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空き教室の亡霊  作者: 灰原仄火
1/11

プロローグ

明星大学文学研究部にて、平成28年度に発行し無料配布した『AbsoluteBeginners55』に掲載した作品です。

全11話となりますので、どうぞよろしくお願いします。

 校舎内に空き教室があるというのには、いったいどういう事情があるのだろう。

 空き教室。

 おそらく、どこの学校でもひとつはあるだろうし、なかったとしてもその言葉の意味はすんなりと理解出来るだろう。

 空っぽの教室。

 言葉の通りに本当になにもないというわけではなく、予備の机や椅子、備品などが置かれる倉庫と化しているのがほとんどだろうけど、まさか私も全国の空き教室事情に詳しいわけではない。だから、これからする話はあくまで私の通っている高校での話。

 私の知るその空き教室は、少し不自然だった。


 私は都内某所にある私立桜ヶ丘学園という学校に通っている。男女共学の中高一貫校で、設立してから今年で八年目という歴史の浅い学校だ。高等部からの入学者は全体の約四割で、私もその内の一人である。都心から離れた郊外にあり、中等部と高等部を合わせた敷地面積は結構広い。

 もっとも利用頻度の高い普通教室のあるA棟と、特別教室があるB棟は渡り廊下によって繋がっており、両棟の間に中庭があるという形だ。A棟とB棟はどちらも四階建てである。そのB棟の四階。音楽室、音楽準備室、階段を挟んで視聴覚室と並び、その隣の一番奥の部屋。そこが問題の空き教室だ。

 空き教室は常に鍵がかかっていて中に入ることは出来ない。外から見た様子だと、私たちが普段使っている教室とさほど変わらない広さで、黒板やロッカー、教卓もある。不思議なのは、教室の中は物置となっているわけではなく、私たちが普段使っているのと同じ学習机と椅子が一組だけぽつんと中央に置かれていることだ。

 さらに、校舎の案内図もおかしかった。案内図は校舎内の所々に貼られていたり生徒手帳に載っていたりするのだが、どれを見てもこの空き教室が記されていないのだ。図面上では、本来は普通教室の二部屋分の大きさである視聴覚室に空き教室の一部屋分が加わって記載されており、寸法が合っていないことになる。


 特別教室が並ぶ中、突如現れる普通教室。

 存在しないことになっている教室。

 この空き教室はいったいなんのために作られ、なんのために存在するのだろうか。


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