第十二話 意外と名前って忘れがちかも
忘れがちですが、主人公の名前は
『春崎 護郎』です。
ゴローの後に丸もニャもつきませんのであしからず。
死ぬかと思った。
まさかあんなに不安定な飛行だとは思わなった。もっとちゃんと飛べよ!と言ったところ、
「普通は何かを乗せる何てことはしないんですよ!!」
との事らしい。ならば乗せるようにしてもらいたいものだ。期待しよう。
「いやまぁ、とりあえず生きててよかったネ。」
「本当ですよ…まったく、いきなり乗ってきて、飛べ!だなんて、無理に決まってるじゃないですか。」
「その割には飛んだけどな。」
「落下死するところでしたけど。」
まぁ、それはご愛嬌で。
なんだかんだと言いながら、無事にフィルの言っていた岩の前に着いた俺は、この前言われた通りに岩を叩く。
トンッ!トットトン!トーン!
雪だるまは作らないけどな!
「はいはい!どちら様?」
おっ、フィルの声がした。とりあえず返事をする。
「俺だ。」
「誰だい?」
「サージェントちゃんだ。」
「おおおお!?もしかして君は…あの時のサージェントウルフか!!喋ってるって事は、ちゃんと念話を獲得したんだね!ちょっとまってて、今行くから!」
すると、岩が横にずれ、そこからなんと、フィルが……!て、あれ?いない?どうして?
「後ろだよ。」
「なんでやねん。」
「どう?遊び心溢れるこの仕掛け!前から出ると思ったら後ろから出る!ゲリラ的だろ?」
「いや、普通にでろよ。そこにゲリラ要素はいらない。」
「えー、まぁいいや。まさかこんな早くに僕を訪ねて来てくれるとは嬉しいよ。」
「聞きたい事がいろいろあるんだわ。」
「いいよ、なんでも聞いてくれ!あ、それと、」
するとフィルは、ルーペを指差して聞いてきた。
「こちらさんは君の彼女かい?」
何を言っているんだこいつは。断じて違うぞ!こんな昨日今日知り合ったばかりの奴など、彼女の訳がなかろう!種族も違うし!
「違います。」
「そうだ、違うぞ。」
「おおっ!なんだ、君はすでに喋れるんだね!やはり、竜種は知能が高いというのは本当だったんだな!」
「紹介するわ。こいつ、居候ドラゴンのルーペ。」
「いそ…!?おほん、どうも、ルーペです。本名は長くておそらく覚えられないと思うので省きます。」
「これは丁寧にどうも。僕はフィルト。名前はこれだけだから多分覚えてもらえるとは思うけど、フィルと呼んでね。」
「そういえば、サージェント君の名前を知らないなぁ。教えてくれないかい?」
「そんなに知りたいんか?」
「ナバルの実3個分くらいは。」
「そうでもなかった。えーと、おれの名前は確か護郎だ。」
「なんで忘れかけてるんだい。」
「それルーペにも言われたわ。」
デジャヴを感じる会話をし、俺は本題に入る事にした。
「とにかく、聞きたい事があるんだけど。」
「あぁ、そうだったね。とりあえず、ここで話すのもあれだから、中に入ろうか。」
「え…?岩の中?」
「から通じてるよ。」
そうして、俺たちはフィルに案内されながら岩の中に潜り込んだ。
といっても階段があり、割と近代的な作りになっていた。階段を降りてくる途中で、岩が出口を塞いだ。
「ひとに見つからないようにしているんだ。」
なんでも、見つかっては少々まずいものがあるらしい。ならば俺たちも入ってはいけないんじゃないかと聞いてみると、
「いやぁ、君たちは魔物だから人間のルールなんて知らないだろう?つまり人間のルール的にはアウトな事でも、君たちには関係のない事だからね。」
と言ってきた。うは、犯罪の気配。
階段を降り切ったところで、今度は長い直線の廊下にでた。なかなかの地下だが、壁自体がなんか光っているのでまったく暗くない。
フィルが言うにはこの先すぐに家があるらしい。しかし、地下のこの場所といい、魔物を恐れない感じといい、こいつ何者だ?まぁ、それも後で聞くけどな!
「そういえば。」
突然フィルが喋り出した。
「ルーペちゃんはクイントドラゴンだろ?なんで山奥にいて滅多に人前に現れない君がこんなところに?」
「え?わたしってクイントドラゴンっていうんですか?」
「そこからかよ。」
「うん、クイントドラゴンっていうのは警戒心が強くて、あまり姿を見せない。一時期、あまりにも姿を見せないから絶滅したんじゃないかと言われていたほどだよ。」
「えぇ!?もしかして私って…。」
「アホレアだな。」
「言わないでください!」
「しかも君は人間である僕を恐れていない。親から教わらなかったのかい?人間は危険だから近づくな!って。」
「あー、そんな事も話されていたような気もします。」
「いや、そこ結構重要じゃね?」
「うん、君はもっと警戒心を持った方がいいね。」
「あ、はい…注意します…。」
傍目からみると、ドラゴンが人間に叱られているというシュールな図になっている。それを見ているオオカミである俺。なんだこれ。
「ところで、フィルはなんでルーペがメスだって気付いたんだ?」
「ん?何を言っているんだい?どう見ても女の子じゃないか。」
「「え……?」」
俺は純粋に驚き、ルーペは若干嬉しそうに驚いていた。
なるほど、わかった。オラわかったぞ。
こいつ、変態だ。色んな意味での変態だ。
「ゴローくん、何か今僕に失礼な事を考えなかったかい?」
「おお、当たり。」
「いや、そこは否定しましょうよ。」
「うん、まぁいいんだけどね…。と、そうこう言ってるうちに僕の家に着いたよ!」
廊下が終わり、今目の前には少し大きめのドアがある。フィルはおもむろにその扉の前に立ち、
「膝は肘ではない!!!!」
と、叫んだ。すると。扉が開いた。
「うん、意味がわからない。」
「私もですよ。」
「さぁ!二人とも、中に入ろう!」
よくわかんないまま、家の中に入る事に……いやちょっとまてよ。
「今の掛け声はなんだよ。」
「合言葉だけど?」
「独創的ですね。」
「たしかに、よく考えたらセンスあるかも……。」
「あれ?意外と褒められてる?」
というわけで、いよいよフィルの自宅に上がる事になった。
どんな内装か、非常にベリー、楽しみだ。
レッツ、物色!イェア!
ルーペという名前が理科の実験で使うあれと同じ名前ですが、偶然です。
似ているといえば似てるが、まったく問題ない。
……気をつけよう。