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別界記  作者: 星 陽友
第一章 はじまりの時
10/45

第十頁

 その時光とファメルの二人は、何処までも続く漆黒の通路を進んでいた。

「まだまだ続きそうだね。このままじゃ真っ暗で何も見えなさそう……」

「そうだな。何か明かりになる物さえありゃあな……」

 そんあ会話の直後、二人は揃ってその周辺に視線を移し変え続けていく。彼らの背後にうっすらと輝く、広間からの“灯り”を頼りに。

「……見つけたぞ!」

 壁面辺りを調べていたファメルからの声を耳にし、自身が調べていた床からすぐさま駆け寄る光。

「何を見つけたの?」

「ほら、これだよ。そこの壁に掛けてあったんだ」

 そう言ってファメルが光に差し出したのは、一本の古びた松明だった。木製で、作られてからかなり年月が経過したと思われる代物ではあったものの、先端には着火用の部分が残されており、照明に使用するには十分であった。

「<エファイレ>!」

 ファメルがそう叫ぶと、今まで何の変化も変哲もなかった松明の先端に、突如として紅色の篝火が灯り始めた。その灯火のお陰で、通路の奥まで染っていた漆黒が消失し、かなり先まで明るく目に映るようになった。

「これでよし、と!」

 そうしたファメルによる一連の流れをすぐ傍で眺めていた光が、彼に一つの疑問をぶつける。

「ねえファメル……」

「ん?どうした?」

「今君が起こしたのって、もしかして……」

「ああ、今のは勿論“魔法”だよ!」

 そう言いながら、突如として得意気な表情を浮かべるファメル。

「いわゆる“特権”ってやつだよ、オレ達“勇者”にとっての。それに選ばれたその瞬間から、こうして使いこなす事が出来るんだ!」

 へえ、と深く感心する光。彼による質問は更に続く。

「“勇者”の“特権”…って事はもしかして、僕も使えるようになるって事?」

「ああ!今のままじゃまだ無理なんだけど、例の“武器”さえ手に入れば、お前にだって使いこなせるんだぜ!」

 そうなんだ、と自らの胸に手を当てながら納得する光。その奥から沸き立つ鼓動が、自然と高鳴っていくのを感じながら、彼は思った。

(僕も“魔法”が使えるだなんて…想像した事もなかったよ……)

 自分が暮らし続けていた世界での常識が、根本から覆されたような疑念の表情に駆られる。

「…………おーい」

「!?」

 いきなり耳に飛び込んできたファメルからの掛け声。変な想像に気を取られていた為それに適応しきれず、思わず拍子抜けする光。そんな彼に対し、頭上に疑問符が浮かび上がるファメルだったが、すぐさま気を取り直して声をかける。

「こんな所で油売ってねぇで、さっさと行こうぜ」

「え…あ…う、うん」

 そして二人は松明の灯りを頼りに、改めて通路の奥深くへと進んでいった――――。


 ――――通路には幾つもの曲がり角が存在しており、一向に終着点が兆しがない。

 この手の冒険には付き物ではあるが、所々で不気味なモンスターも出現する。幸いにも強敵や難敵とは言い難いモンスター、いわゆる“雑魚キャラ”のみなので、苦戦を強いられる事はない。しかしその代わり、特にファメルに限っては、同じ事の繰り返しが続くばかりで苛立ちが積もり続けていた。


 またしても新たな曲がり道を通過しようとして、またしても出現したモンスターを倒し終えた直後、顔中の汗を拭いながら、荒い息継ぎとともに光は声をかける。

「はぁ、はぁ…す、少し…休憩しない?…はぁ、はぁ……」

「…………」

 ファメルからの応答がない。少しばかり心配に感じた光は、もう一度彼に声をかけてみる。

「ね、ねえ…ふぁめ」

「ああああっ!もうっ!!」

「うわあっ!?」

 突如として通路中に響き渡るファメルの怒鳴り声。いきなり予想外の返答を繰り出され、思わずその場に腰を抜かす光。

「さっきからずっとずぅぅぅっと、おんなじ事の繰り返しっ!!このままじゃオレ達、無駄に年とって、

情けなくミイラの仲間入りじゃねぇか!」

「ふぁ、ファメル!お、落ち着こうよ!頭に血が上り過ぎちゃダメだよぉ……」

 すぐに体勢を整えた光が宥めようとするも、ファメルの怒りは止まる所を知らない。

「ああっ!クソっ!!」

 苛立ちを抑えきれず、自らのすぐ脇にある壁に向かって、自身の拳を強く殴りつける。神殿全てが今にも崩れ落ちてしまいそうなくらいけたたましい轟音が、光の耳の奥へと突き刺さる。

