第十一話 絶叫マシンに命の危機を感じる
「それで?これからどうするんだ?ルーペよ。」
「実は………まったく予定がないのです。」
「おまえ親離れなめてるだろ。」
話を聞くところによると、独り立ちをした後は完全に自由らしい。そしてこいつはまだ子供であり、弱い。幼体の状態で送り出す親も親だけどな。
「あの…。」
「んぁ?」
「今更何ですが、最初に私を見たときに追い出さずにいてくれてありがとうございました。」
「お、おう。突然すぎるわ。」
「それと、食事の云々の事までしてもらって、感謝してます。」
「客人をもてなすのは当たり前だからな。入ってきたのはそっちだけど。」
「そこでです!」
「?」
「恩返しも兼ねて、あなたについていきたいのですが、どうでしょうか?つまり、共生です。」
「なるほど、例えばお前はどんな事をするんだ?」
「あなたが狩りに行ってるあいだにこの家を守ったり、出かけているときにこの家を守ったり…」
「つまりニートだろ。」
「しつれいな!自宅警備兵ですよ!」
「それをニートって言うんですけど。」
こ、こいつ…ヒモ野郎だ…!
「どうですか?しっかりと家を守りますよ?」
「ニートは置いといて、おまえ他に行き所がないんだろ?」
「は、はい…。」
「まぁ、なら一緒に居てもいいぜ。」
「ほ、ほんとですか!やった!これでニー「その代わり働けよ?」は、はい…。」
そうして、俺は仲間を手に入れた。
ゲームっぽく言うと、
「ドラゴン の ルーペ が 仲間に なった!」
「どうしたんですか急に。」
「言いたかったの!」
「とにかく、これからよろしくな、ルーペ。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「ところでお前ってオス?」
「いや、メスですけど。」
「う…嘘だろ…!?」
「女の子に向かって失礼ですね。」
「ドラゴンだけどな。」
ちなみに、こいつの外観を言っておくと、色がまず緑っぽい。そして、二足で歩いていて、前足は小さい。ティラノサウルスのようなポージングだ。頭の後ろの方に毛?のような長いものがとげとげしている。背中にはしょぼい羽が生えている。
つまり、ヨッ○ーに近い。まぁ、丸みはあまりないけど。
「そういえば、あなたの名前は?」
「俺?確か護郎だったかな。」
「なんで忘れかけてるんですか。」
「いや、あんまり俺の名前出ないからさ。」
「まぁいいです。ゴロウですか。では、ゴローと呼びますね。」
「意外と普通。」
「すみませんね!」
そうかー、ゴローかー。まぁいいけど。呼びやすいだろうし。
「ところで、お前って空飛べる?」
「翼が未発達なので、飛んだとしても不安定ですが…。」
「あ、まずその羽で飛べるのね。」
「魔力を大幅に使用しますけど。」
「魔力ってなに?」
「え…?」
「え…?」
・・・
「あっ、MPか!」
「え?あの、大丈夫ですか?」
「うん、多分大丈夫。あれでしょ?なんか技使うと減るやつでしょ?」
「まぁ、だいたいそんな感じですね。」
「当たってた。」
「とりあえず、飛べるっていうんなら話は早い。俺を乗せて東の方に向かってくれ。」
「えぇー?疲れるんですよ?飛ぶのって。」
「トレーニングも兼ねるんだよ。」
「わかりましたよ……。」
「やったー。フライアウェイ!」
というわけで、俺はルーペの背中に乗ってフィルの元へ向かう事にした。よっしゃぁ!楽ができるゼェ!と思っていた俺の考えは、その後、ルーペの飛行によってことごとく。打ち砕かれる事となる。
「ちょっ、おま!まっすぐ飛べってぇぇ!」
「む、無理ですよぉ!!重くて無理ぃぃ!」
「そんな事言ったっておま……うぉぁぁぁぁあ!!落ちるなぁ!」
「オチルオチルオチルオチル!!」
「「ギャァァァァァァア!!!!」」
その後、ドラゴンとオオカミの絶叫が西の森から聞こえたと街の人々は噂するのだった。
快適な空の旅など、はじめから無かった。
ジェットコースターとか拷問です。
むかし、無理やり乗せられて死を覚悟しました。生きてますけど。