第十八話 白熱した戦い(実況)と晒し首
「よーし、そっと下ろせー。よいしょっ…とオーライ、オーケー!」
いま、俺によるブラストバーンによって気絶した女冒険者をとりあえず洞穴の中に運んでいた。ひとまず俺の寝床に置き、放置しておく。
「驚きましたな。」
「ええ、そりゃもう色々と。」
ちなみに、ルーペにも若干被害が及んだ。言葉にはしないが、表情がやばかった。なんか、金剛力士像みたいな感じ。
「さて、予想外な感じで人間に見つかってしまった訳で、このままこいつを帰すわけにはいかないわけだ。」
「当然です。」
「そこで、こいつが目を覚ました時に色々と説明したいと思う。」
ちらっと女冒険者の方を見てみると、白目をむいて口を半開きにしていた。なかなかホラーだ。
「口封じに殺したりとかはしないのですか?」
「それは最終手段。できる限り説明で納得してもらいたいな。俺たちは人を遅いませんよー、て感じで人畜無害なことを証明するのだ。」
「できますかね。」
「頑張る。」
仮に殺してしまった場合、前科がついてしまう。そうなると、無害な魔物として人に認識させるのは難しくなるからな。平和が一番なのだよ。
「と、いうわけでこいつを埋めよう。」
「なにがどういうわけなのか。」
「いや、このまま放っておいて目が覚めたら、また襲ってくるかもしれないだろ?幻聴がーとかつぶやきながらだぜ?」
「確かにそうですね、それで埋めるというのは拘束の意味合いですか?」
「いえーす。イメージとしては頭だけを出して晒し首みたいな感じに埋めたいと思う。そうすれば動かないし、俺らの話を聞かざるを得ないだろ?」
「多少強引ですが、まぁそうですね。」
「と、いうわけでこいつを埋めるんだ。穴掘りよろ。俺、意外と掘るの無理。」
「わかりましたよー。どこらへんに掘りますか?」
「そこらへん。」
「的確なアドバイスですね。」
洞穴の少し奥側にルーペは穴を掘り始めた。手が短いので、俺と違って後ろ脚を器用に使って掘っている。あ、どうでもいいけど掘るって単語自体がなんか卑猥(ry
それから10分ほど、割と早く穴が掘り終わった。
「早いなおまえ。」
「わたしを誰だと思ってるんですか。」
「ニートドラゴン。」
「種族名みたいに言わないでください。」
「まぁいいや、こいつを埋めなきゃな。」
相変わらず白目をむいたままの女冒険者を俺は背中に乗せて運ぶ。手順を説明すると、
女冒険者の隣に俺が伏せる→ルーペが女冒険者を転がして俺の背中に乗せる→俺歩く、みたいな感じだ。
穴の近くに女冒険者をドサッと置き、足がちゃんと下になるように穴へと押し込む。ちょうど立ったような体勢になったところへ、隙間を埋めるように土を入れていく。あ、ルーペ、ちょっ、こっちに土かかってるって。このやろう。
「なんか恨みでもあるのか。」
「え?」
背中を向けて足で蹴るようにして土を入れているため、俺にかかっていたことに気づいてないようだ。まぁいいや。俺よけるし!
そして、五分ほどで作業は終わった。いい感じに晒し首になっている。未だに白目をむいてはいるが。
「なんか…あれだな。」
「怖いですね。」
だって、薄暗い洞窟の中に白目をむいた首があるんだぜ?趣味が悪いわ。
「まぁこれで、目が覚めたとしてもいきなり動いたりはしないだろ。」
「ひとまずオーケーですね。」
「さて、ひと狩り行きますか。」
「ええー、この状況で行くんですか?」
「働けニート。」
「穴掘りましたもん。」
「ドヤるな。」
「てなわけで、早速現場の方に着きました。実況はワタクシ、ゴローでございます。」
「誰に言ってるんですか。」
「読者の皆様だよ。」
「??なに言ってるんですか?」
出かけてから数分後、うさちゃんを2匹見つけたので、早速ルーペに狩ってもらう事にした。ただ、なんか雰囲気的に寂しかったので実況マン的なノリでいきたいと思う。ちなみに、念話でルーペだけを指定しているので、うさちゃんズに気づかれることはない。
「さぁーて、ルーペ選手。今回が初めての狩りとのことですが、心情の方はどうなんですかねー?やはり、緊張が大きいように見受けられます。なんせ、今晩のメインメニューとなる肉のもとが相手ですからねぇ、もし逃してしまっては晩飯はないようなものです。失敗は許されません!さぁ!ルーペ選手の入場でーす!」
例のごとく茂みに隠れた状態からうさちゃんズの前にルーペが飛び出す。うさちゃんズは俺の時と同じように、やっぱり逃げるどころかルーペに襲いかかる。
「おぉーっと!?先手をとったのは相手チームのうさちゃんズ!スピードアタッカーの二匹がルーペ選手に同時に襲いかかる!これに対しルーペ選手!うまく立ち回って回避しましたぁ!おっとぉ!?ルーペ選手、回避の勢いのまま尻尾を相手に叩きつけたぁーっ!1匹ダウン!これでかなりうさちゃんズは不利だぁ!もはやズではない!」
尻尾で叩きつけられたうさちゃんは地面に衝突し、ドグシャッ!みたいな音を立てて絶命した。饅頭を壁にぶつけた感じかな。
「残されたうさちゃんに逆転のチャンスはあるのか!?めげずに攻撃を繰り出す!しかし!躱されてしまう!!ルーペ選手、いい動きです!ここでルーペ選手、うさちゃんに噛み付いたぁー!こ・れ・は痛い!」
噛みつかれたうさちゃんはギギギギィィィギャィアァァァ!?などと叫びながら必死に抵抗している。いかし、もう勝負は決まったようなもので、そのままルーペはうさちゃんを噛み砕いた。
「勝負ありぃ!ルーペ選手の勝利でぇす!いやぁー、圧勝でしたねぇー。今回が初めての狩りとはとても思えない戦いでした。ルーペ選手、今回の戦いについて何か一言を!!」
「うるさい。」
「なるほど!心に響く言葉ですね!では、これにて狩りは終了です!皆さん、お疲れ様でしたぁ!」
その後、ルーペに吹っ飛ばされた。
ポル(女冒険者)「うっ…、ここは…?」