 そしてファメルが拳を当てた壁面に、小さなひびが入り込む。

「あ、やべぇ…………」

「あーあ、やっちゃったね…………」

 不味い事をしてしまったと冷や汗を流すファメルに、思わず本音を漏らしてしまう光。

「どうしよう…弁償しなきゃ……」

 ファメルがそう呟いたその時だった。


 壁面に刻まれた小さなひびが、徐々に大きさを増していくではないか。

「…………!?」

 あまりに突然の出来事に、開いた口が塞がらないままでいる二人。

 やがてそのひびは長方形に象られると、次の瞬間そこは一気に崩壊した。

 すぐさま二人がその箇所を確認する。そこにはすっかり崩落した壁面が瓦礫と化し、その場に積み重なっている。

 その時二人は発見した。

「お、おい…光…あれ……」

「うん…間違いないよ…あれって……」

 二人が見つけだしたのは、これまで二人が気づきもしないままでいた、新しい通路であった。今までの通路と比べるとやや狭くはなっているが、そこからは更に奥へと進められそうであった。

「……時にはやってみるもんだな、無茶な事……」

「う、うん……」

 ファメルの小さな呟きに、首を縦に振って肯定する光。呟きは更にこう続く。

「……オレ達、ずっと無駄な事してたみてぇだな……」

「う、うん……」

「…………と、とにかく!」

 突如としてファメルの声が大きさを元に戻した。

「これでようやく、先に進めるようになった訳だ!そうと決まりゃあ、行くしかねぇだろ?」

 久々に聞いた彼の溌剌とした声の効果からか、いつの間にか光の表情にも明るさが取り戻されていた。その笑みを浮かべたまま、光も何の躊躇いもなく声を発する。

「そうだね!折角先に進めるようになったんだもの。早速行こう!」

「おう!」

 その時二人は進み始めた、新しく切り開かれた道の先を目指して――――。


 ――――新たな通路は今までは狭いとはいうものの、丁度二人が横に並んで通れる程の余裕はあった。なので彼らは松明の灯りを中央に掲げ、右側に光が、そして左側にファメルがいる状態で道を進んでいく。

「……それにしても、外から見た時もそうだったけど、やっぱり内部も凄いね……」

 ただ前進するのみで二人の会話が途絶えていた。その重苦しい空気を打開しようと、神殿の壁面を眺めながら一言呟く光。

「ああ、そうだな……」

 ファメルもまたそう答え、壁面を眺める。

「何時からなんだろう、この神殿が造られたの……?」

 何気なく質問してみる光。

「“造られた”ってゆーか…“出現した”って言うのが正しいかな。オレが“勇者”に選ばれた直後にな……」

 ファメルもまた頭上に疑問符を浮かべながら答えたその時だった。

「…………あ、あれ?」

「う、嘘だろ!?」

 二人は言葉を失った。

 今までの丈夫な石畳から積み上げられた砂の床に変わったその先に、道はなかったのだ。二人の目前には高く築かれた壁が立ちはだかり、もはや成す術もない状況に陥ってしまった。

「何だよ、また行き止まりかよ!」

 ファメルが怒りを露わにする中、二人は壁に近づこうと、砂の床に足を踏み入れる。

「ここにも何か仕掛けとかがあればいいんだけど…光も調べてみてくれ」

「う、うん…分かった」

 そして二人は壁に両手を当て、暫くの間それを叩いたり、擦ったりを繰り返した、ファメルが求める何らかの仕掛けを探す為に。しかし……、

「……はぁ、ダメだ、何も見当たらねぇ……」

 先程とは打って変わって、今度は肩を落として大きく項垂れるファメルであった。

「残念だったね……」

「あーあ、折角新しい道が見つかったって思えたのによ……」

 二人ともショックを隠しきれない状態でいた。

「しょうがねぇ。さっきの所まで戻って、もう一度別の道を探す事にするか。ほら行こうぜ、光」

「うん…………」

 未だ頭を地面に向けて下げ続けたままのファメルが、先に砂の床から元の石畳へと移動する。その瞬間を見計らい、光もまたこの場を脱しようと振り向きかけた。


 その時だった。

「……えっ!?」

 突然光の叫び声が、その場に大きく響き渡った。

「ちょっ、なっ何これっ!?」

「ん?どうした、ひか……」

 何気なくファメルが振り返った瞬間、彼は驚愕した。

 その時光の膝までが、既に砂の中に吸い込まれていたのだ。彼がいくらもがいても、その身体はただ砂の海に沈んでいくのみだった。

「ど、どうした光!?な、何でこんな状態に……」

「わ、分からない!ただそっちに振り向こうとしただけなのに、いきなり足から沈んできて……」

 光が慌てて説明するこの瞬間も、彼の身体は止まる事なく、砂の中へと取り込まれていく。

「安心しろ、今そっちに戻ってお前を助ける!」

 そう叫んだ直後、ファメルはすぐさま光を引き上げようと、再び砂の床へと足を踏み入れる。その表情からは、相棒の危機を直ちに救おうとする勇ましさも垣間見えていた。ところが、

