第六話 脇を通るだけなのに
さらば、シルバーウィークよ。
そしてこんにちは。魔境(学校)
商人 は 怯えて いる !
誰に?
俺だぁぁ!!
そう、俺はオオカミなんだ。つまり、人を襲うっていうイメージがあるんだ。
そんなわけで、今目の前にある馬車。その中に乗っている商人が怯え、何かを喚いている。
「お、お前たち!早くあいつをなんとかしろぉ!」
「む、無理だ…。俺たちはランクDだぞ?今目の前にいるあのオオカミはランクB以上は確定のサージェントウルフだ!勝てるわけがない!」
「その通りだ。しかもあいつ、見た所希少種のようじゃないか。」
「それをなんとかするのがお前たちの仕事だろう!早く戦うなりなんなりしろぉ!!」
「だ、だってよぉ…あんな高ランクの魔物が出るなんて聞いてねぇよ……。」
「それに、今下手に刺激するのはまずい。どういうわけかあいつすぐに襲ってこないようだ。このままそーっと引き返せ。」
「しかし!後ろから追いかけられたとしたら!?」
「俺たちがあいつを警戒しておく。それに、このまま向かい合わせになっていてもむしろ状況が悪くなる可能性がある。」
「わ、わかった…。すぐに引き返そう。」
うん、想像以上に警戒されてました、俺。
いやー、どうしようかなー。なるべく友好的に行きたいけど、これじゃ無理かなー。せめて、こっちに襲う気はない事をアピールしておこう。よし、フツーに通り過ぎるべし。フツーにだ、フツーに。
そういう事で、俺は今しがた引き返そうとしている馬車の脇を通る事にした。さて、トコトコトコとな。
「うわぁ!向かってきたぁぁ!」
「チクショぉ!戦うしかないのかよ!!」
「仕方がない…!武器を構えろ!あいつが飛びかかってきたらやってや………は?」
護衛役のような2人が武器を構えたが、気にせず歩いて脇を通り過ぎた。なんだか拍子抜けしたようで、ポカンとした顔をしている。
ふふふ、これが俺の《一切敵意はないよ作戦》だ!決まったぜ☆
「な…なんなんだあいつは?」
「こちらに興味がないのか…?いや、それにしたって威嚇ぐらいはしてくるはず…。好戦的な魔物と聞いているからな……。」
「ま、まぁ助かったけど…。それよりも……、見たかよ?」
「あぁ、あいつの背中……。」
「「ポーチ背負ってたよな?」」
その後、ポーチを背負い、どういうわけか人間を襲わないサージェントウルフの噂が囁かれるのは先の話である。
主人公のポーチは、人間がリュックサックやランドセルを背負ったような感じになっております。