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第九歩「お巡りさん違うんです」

 一気に変なスキルと称号が発現した。いや、スキルなら発動しなければ

大丈夫かな? 私は情報を後回しにして、エルフっぽい少年を再確認する。

おおぅ、私も色白なノリだけどあのエルフ君も中々の色白っぷりではある。

目は細い糸目っぽい感じで、温厚そうではあるのだが警戒はされている模様。

多分、目が合っている事に気付いちゃっているかな? 

これが説明にあった〘セイント・シール・エルフ〙って人達だろうか?

ズボンとブーツ、手袋やらがっちり装備していて弓も背負ってる。

いかにも森での生活慣れていますな装備一式である。

準備万端だ。うわ、腰のベルトになんかポシェットとか一杯あるよ。

アレ、中に何入っているかの把握していて、使う時に出せるんだろうか?


「……(取り敢えず敵意の無いアピールでも)」


 おーーいっと手を上げてはブンブンと宙空を振ってみる。

エルフ君の身長や発動したスキルの名前的にあの子は少年なんだろう。

怖がらせてはいけない。うん、別に籠絡したりしたい訳ではない。

まずはコミュニケーション! ちゃんと挨拶しないと……だけど。

取り敢えず、日本語とか通じるかな? ま、まぁこっちから声を掛けないとね。


「ぽぽぽっ! ぽぽぽっぽぽっ!(こんにちはー! 地元の方ですかー!)」


 ……ぇ? ちょっと待って。今、私なんつった?

はぁ!?  私、ちゃんと声出したよね? 美少年相手に舞い上がって噛んだか?

あ、なんかエルフ君もちょっとびっくりというか警戒度が更に上がってるぽいよ。


【種族情報:〘八尺様〙がLevel2に上がりました】


 あ、システムさんえーとなになに!? このちょっとびっくりな時に、えぇ?

多分、今の情報が関係しているのかな? 恐らく、今までのパターンだと

行動へのリアクションで情報やスキルが更新されてるって感じだよね。

取り敢えず、喉を抑えつつもちょっと情報を開いてみよう。


【〘八尺様はっしゃくさま〙 Level2 [怪異][女性]

    女型の怪異の一種。近年に伝承され詳細が定かでない。

    文明の発展度が低い田舎に現れる八尺(2m40cm)はあるかと思われる女性。

    未成年の男性を誘惑するなどの言い伝えがある。

NEW 鳴き声は『ぽぽぽぽっ』と鳴く。また、段々と声を覚えていっては

    老若男女様々な声を出すと言われている】


 ……まじかー。つまり、私って今は言葉を発せられないのか。

『ぽぽぽっ』だけでなんとかしなきゃいけないのかー。くっ、これは厳しい。

まぁ、アレだ。声を覚えるって書いてあるし、なんとか成長させればいいのかな?

よく考えれば、学校の英語とか国語の勉強より簡単だ。

スキルで自動的に取れるんだから断然楽だと考えるべき。

教材も受講料も要らないから安上がりだね!


「……(さて、どうしたもんか)」


 取り敢えず、うん。相手に見える様に枝を捨てて両手を上げておこう。

私、何もしない、悪い八尺様じゃないよアピールをしないと。

……八尺様に良いも悪いもあるんかな? まぁ、スキル構成が凶悪だけど。


 うーん、しかしこのままだと警戒して逃げちゃうよね、どうしよう。

私だったら未知の化け物やらでっかい巨人を見たら

関わり合いたくないもんね。まして、変な鳴き声もする。

キシャーだのグオーンだの吠える様に鳴くよりはマシだけどねぇ。

いっそ、ハッシャク-とか鳴いたら……いや、それは無いな。

そんな無駄なキャラ付け要らない。


「ぽ、ぽぽっ!(あ、そうだ!)」


 私は用語辞典の中からさっき発現したスキルを引っ張りだす。

更新履歴みたいな感じで引っ張り出せるシステムさんの有能っぷりに感謝だぜ。

えーと、あったあった、ぽちっとな。

私はスキルの説明文を開くと大凡予想していたスキルの説明が出てきた。

漢字はパッと見て直感でイメージしやすいね。


【〘蠱惑の少年愛〙Level1 [状態異常][怪異]

  未成年の男性の人類、亜人類を〘魅了〙状態にするスキル。

  恋愛的、性的な欲求錯覚ではなく、強い印象と興味を持たせる】


 お、おぅ。大丈夫かな? これはあのエルフ君がお互いを認識してから

発現したスキルだから向こうから見れば、今の私は魅力的なのかな?

このまま、さっきのオオカミさんみたいに逃げられてもアレだしね。

べ、別にやましい気持ちはない、無いんだぞ-、私。


〘畏怖の眼差し〙と一緒で見つめたり、使うぞーな感じで発動するかな?

このまま、距離詰めても逃げられちゃうだろうし、試しにやってみよう! 

私がそう念じると何やら視覚的にピンク色のモヤっぽいのが

エルフ君へとまとわりついていくが、それはすぐに消えていってしまった。

あれ、不発かな? Level1って書いてたし、威力とか命中率が低いのかなぁ?


