第八話 確かに食事は大事だけれども
「じゃあね!また会おうじゃないか!」
「ガォウ。」
『盗まれた!俺のフルーツ事件!』を終え、やっと帰る事にした。一度通った道なので、行きよりもだいぶ早く家に帰る事ができた。その際に、きちんと夕食であるうさちゃんも狩って行った。二匹ゲットだぜ!
家の前に着き、俺はそのまま外で肉を食う事にした。え?なんでかって?
焼肉するために決まっとろう!たわけ!
ていうわけで、さっそく準備をしよう。
まず、そこらへんから枝を取ってくる。森の中にあるので、余裕でいい量が集まった。それを石で囲った場所に置き、火をつける。口からドゥアッ!とね。
そして、血抜き、皮剥ぎ、内臓の処理を済ませたうさちゃんを、木の枝から削って作った串に刺して、と。
オーケイオーケイ!準備オッケイ!後は焼けるのを待つのみ。ちょいちょい焦げないように回せば完璧だ。
さてと、背負いっぱなしだったポーチを下ろしますか。トゥあっ!と、よし。
さてと、あのフィルとか言うバカのせいでフルーツを一個失ったけど、とりあえず残りを出しとくか。
ドサドサッ!バサッ!
ん?なんだこれは?見覚えのない物が…。
これは、紙か?どれどれ、何か書いてあるのぅ。読んでみるべし。
『やぁ!フィルだよ!さっきぶり!ていうか、この手紙に君がいつ気付くかでこの挨拶は変わるんだけどさ!この手紙はフルーツのちょっとしたお礼だよ。ナバルの実はなかなか食べられないからね。
まぁそんな事より、本題に入ろう。君はサージェントウルフというものだが、これは割と危険な魔物として人々の間で認識されている。君の事を見て、危険だと判断した人が討伐依頼を出すかもしれないんだ。いや、まだそういった事はないよ?ただ、そうなると冒険者が君のところに行き、命を狙うかもしれないわけなんだ。
つまり、あまり人の前に姿を表さないほうがいいかもしれない。しかし、完全に見つからないという事は恐らく無理だろう。
君のいる西の森、通称『エポナの森』は資源が豊富で、よく冒険者が赴く。低ランクのモンスターが多いため、新人も行きやすい場所だ。
だから、もしひとに見つかった場合、先程書いたような自体にらならないように、いい方法を記そう。いや、口止めに殺すとかじゃないよ?そうなると、余計に強い冒険者が派遣されてしまうかもしれないからね。だからさ、お願いするんだよ。言葉で。
実は人間というものは『スキル』というものを使っているらしくてね、その中で言葉を発する事ができない君が大いに助かるであろうスキルがあるんだ。
それは、「念話」さ。
頭の中から直接相手の脳に言葉をぶつけるような感じさ。これで、人との会話が可能になる。
実は、スキルというのはそう簡単に習得できるものじゃない。基本的に一つの行為を繰り返す事で身に付ける事ができるものだ。念話というスキルも、一ヶ月ほど特定の練習メニューをこなしてやっと手に入るものなんだ。しかし、今回ばかりは特別だ。そもそも、サージェントウルフである君が人間のメニューをやったところで無意味だろう。だから、この手紙の裏に魔法陣を書いておいた。それをじっと10秒ほど見ていると念話を習得できる。ちなみに、魔法陣は一度使うと消滅する。まぁ、こちらとしても事情があるからね。そこは勘弁してくれ。それじゃあ、次に会う時は、会話をしようじゃないか。またね!」
ほぉーん、なるほど。色々とためになる事が書いてあったなー。冒険者が意外とこの森にくるとか…うわー、コロサレル。
もしこの手紙がなかったら、能天気にのほほんと生きてて、討伐されちゃいましたって事にもなりかねなかったしな!
それで、念話かー。これは素晴らしい。人間とコミュニケーションを取る事ができるという事は、身の危険が少なからず減るわけだ。フィルのくせにいいものくれるじゃない。まぁ、今日会ったばっかりだけども!
ではでは、早速習得しましょうか。紙の裏にある魔法陣…と、これを10秒じー…と。
・・・・!
『念話ヲ習得シマシタ』
突然頭の中に声が響く。割とびっくりした。
ほ、ほぅ…習得するとこうやって声が流れるのね…。へぇ…。
隠しきれない動揺とともに、俺はある事に気付いた。
おっ、これは…。肉が焼けたようですな。
焼肉の完成である。上手に焼けましたー!
それでは、いただきます!
うまっ………!
スキルそっちのけの、主人公である。
主人公が念話でしゃべる時は、普通にカギカッコでくくります。