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第十七歩「平和的秘技」

八尺丈の 幻想眺めは 絶景かな ―伝奇転生物語

第十七歩「平和的秘技」


 迂闊! 圧倒的な迂闊っぷりを私はやらかしてしまう。

まず、子供と言うのはいずれ成長する。

永久に見た目変わらない呪いとか無い限り、子供は大人が保護している。

例外は何らかの理由で大人たちと別れ、子供だけでというパターンもあるか?

あ、なんか小人族みたいに大人でも子供みたいってのは居るのかも知れないね。


「ゲッ、■■ツガ■■カ!」


 まぁそれらの仮定、推察はかなり意味が無い。

何故かと言うと先ほどの頭痛及び記憶開放イベント的な何かで

ふらふらと道を歩いて戻ってきた道中での出来事である。

正確に言うと最初に目が醒めた洞窟を目指していた。

あのうさぎ耳の少年騎士と法衣のお嬢さんがエルフと合流したり

私の討伐隊を組んだりして森を歩かれたら、あの洞窟付近に行くのも難しくなる。

そう、一応、私なりに頭を使ってみたんだけど……だけどね?


「ぽぽぽっーーー!?(めっちゃ大人の集団と邂逅してるーー!?)」

「■■■■ダ。■■■イナ」

「■クチョ■。■■ス■?」


 おおぅ。白い肌のエルフな大人達がわらわらと居るよ。集団だよ。

茂みを抜けて道へと出ようとしたらばったり出会っちゃったよ。

そりゃ、子供も居るんだから当然、産んだ大人も居るよね。

久し振りに多人数を見たよ。ええと、見える内では人数は10人くらいか?

先日のエルフ君から話を聞いているから覚悟完了済みなのかな?


【種族情報〘セイント・シール・エルフ〙の情報を取得。Level1に上がりました】


「……(今、情報確認で変に動くのは危険だ)」


 システムさんも集団と邂逅した事により、情報を開示してくれた。

うう、すっごく内容が見たいがちょっとの動作で怪しまれる事は避けないと。

私は、観察と思考する事に注力する。


相手は見た目通りの年齢なら、年がいっている老人ばかりだ。

エルフで老人となるともうとんでもない年齢なんじゃないだろうか。

もうね、私、見てもすげー冷静なの。平然と観察して、こそこそ話ししてるの。


「ぽぽぽっ、ぽぽぽっ(明らかになんか宗教的、魔術的な衣装を着ている)」

「■■カ、ネ■■■キ■ノ■?」

「マ■■■、イ■■■■クハ■■■■■イ■?」


 戦闘態勢じゃないですかやだー!? 魔法対策も万全ですか!

先日のエルフ君の様なレンジャーですと言わんばかりのポケット一杯の服に

弓を背負ったおじい様ま数名と巫女みたいなじゃらじゃらとした法衣を纏った

ほうれい線を頬に刻んだおばあ様達が居る。私もスキルで魅了だの

生命吸収だの使っているんだから、この人達も魔術系のスキルとか使えるのかな?

私をぶっ倒しに来たのだろうか? うう、既に一人被害を出してるからなぁ。

おじい様の数名が既に弓と矢を向けつつも、矢へと手を伸ばしている。


「……ぽっ、ぽぽぽっ(こ、此処は出方を間違えたら不味い)」

「■ッタ■■セ■チ■■■」

「ア■、■■ガ■■モ■」


 ううう、また私が頭を捻らなきゃならんパターンか。

あの小屋の毛皮みたいにその気になったら、私を射殺す位は余裕だろう。

むしろ、魔法とか矢とか対処出来る訳がない。故に平和的になんとかせねば!

言葉は通じないが一応、服は着ているので野生ではないことは

解っていただけるだろうか? いや、幽霊とかそういうのも居るかもだから

服着てりゃいいってのは流石に見通しが甘いか。く、どうする!?


「ぽぽっ、ぽっぽっぽっ~(正直、もうコソコソするのやなんですよぉ~)」

「ポポポッ■■イ■■■ノ■?」

「■エ■■ン■ャ?」


 うう、私が『ぽぽぽっ』しか言えないから凄い怪しまれているよぅ。

まぁ、私だって背がでかい『ぽぽぽっ』しか言わん女は警戒する。

ただ、私としてももうなんか隠れたり、逃げたりは嫌なんだよほんと!

