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踏み出した最期の足跡「太陽の君へ」

 嗚呼、走馬灯というのは本当にあるものなんだね。

今、私の中に駆け巡ってくるのは、この旅路の様々な幻想眺め。

決して、現実を生きていく中では、出会えぬ光景も人も何もかも

瞼の裏をなぞり巡っては、私の思い出を想起させてくれる。


「……ぽっ、ぽぽぽっ(そう、最初はあの森からだったね)」


 真っ白い森。そこで出会った素直で可愛らしいエルフの少年。

優しくて、マメでとてもとても良い子だった。

怖い御姉さんも居たし、最初にやらかしてしまったりもしたけど

私はあの森で最初に過ごさなければ、この旅路を続ける事は出来なかった。


「……ぽぽぽっ?(私はあの人達と同じ所へ逝くのだろうか?)」


 次に浮かぶのは秘められた楽園、蘇る巨大な骨躯に皆が飲み込まれていく。

木々を焼き払い進む決死の英断であり、殺戮であった。

命を散らし合い、それでも紡いだ自らの子達の未来の為。

今でも思う。そうするしか方法は無かったのか?

私は他に何か出来たのではないか。私はただの傍観者だった。


「……ぽっ。ぽぽぽっ(そう。やっぱりアナタだったんだ)」

「そうですよ、名も知らぬ化け物よ」


 眩しく輝くアナタを見ると、私の目は潰れてしまう。

アナタの声はどこまでも響き、私を捕らえる。温かい光、私を溶かし焦がす光。

私の八尺丈から何倍にも伸びる影は、根元から千切れてしまいそうになる。

彼は優しく微笑んだ。温かく言葉をかけた。灼け付くほどの光を放っていた。


「……ぽぽっぽっ(太陽の君)」

「ええ、ずっと前から決まっていたんですよ」


 そう、太陽の君。貴女を初めて見た時から私には解っていたんです。

アナタが私を滅ぼす最期の人として、私の前に現れるのだろうと。

きっと私は為す術もなく、討ち滅されてしまうのだろうと。

その太陽の君が今、私の目の前に居る。私を滅ぼしにやって来た。


「……ぽっ、ぽっぽっ(そう、私は化け物だから)」

「そして、コレは太陽だから。この世界を見下ろし、照らし、枯らす者」


 太陽の君の白金色の瞳は、私を見据えてブレることがない。

彼が一声発すれば、彼が一振り手をかざせば、私など、私なんて――嫌だな。

死にたくないな。私は、私が、そんなに化け物が生きる事はイケナイ事なのかな?


「さようなら、名も知らぬ化け物よ。陽光の中に還るのです。

 太陽故に、コレは貴女を滅する事を躊躇出来ない」

「ぽぽぽっ、ぽぽっ(さようなら、太陽の君)」


 私の死後に皆に晒され、騙られ、怖がられてしまうのだろう。

私が〘八尺様〙として、生きて、生き抜いて、生き残って

生き晒して、生き延びて、この幻想世界の伝奇となっていった物語を。

嗚呼、どうせ伝わらなくても、聞こえなくても、解らなくても良い。

最期にこの言葉をアナタに送りたい。私は笑顔で声を振り絞る。

この世界は綺麗であったという遺言を。


「八尺丈の 幻想眺めは 絶景かな」


 これは化け物〘八尺様〙が幻想世界に産み落とされ、そして滅せられる物語

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