坊さんには感謝しているんですよ?どこに出しても恥ずかしくない娘になったんですから』

「だから僕なんかじゃなくても…もっと良縁があると思いますが…」

『次郎坊さんだから良いのでしょう。あの子、1度も男の子と付き合わずにいるみたいなの。アプローチを受けた痕跡はあったんだけど、ず~っと、次郎坊さん一筋だったみたいで』

「お二人はそれでもいいのですか?」

『主人も私も、次郎坊さんには何度となく助けられました。だからあなたのことは誰よりも信頼しているんです。逆に杏子のことをお願いしたいほどです』

「お隣さんでしたからね…助けるのは当然ですよ」

『私達は共働きで、帰りも遅かったせいで、杏子には寂しい思いばかりをさせて…次郎坊さんが杏子の遊び相手をしてくれなかったら、あの子も留学なんてしなかったでしょう』

「僕のことをそこまで買ってくださるとはありがたいです」

『もちろん…次郎坊さんの意思を最大限尊重します。今の今まで独身だったのにもワケがあるんでしょう?』

「えあ…っと…普通に出会いがなかっただけです。周りにはイケメンのキャリア組が勢揃いだったもんで」

『私個人の意見としては…次郎坊さんに娘を任せた方が安心できます。あなたなら娘を不幸にさせないと思えるのです』

「それはもちろんです。しかし、ああも綺麗になって…昔の奥さんを見ているようでしたよ」

『私はもうおばちゃんよ。白髪も増えたわ』

「1度会いに行っても?」

『私も次郎坊さんに会いたいわ』

「こっちも白髪染が必需品になっていますがね」

『そうだ!主人がちょうどリビングに……あなた!次郎坊さん!』

「え?もしもし?」


『次郎坊さん、お久しぶりです』

「その声は……志島さんですか?」

『はい。お互いに少し声が変わりましたな』

「まったくですね」

『今日は杏子のことで?』

「はい。やはり説得済みだったのですね」

『いや、説得も何も…杏子を動かした原動力は次郎坊さんにあることを私どもは知っていましたから。そんな今更、口を出そうなどと…』

「なるほど、そういうことでしたか。そうですね…………もう少し考えます。二つ返事でできることでもないでしょう」

『それもそうですな』

「では、仕事がありますので、ここで失礼させてもらい…改めて、連絡しますので」

『わかりました』

「では失礼しました」


「雰囲気的に断りにくいじゃないの。尤も、それだけで、結婚を決めるのは不服だ」


「次郎坊さーん!生きてるかい」


「っと…玄関玄関」


「次郎坊さーん」

「はいはいはい、生きてますよ。わざわざすみませんでした」

「おぉ、じゃあベッピンさんは知人だったの?」

「ええ。前住んでいたところでお隣さんだった子です。面倒をちょっとだけ見ていたので、立ち寄ってくれたようです」

「何だい?次郎坊さんにも春が来たって?」

「ま……まさか」

「やめときな。どう考えても年の差がありすぎる。しかもベッピンさんだから、他の男がほっとかないよ」

「………ですよね。まぁ、あの子の大きな姿を見られて、なんかホッとしましたよ。美人なら、食い扶持に困らんだろうさ」

「本当にねぇ。次郎坊さんもイケメンなら、今頃はハーレムでも作れたろうに」

「ハーレム、いいですね」

「ウチの旦那はお金で釣り上げてたみたいだけどね。おかげで破産寸前だよ。あの自称貢ぎ王め」

「ははは…最終手段は金ですね。貯金だけはしておかないと」

「まったく………あ、しまった。旦那を起こすのを忘れた」

「はぁ」

「あれは起こさない限り、ずっと眠るからね。それじゃ、生きていたってことで」

「お手数おかけしました…」

「いいっていいって!」


「他の男がほっとかない、か。困ったな」

登場人物

如月 次郎坊 50歳

「職業?サラリーマン。経理担当だ」


志島 カヨ 54歳

「スーパーのパートに入っています。私がパートに入ってから、男性客が増えたって店長が言ってたわ」


志島 原三郎 55歳

「鉄道の駅員をずっとやっています。車掌になろうと思っていたんですが、駅員の仕事の方が面白く思えて…」


大家さん ?歳

「職業って…働かない旦那のケツを蹴ることだね」

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