此処はちゃんとお話をして、助けてほしいんだよ!

――っていや、そうか! 言葉を使わず、警戒されず、平和的な態度が

多分、万国、どんな世界でも通用しそうな行動が一個ある!


「……ぽっ! ぽぽぽっ(ええぃ! 一か八か試してみるか!)」


 私は足で地面の方を掻く様に左右に揺らしていく。ええと、アレだ。

野球選手のピッチャーが地面をならす様な感じと言えばいいだろうか?

小石だのが無い様に砂煙を立てて整地をする。

勿論、その様子もエルフのご年配方には不可思議な様子で眺められている。


「■ッ!」

「■■ヲ■■■ダ?!」

「■ク■ョ■! ウ■■ニ!」


 そして、私はその場で座る。SE☆I☆ZAだ。あぐらだと居直りみたいだからね?

背筋をピンっと伸ばして、にっこりと笑う。土がスカートについたりするが仕方ない。

足で払っておいたので石とかはないおかげでちょっと脛がごりごりするが

それでもそれなりの時間は座れそうだ。足とかしびれるんだろうか?

身長のおかげで座っても背はそこそこあるがそれでもエルフのご年配方よりは

背は低くなった。うんうん、視線をある程度合わせるのは基本だよね。


「ぽぽぽっ(にこーっ)」

「■■モ■■」

「■ワッ■■?」


 エルフのご年配方は皆、驚いている。そして、一番お年寄りっぽい人。

多分、村長とか司祭長とかそういう役職がつく偉い人なんだろう。

それに口々に意見を仰ぐ様にざわざわとざわついている。

老体にご足労させてしまったのはなんとも申し訳ないが、こっちも必死だ。

右掌を相手に見せる様にして、座ることを促してみる。

うん、地面なので申し訳ないが、取り敢えず座ってお話でもな感じを

こう、私が全力で何とかしようとしている訳ですよ、ええ。

通じるかな? 通じてよ? おねがいしますよ、ほんとほんと。


「ぽぽぽっ(大丈夫ですよーっ)」

「■■ツケ。オ■■ク、■キ■■■■■■ロ■」

「■■■ニ。セ■■■ンソ■■■ト■■■■■ナ■」

「セ■■ュ■■■ノウ■■■ノ■■ハ?」


 流石、ジャパニーズのオ・モ・テ・ナ・シだZE!

あ! 私、前世は日本人だったのかな? ま、それは置いておこう。

相手のエルフのご年配方も敵意が薄れていく様に見える。

うむ、やはり座るという文化は平和的だよね。

交渉のテーブルにつくとか席を立つとかも異世界でも共通だろう。

よし、このままなんというかお話は出来なくても友好的だという意思を

汲んでいただけるなら、これならなんとか!


「■シ■■ン■」

「オー■? ■ッパ、■■ラ■■」


 そうして数分の間、私はエルフのご年配方と座ったまま対峙を続ける。

一向に手を出したり、襲う気配を見せない私に対して、段々と警戒は解かれ

時折、声をかけている様な仕草も見せる。しかして、恐怖感の溝は埋めるには

やや足りないという印象。こういうのはじっくりと時間を掛けないとね?


「■■チョ■! ■■■ン■■■ゾ!」

「ス■■ミ■!?」


 そんな風に少しでも私にも希望が見えた直後、森の枝々の間から

若いエルフが数名、飛び出してくる。同時に私の目の前に矢の雨が降り注いだ。

                  第十八歩「ハートを射抜いて(物理)」

〘ケントゥリオ共用語〙[言語][地域語]

前大戦の主力を担った国々を多く有したケントゥリオ地方における言語。

元々は他種族、他部族などが多く混在しており、言語体系もバラバラであったが

前大戦以前から大人数及び多民族、他種族の連合軍の運用に辺り

共通言語の必要性を感じていた為に開発された言語。


基本的に動詞、文法の形成などを主に開発され

一部発音や聞き取りが難解な部族、種族特有の単語を簡略化した。

当初は価値観や文化の反発から認識や学習が進まなかったが

大戦後、平和になった事により商人達による流通の活発化と共にようやく認知され始めた。

その経緯から平和の言語というイメージが持たれている。

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