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第十五歩「カップルに疑心暗鬼」

「まぁ、監視位はされるのかな?」

「それはおかしい。もし、私達の侵入が探知されたなら

 監視ではなく、警告なり、追い出しに掛かる筈です」


 え? え? えぇえええーーー!? どうして、どうして?

なんであんなファンタジーバリバリな姿の人が日本語でだべってるの?

グリフォンに跨る甲冑の少年騎士君とすらりとした水属性な法衣のお嬢さんという

コンビなのに私からはっきりと何を言っているか解る。いや、コレはアレか。

本来は別言語を話しているんだけど、私には日本語に聞こえるという奴かな?

口元とか見てみれば、解るのかも知れないけど流石にこの距離では見れない。

いや、私も実はもう日本語なら喋れるんじゃないかな?

怪異称号〘有象無象の声色〙が発現してなかったから喋れなかった可能性。


「……ぽぽぽっ(日本語、喋れるかなー)」

「――待って! 今、ナニか聞こえた!?」


 む、駄目だ。日本語は発音出来ない――って気付かれた!?

うっそ、マジで!? 私、ぼそっとつぶやいただけだよ!?

くぅ、不味いぞ。先日のエルフ君の時と一緒で下手に対応すると

逃げられるか、あるいは戦闘になってしまうかもしれない。

出来れば、友好的な繋がりを持ちたい。うう、ちょっと考えてみよう。


「向こうから出向いては来ないね」

「そうみたいですね」

「バレてると気付いてないのかな?」


 警戒を解く気配を見せぬ二人。恐らく、冒険者とか旅行者とかだろうか?

グリフォンの鞍に括りつけられている寝袋やら大きめのバックは

明らかにそれなりに旅慣れている印象がある……ってちょっと待て!

わざわざ甲冑を着込んで冒険や旅行をする訳がない。

戦闘というか、ある程度危険な場所だからがっつり兜まで被ってる訳だ。


「……(ということはこの森に何らかの目的がある。で、目的は私か?!)」


 あれか〘セイント・シール・エルフ〙から

封印された化け物(私)が出たから助けてくれって依頼とか!?

いやいや、流石に昨日の今日でそんなピザ屋の出前感覚で

討伐クエストを依頼するって訳にはいかないし、面子も来ないでしょう。

事前に私が出て来る兆候とか予言とかシナリオが展開中なの!?

仮に害獣感覚で私を駆除しに来ているんだったら交流どころか

発見された瞬間、戦闘開始になっちゃうんじゃないかな? ひーー!?


「……(あわわわわわわ、どどど、どうしよう)」


【あなたは状態異常:〘パニック〙になりました】


 私は頭を手に置き、軽くパニックになりながら考えを巡らせる。

まず、言葉は解るがこっちからの情報伝達手段がない。

身振り手振りで会話というのも限度があるのと何より

あっちの文化圏でのジェスチャーと私のジェスチャーが一緒とは限らない。

ハンドサインや手話が多岐に渡る様に、どう受け取られるか解らない。

『オレサマ、オマエマルカジリ』とか伝えたら大変だよ! 

交渉決裂支離滅裂の焼肉定食(具材は私)だよ!?

いや、美少年相手なら召し上がれ♪って、かにーばーにーずーむーー!!! 


「むー。仕方ない。ちょっと、アレやるからいつものお願いね?」

「解りました」

「……!?(なんとーーー!?)」


 何やら打ち合わせを済ませた後、少年騎士君が兜を脱ぐ準備を始めていく。

鎧も脱ぐんだろうか? 法衣のお嬢さんは呪文らしきモノを詠唱していると

右手には何やら……筒か? あ、なんか穴の部分が発光し始めた。

多分、アレで魔法か何かを発動するんだろう。それを後ろの腰に回している。

そして、兜を脱いだ少年騎士君に私は驚嘆せざるおえなかった。


「〘怖がりの兎耳〙」

「……(もっふもふだ、コレー!?)」


 なんだアレ! 耳がぴょこっと縦に長い。兎さんの耳が頭についていた。

兜が妙に縦に長いデザインなのかと思っていたがアレがすっぽり兎さんの耳を

収納していたということか! 可愛い、超かわいい!

