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第三歩「水面よ、水面。この映っているお嬢さんはだ~れ?」

 パキポキとさっき折った枝の細かい節やら葉っぱをもいでいく。

なんとか運良くガン付けだけで、オオカミさんを撃退出来た。

なんで出来たのかはさっぱりだが、次も上手く行くとは限らない。

武器の必要性をと思い、現在作業をしながら歩いているが

コレで殴っても枝が折れるよね? ただ、もっと太い枝はそもそも折れないし

先っぽを尖らせるのにも道具はないし、石でも括りつける?


【〈太い枝〉を作成しました。装備すると攻撃力が+1修正されます】


うちの中二病さんは修正値の加減がシビアだな。

TRPGとかの攻撃力はダイス一個に修正で+1みたいなそっち系列?

スマホすら無いから攻略サイトとかSNSで情報収集も出来ないよ。

むかーーしのご先祖様ってマジ頑張ってたんだね。

そんな文明の積み重ねを感慨深く感じる中、耳に引っ掛かるこの音は!?


「(やった! 水の音!?)」


 細かい節のもがれた枝をぶんぶん振り回し、上がったテンションに身を任せて

茂みを掻き分けていく。それを抜けると其処は流れる水音の通り川だった。

やったぜ、私! けど、生水飲んで大丈夫なのかな? お腹壊さない?

かといって煮沸とか出来ないし、ペットボトルとかゴミも落ちてないから

ろ過装置とかも作れないよね? う、まぁ死ぬよりは良いと思うべき!


 私は河原の付近を歩きつつ下をずっと見つめている。

こういう時に切れた釣具の糸とか落ちてないかな?

ゲームなら現地素材で色々出来るんだろうけど、まぁ無理だよねー。


「(って、無駄にサバイバルしてどうする私。下流に歩けばいいじゃん)」


 私は無駄な事を考えるのを止め、頭を左右に振っては意識を切り替える。

そもそも、私が今居る場所は私自身の軽装から考えるに

そんなに山奥だのなんだのって感じじゃない。

多分、ハイキングコースの散策レベルの筈だ。幾ら私が馬鹿だと仮定しても

山に登ったりするならもうちょっとマシな装備で来ている筈。

こんな真っ白いワンピースと帽子一つなんてドコのお嬢さんだって話だよ。


「(ま、いーや。ちょっと手と顔でも洗おう。少し疲れたし、喉乾いたし)」


 オオカミさんエンカウントとか、まるでゲームみたいな体験をして

舞い上がってしまったが、別に私はそういうモノを求めている訳じゃない。

多分、休日や祝日で森に出ているだけで、私はお家に帰って日常へと回帰する訳だ。

学校か職場に通って家に帰ってご飯食べて、未来の為に頑張る普通を積み重ねる。


 そうそう、水面に映る私は普通のお嬢さんでいいんだ。

なんか、すげー美白でドキドキする様な真っ黒な瞳で、髪の毛がサラサラだけど。

そうそう、これがわた――ん、ちょっと待て?


「………?(どちら様?)」


 待て、これ私か? いや、えーと、私ってどんな顔だっけ?

違うよね。こんな美人じゃなかったよね? 覗き込んで見つめれば見つめる程

私じゃないという実感と記憶との差異が強くなってくる。

ぺたぺたと自分の顔を触ってみる。おお、指先もなんか細くて綺麗だ。

いや、まぁそれは良い。うん、ちゃんと映ってるのは私だ、多分。

けど、これ、私じゃないよ……ね?


「(何、あの洞窟は整形手術でもして……って!?)」


 覗き込むのを止めて立ち上がる。そして、違和感にようやく気付く。

あれ、私、え? なんか見えている景色高くね?

地面の根っことか草木の高さから見てもおかしいよね。


――いや、そもそもこんなに背でかかったっけ私?


 待て。結構サイズが規格外じゃないか? 2メートル超えてないか?

なんか森の木々がめっちゃ育っているから、気づかなかったというか

周りの木々や自然物のサイズが異様にデカイんだ、コレ。

この森自体が屋久島とか密林とかそういうレベルじゃん。

えーと、なんか木々が田舎のビル位あるよ。かなりでかくないか?


「(冷静に見ると私の手とか体とかサイズおかしいぞ)」


 水面に映る私の姿は異様なほど大きかった。

私はバスケもバレーもやっていない。いや、バスケやバレーをやって

背が伸びる訳じゃなくて、背が伸びている奴がこれらのスポーツをやる訳だ。

しかし、これは一体全体どういうことだ。明らかに私の知っている

私自身のサイズ感より、自分の身体がかなりでかい印象を与えている。


「(水面じゃなくて実はこの姿の人が沈んでいる?)」


 水をぱしゃっと足元で引っ掻けば、波打揺れる私らしき鏡像。

しかし、その波紋はゆるやかに収束し、先ほどと同じ姿を映し続けている。

足でそのまま沈み込ませてみてもすぐに足は着いてしまう。

いや、正確に言うと前の身体の時は結構深かったかもしれないが

今の身長なら大丈夫という感覚だ。後、冷たくて結構気持ちいい。

なんか、ちょっと漬けた足がピリピリするのは歩き疲れた所為かな?

まぁ、裸足で地面を歩けばそんなもんだろう。


 取り敢えず、川に沈んだ水死体発見とか妖怪出没とかじゃなくて助かった。

オオカミさんも怖かったけどそれはそれで別ベクトルの怖さだ。

しかし、はてさて、どーしたもんか? 少しずつ考えてみよう。


 思い返そうと頭を抱える。名前すら思い出せないが私は普通の女子だった筈。

普通というのはどの程度か解らないが、人種は不明だが2010年代の日本に

住んでいたというのは確実だろう。スマホとかSNSとか単語は分かるし

なんとなく思考や単語の知識が日本語基準になっているのは解る。


「(うわー、足なっが)」


 このサイズなら170cmあるモデル体型の人でも大きいとは思うがそれはそれ。

この違和感は体型もそんなに逸脱してない範疇だったのだろう。

スカートをたくし上げて足を眺めれば、すっきりとした細長い足元を覗かせる。

触ってみるが一応肉感というか人体を触っている感触を指先に伝えてくれる。


 何らかの要因で私はこの体になったという事は揺るぎない様だ。

多少、オカルトやファンタジーなりの過程を前提に考えていくと

謎の奇病で手足が伸びて肌が白くなるとか、あの洞窟の中でこの人が居て

人格と記憶が入れ替わったとか、私が乗り移ったとか?


 いや、フィクション過ぎて想定が創作レベルになってるわい。

あはは、もういっそ『ステータス オープン』みたいな感じで

現在の状況やら場所が羅列してくれるのがぽんっと出てくれれば

もうゲーム感覚で楽なんだけど……楽なんだけど。


【ステータスウィンドウを表示します】


「(いや、楽なんだけどさ……マ・ジ・で・出・る・な・よぉ!!!)」


 眼前にはいかにもゲームのウィンドウですと言わんばかりに

浮かび上がる光の画面には、なんだかつらつらと数字と文字が並んでいる。

こんな嬉しさと驚きと虚脱を感じるゲーム体験って凄いね!


    第四歩「注文の多さに応えるステータス画面」

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