【スキル〘蠱惑の少年愛〙を発動しました。対象と交戦状態になります】


 え、なんで交戦!? 違う違う! 私は仲良くしたいの! ラヴ&ピースだよ!?

いや、待って! ラヴってエロい意味じゃないよ! ほんとだよ!?


「ぽぽっ、ぽぽぽぽぽっ(どどど、どうしよう)」


 うっそ、魅了状態にするんじゃないの?

あ、あれ、なんかエルフ君の目つきがめっちゃ鋭くなってない!?

やっぱ、初手魅了はダメだったのかな? 痴女だと思われたのかな?

ずるいことしちゃいけないって事なのか? ええい、仕方ない。

わたしは手を上げたまま、ゆっくりとエルフ君の居る茂みへと歩く。


「ぽぽぽっー、ぽぽっー(大丈夫ー、悪いことしないよー)」


 ……言ってて段々取り返しの付かない方向へ行ってないか私?

ま、仕方ない。後、通じてないから逆に心配要らないぞー。

違うんだよー。だから、お巡りさんに通報とか止めてよー?



「ト■■テッ! ■■■ナ■ト■■ウ■■■ヨ!」


【怪異称号〘有象無象の声色〙がアンロックされました。

〘古代エルフ語〙の言語項目を開放。言語理解経験値の取得を開始します】


 ……うわー、エルフ君が何言っているか解らない。日本語は通じないか。

弓を引いているし、警告的な事を言っているみたい。足を止めておこう。


「……ぽぽーーーっ(にこーーーっ)」


 こういう時は笑顔だ、笑顔。笑って敵意が無いことをアピールせねば!

頬を引っ張る位に歯を見せて笑ってみせる。未だに緊張の面持ちなエルフ君。

いや、私だって怖いからね? 弓とか向けられた事ないし、学校で弓道部とかも

まず人に向けたりしないしね? 大丈夫かなー? 射られないかなー?


「ワオゥーーーン!」

「■ワ■ッ!」


 これはさっきの狼かな? 遠吠えが聞こえるし、エルフ君も反応してる。

害獣だよね、狼って確か。家畜とか襲うから童話とかでも大抵は悪役だった筈だし

群れ行動だったよーな。そう考えると一匹だけってのも変な話だ。

可能性としてさっき出くわしたオオカミさんを取り逃がしていて

それをエルフ君が追ってるとか? あるいは逆にエルフ君が追われている?

まぁ、どっちにしろ、その道中で私を見つけてびっくりみたいな? 

つまり、エルフ君は今、悪役の二人に挟まれているっと。


「■■ルッ! サ■■■ホ■コ■■■イ■!」


 あ、エルフ君が翻って逃げようとしてる。めっちゃ足が早い!

わ、枝へ飛んだよ!? ココでエルフ君が逃げたら私の目撃情報も広まるよね。

ヘタしたら、討伐隊とか組まれちゃうんじゃない? それは危ない!

な、なんとしてでもあのカワイイエルフ君と仲良くならないと!

あんなカワイイエルフ君と敵対していい訳がない! あんなに可愛いのに!!!!

……だから、下心はないよ、ほんとだよ!? お巡りさん信じて下さい!


「ぽぽっ(まってー)」


【伝承スキル〘捕縛機動〙を発現しました。Lv1に上がりました】


 うわ、なんか私、早い!? 凄い跳躍したよ。これも自動追跡的なのか!?

あんなの走り幅跳びだって飛べないよ!? 金メダリストって次元じゃないよ。

うぉ、なんか距離が詰められた。すっごい自分の体じゃないみたいに

木々の間を抜けてくんだけど!? なんか、怖い、逆に怖い!

体が勝手にエルフ君を追いかけてるんですけど!?

枝とかぶつからないの!? いや、ほんとになんでそのタイミングで屈めるの!?

葉っぱが! 葉っぱが顔をこすっていくけど、私の体が追いかけてるー!?


「ぽっぽっぽっぽー(お願いだから待ってー) ぽっ、ぽっー(むしろ、止めて-)」


 私は内心、半泣きになりながらも森の中をどえらい機動で追いかけっこをする。

木々を縫い付ける様に跳躍するエルフ君も凄いが

それをなぞる様に追いかけていく私の体も凄い。

勿論、自由の効かない制御不能状態なのでほぼ遊園地のアトラクション状態だ。

驚愕の3D立体機動体験だよ!?


【怪異称号〘生を喰らう者〙がアンロックされました。

 怪異スキル〘魂を削る愛撫〙を発現しました。Lv1に上がりました。

 伝承スキル〘捕縛機動〙がLevel2に上がりました】


 そして、私はかなり怖い名前のスキル獲得と共にエルフ君の腕を掴む。

掴んだと同時にぶわっと私の体から紫と黒の中間の色みたいなもやが出たかと思うと

その掴んだ手からエルフ君の体へとじわじわと伸びていく。

コレってヤバめなスキルなんじゃないかなとか、うわっ怖がるなーとか

本当だったら色々と思うところはあるんだけど……あるんだけど、それよりもね?


「ぽぽぽっぽぉぉぉーーーーーーーーー!!!!

(あまぁぁあああああああーーーーーーーーーーい!!!)」


                   第十歩「美少年エルフの食レポ」に続く


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