お目目もぱっちりしていて、うっは、もろにケモショタ君だ。

どうしよう、ハグしたい! スリスリしたい! きゃーーきゃーー!!!


【状態異常:〘興奮〙になっています】


 ヤバイヤバイ。興奮が止まらない。マジ可愛い。ええと、アレか。

耳がぴこぴこっと周囲へと向いて、可愛くてキュートでキラキラしてるお目目を

閉じていてなんか探知してるんだろうか! ああ、それで無防備だから

法衣のお嬢さんが警戒態勢になってるんだ! うっは、私、物分かり良すぎ!

って、ピンチじゃん!? 私、見つかるじゃん! やばい、どうしよう?

これは私から出るべき? いや、待て、私よ私。

あんな可愛いのを前に理性を保てるのかって……んぁ!?


【記憶称号〘追想の百景〙発現。現在、対象2名……エラー、ERROR

 現在、その称号はふかかか………システムダウンの危険性あり。

システムを一度、再起動します 5,4,3,2,システムシャットダウン】


 いたたたたたた!? 頭痛い、なにこれ。え、アレ?

し、システムさーん!? 落ちちゃった!? うぇ、何、なんなの!?

気持ち悪いというかうううーーー、頭がグツグツ煮えてくる。

ううう、なんか煩い。変な声が聞こえてくる。誰なんマジで!

私はなんとかスキルを維持しつつも膝をつく。

物音を立ててはいけない。今、見つかったら逆に救助されるかもだが!

こんな状況でギャンブル出来ないよ。


『……お■、最初は■の5人■■■■■■■。え■■■攻略Wikiは■■■■。

 まぁ初期キ■■は■■■■差が無■■■よねー』

『えー、■■■■ゃん誰でやった?■■■■進化後は■■■■■かなー』

『■■■ゃ、私はこの子で■■■■。うさ■■■■いーしね!』


 こんな忙しい時にこういうイベントぶっこむなや!

私、まだ化け物になって二日目! イベント詰め込み過ぎなんだよぉ!

痛みの最中、なんだか会話が頭の中に流れ込んでいる。会話というか独り言に近い。

SNSなり電話での会話とかかな? なんて身体の状態とは裏腹、冷静に

私は頭の中で情報が処理され始める。うん、こういう状況で逆に落ち着けるのは

私の根っからの性格なのか、それともそういう風に精神が作り変えられているのか。

まぁ、物事の進行に大変重宝します。ただ、痛いもんは痛いぞ☆


【システム再起動。状態異常:〘パニック〙、〘興奮〙が解除されました】


 お、システムさんが戻ってきた。おかげでちょっと冷静になれたよ。

しかし、頭痛が執拗に攻撃を仕掛けているのは変わらない。

うう、なんというか記憶奪還イベント的なのが今、私の身に起きてるのか?

ああ、さっきのよく分からない称号はロックが掛かったままだ。

くっそ、もう撤退だ、撤退! ただでさえ、対応は慎重にしなきゃならないのに

こんなイベントに関わっていられるか! 私は小屋に戻らせてもらう!

ミステリーモノだったら死亡フラグが立ってるね! 返り討ちにしてやんよ!


「ぽっ、ぽっぽっぽっー!(兎角、今生はなんとも面倒だなー!)」

「ぁ! 声が聞こえた!」

「何? ……どっちだ!」

「いや、もう気配がない。これは音だけだからナニかの囮かも知れないね」


 後は若いお二人で! 私は来た道を引き返す事にした。

ほんっと全然事態が進展しないな! 次、どうしよう私?

                  第十六歩「怒りを爆発させる姉」に続く


〘怖がりの兎耳〙[探索][能力強化]

主に兎系の獣人や魔獣が所有するスキル


名前からして聴覚強化のスキルに見えるが

聴覚強化の他に自分に対して敵意、食欲、殺意など

負の感情を発する相手への探知の精度が大変高い。


自分に対する負の感情を抱かない相手への探知能力は低く

また、使用中は使用者が大変無防備になる。


大抵、コレを取得している存在は元から聴力が良い種族が多い為

念押しや警戒目的で使うことが多い。

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