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第二歩「ある日♪ 森の中♪ オオカミさんとぉ♪」

 やばい! オオカミさんパネェよ!? でかい! でっかくない?

でかい上に灰色の汚れた毛色に真っ黒な瞳。

ぱっと見は黒の少ないシベリアンハスキーなんだけど、牙とか見えてるんですよ。

凶悪凶暴っぽいのが超解りやすい。ゲームのモンスターですやん、こんなの。

毛並みもセットされてツンツンなんですよ、奥さん! ワイルドアピールですよ!

いや、そりゃ野生だからガチワイルドだよね、落ち着こうか私。

後、隠れよう。ボケっと突っ立てガン見していたら、相手にも気づかれるし!


「(あれー? けど、ニホンオオカミってあんなんだっけ?)」


 なんか博物館の剥製の写真かなんかで見た時とは違うよーな。

あんな漫画とかゲームに出てきそうなのじゃなくてただの犬だったよーな。

取り敢えず、木の根元に座り込んでぐるぐると思考を考え巡らせる。

うう、怖いよ。気付くな、気付かれるな私。なんとか気配を消すんだよ!

ふふふ、空気キャラの本領発揮だ。あれ、私ってボッチキャラだったっけ?

否! なんか、そこら辺は思い出したくないなぁ、事実だったとしても!


【伝承スキル〘気配隠遁〙 が発現。Lv1に上がりました】


 突如、頭の中に機械的な音声が聞こえてくる。

おぅ! こんな緊急時でも中二病は再発するのな、私! いや、発症か?

ゲームじゃないんだから、スキルとかねーから!

システムボイスが聞こえたりしないから! 気が紛れてどーする!?


 集中、集中! ええと、オオカミだよね。どうすんの?

熊よけスプレーも鈴も効くの? てか、持ってない!

ああ、けどオオカミとかって犬科だよね? なら匂い系は効きそう?

いや、だから持ってないんだよなぁ私。く、準備不足で命を落とす典型だよ!?

考えないと、なんかえーと、思い出せ犬とか狼とかの豆知識!


 あー、えーと耳も確かいーんだっけ? うう、この心臓の鼓動を止めたい。

いや、死にたい的な意味じゃなくて、音を出したくない――って、音はしないわ!

聴診器当てたり、耳を直接当てないと無理だから心臓音とか!

とにかく黙れ、私。口結んで手で覆って、鼻呼吸すら音を立てるな!


【伝承スキル〘遮音隠遁〙が発現。Lv1に上がりました】


【エネミーモンスターのスキル発動を確認】


 なんか、間髪入れずに絶賛発動している私の中二病に対して

ツッコミ入れるみたいにオオカミさんも遠吠えを放ってらっしゃる。

おー、なんかほんとうに頭をくいっと上げて吠えるんだね、狼って。

『俺は負け犬じゃねぇ』的なスピリッツ溢れる鳴き声は耳にキンキン響くわ。


【スキル〘狩猟探索〙の範囲に居るアナタが発見状態になりました】


 悲報です。今にも破裂寸前な心臓と私の中二病が素敵なハーモニーとなって

見事にオオカミさんとコラボレートしてしまった模様。これ心音で気付かれた?

帽子のつばを抑えこむ様にして隠れている中、枝や木の葉を踏み散らして

近づいてくるのが分かる。ぐるるぅっ的な唸り声が徐々に大きくなってるし。


 逃げる? いや、森の中で野生動物とかけっこで勝てる訳がないよ?

枝とか石を持って限界ガチバトル? ……まぁ、最終手段。

対処を色々と考えている間に足音が一旦止まり、静寂が辺りを包む。

オオカミさんのこちらの位置を特定して前方に飛びついてくる。

ただ、それは私の目の前に地面へと飛びかかる様な形で外してくれた。

オオカミさんは何も組み付けてない事が解ると、くるりと旋回して向き直る。

私が予想より木に背中をへばりつけていたのが誤算らしい。


「(確か、熊とか猿に遭遇した場合は背中を向けて逃げたりしちゃ駄目なはず!

  声も出しちゃいけないから、取り敢えずじっと見る!)」


 なんというかさっきから妙にその手の知識の記憶だけが思い浮かぶ。

うーん、なんかそれっぽい勉強でも詰め込んできてたのかな?

まぁ、そんな悩んでる間もなく、唸り声と共に私を見上げるオオカミさん。

ええぃ、武器はないか!? 傘とかシートとかが有効だったのは猪だっけ?

そもそも、絶滅している筈のニホンオオカミなんて想定外だよ!


「グゥルルルルゥッ!」


 取り敢えず、手近な枝を折る! リーチは大事! 後はどーする?

ええと、目と鼻辺りを狙うが定石っぽいけど、下手に興奮させたら逆効果。

取り敢えず、視線は外さないでにらみつける!

このまま、相手のステータスとか下がらない? 黙れゲーム脳!

むしろ、ポケットに入ったり、デバイスに入ってたりするモンスターとか

いっそ、メダルで動くロボットとかを頼りたかったよ、私は!


【怪異スキル〘畏怖の眼差し〙を発現。Lv1に上がりました】


 だから、黙れっつてんだろぅが私の中二病!? 今、緊急事態なの!

ああ、膝の震えが止まらないし、考えもまとまらない。

なんかオオカミさんもよだれだらだらの肉食系アピールが止まらない!

『自分、一噛みいいっすか?』的な何かを激しく感じる!


 一歩前に出そうになるオオカミさんに対して、私は追った枝を振り叩きつける。

牽制になってるかな? これで対処あってるのかな?

何故、一歩間違ったらBADEND直行な選択肢を要求されているんだろ?

あてくしは乙女な訳でもっと恋愛的選択肢を選びたかったのですわよ!?


 私はそこら辺のやけっぱちな情動を全部視線にして叩きつける。

このまま、目からビームとか出ない? じゅわっと蒸発とかしてくんない!?


【怪異スキル〘畏怖の眼差し〙がLevel2に上がりました。

 未識別のエネミーモンスターが恐怖状態になりました】


 もっとさー、なんで淡白なのかなー? 中二病ならなんか神々とか悪魔の力とか

そういう発想出来ないのかなー私。そして、なんか恐怖状態って妄想しているけど

いや、そんな睨んだ位で相手は野生動物よ? 怖がる訳ないじゃん。

ただの小娘の睨みつけでさー。可憐な女子の睨みつけでさー。平凡な美しょ――


「グルゥッ!?」


 ……うん。大丈夫だよね? 私、女子とか小娘って自称して大丈夫な年齢だよね?

オオカミさんドン引きして変な声出してない? え? 今、野生動物に引かれている?

ってそんな事を思い悩みかけていると――ぁんら?


「(なんか、オオカミさんの腰が引けてる? 枝とか振ってみる?)」


 私が枝を振って地面へと叩きつければ、葉っぱと地面の叩き合う音が僅かに響く。

危なく、枝ごと折ってしまいそうになる。加減を気をつけないと。

さて、それはさておき……あれ? なんかー後ろずさりしてない、これ。

試しに私は一歩前に出ると――あ、後ろに一歩下がった。怖がってる?


「!!!(そのまま逃げてくれないかなーーーー!!!なしぃせぇんぅぅぅっ)」

「……きゃぃんっ!」


 あ、なんかいかにも負け犬っぽい声を上げたと思ったら逃げた!

凄い勢いで森の中に走って行く。あの足相手に追いかけっこは無理だったわ。

逃げると言う選択肢はしなくてよかった。


―しかし、なんで逃げたし!?


 嬉しい……のか? いや、命あってのなんとやらだよ!?

助かった、私、助かった! オオカミさんにガン付けてたら勝った!

やっほー! やったぜ、私! オオカミさん撃退でレベルアップ!


【未識別のエネミーモンスターは逃走しました。取得経験値は0です】


 いや、解っているから私の中二病。ゲームじゃないからさ!

ただ、テテテ、テレッテー位は心の中で鳴らさせてくれよ、頼むわ、マジで!


 第三歩「水面よ、水面。この映っているお嬢さんはだ~れ?」に続く

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