「……なっ!?」

 彼がその砂に足を触れさせた途端、ファメル自身の身体もまた、一気に沈み込んでしまう。これには流石のファメルでさえも慌てざるを得なかった。

「な、何だこれ!?か、身体が……」

「ふぁ、ファメル!!」

 先程よりも増大した叫び声。彼がその源へ目を向けると、既に光の身体は彼の顔と片腕以外が、砂の中へと沈みきっていた。

「た…たすけ…て……」

「光…!オレの手に…捕まれ……!」

 必死になって差し伸べられたファメルの手。光は答える余裕もないまま、それに向けて、唯一抜け出たままの片腕を力強く伸ばす。

「ぐっ…うぐっ……」

「頑張れ!あと少し……!」

 歯を食い縛りながら腕を伸ばし続ける光。そんな彼を精一杯励まし続けるファメル。。その状態が暫く続いた後、ようやく二人の手が一つに重なる。

(よし!後は一気に引っ張って……)

 しかしこの時ファメルは忘れていた、彼が光を救おうと咄嗟に思いついたこの手段が、全くの間違いであるという事を。

「……ふ…ふにゃあ…………」

「…………あ」

 彼が気づいた時にはもう遅かった。彼が差し伸べた掌に宿された肉球が、光の精神力を一気に緩和させていたのだ。

 その時もはや二人には、相棒の手を強く握り締める力も、相棒を引き上げ救い出す力も残ってはいなかった。そしてそのまま二人の身体は、無残にも砂の海へと沈みきってしまった、その場に彼らの悲鳴を残しながら――――。



「――――う…うぅん……」

 先に目を覚ましたのは、光だった。

「こ…ここは……?」

 彼の瞳に映るのは、黒く染め上がった“闇”のみだった。

「……あ…そうだ、ファメルは!?」

 暗闇の中、必死になって周囲を両手で探る光。しかしその度彼の手が触れるのは、ただ砂の感触のみだた。

 暫くしてようやく暗闇に目が慣れ、触覚だけでなく、視覚も使いこなしてファメルを捜索する。

「あの時、僕は手を握りながら沈んでいったはず。だから僕からそんなに離れていないと思うけど……」

 そこで今度は自らの声を頼りに、彼の行方を探る事にした。その準備の為に、周囲の空気を大きく吸い込む。自らの肺が満杯になったのを自覚し、それを大声とともに吐き出す。

「おおおい!ファメルうう!何処にいるのおおお!」

「…………ここだよぉ」

「!?」

 その時聞き覚えのあるか細い声が、確実に光の耳に飛び込んできた。暗闇の中、その声の出所を目線で探る。

「ど…何処!?何処にいるの!?」

「こ…ここだっつーの……」

 すると光は突然自身の足元に、不自然に突起した箇所がある事に気づいた。

「…ま、まさか……!?」

 その言葉の直後、すぐさま突起の周辺を必死になって掘り返す。大量の砂が邪魔をし、いくら掘っても先へと進んでいかない。

 それでも光は掘り続ける、次第にその速度を速めていきながら。知らぬ間に気合いのこもった雄叫びを上げている事も、彼には関係ないものであった。

 そして暫く掘り続けた末、彼はようやく一つの“何か”を掘り起こした。「ぷはぁ」と大きく息継ぎした“それ”が、光に話しかける。

「はぁ、はぁ、苦しかったぁ…すまねぇ光、まさかオレが助けられちまうなんて…はぁ、はぁ、……」

 その声の主は、紛れもなくファメルその人であった。彼の無事を確認した光が、胸を撫で下ろしながら満面の笑みを浮かべる。

「ファメルぅ!よかったぁ、無事で……」

 この時彼の瞳には、今にも流れ落ちそうな一滴が浮かべられていた。それに気づいた光が拭い去り、そのままファメルに質問する。

「こ…ここって……?」

「ちょっと待ってろ。<エファイレ>!」

 彼の掛け声とともに、その掌の中心に灯された炎。この炎のお陰で、今までこの空間を染め上げ続けていた漆黒が、ある程度消し去られた。

 二人の足元には大量の砂が敷き詰められている。また彼らが天井へと見上げてみると、そこにもまだ漆黒が漂ったままであり、どれ程の高さか到底理解出来ないでいた。

「僕達、相当高い所から落ちてきたみたいだね……」

「ああ。もしこんな“砂のクッション”がなかったら、オレ達……」

 最悪の事態を想定した二人が、揃って冷や汗を浮かべながら全身を振るわせる。

 それから彼らは、ここからどのように進んでいくのかを相談する事にした。

「……とにかくここからどう進んでいくかを考えよう。あの行き止まりからここまで来れたなんて、おかしくねーか?」

「うん。わざわざこんな部屋まで用意されているなんて、いくらなんでも不自然だよ」

 そして周囲を見渡しながら、光はこう断言した。

「きっとここの何処かに、何か秘密が隠されている…そう思うんだ」

「そうだな、オレもそう思ってたんだ……ん?」

「ど、どうしたの、ファメル?」

 突然何かに気づいたファメルの様子を、光は見逃さなかった。するといきなり、ファメルがある一点に向けて指差す。

「ほ…ほら……あれって…」

 彼が示した方向へ注意深く視線を送る光。

 そこにあったのは、二つに並べられた手型の空間であった。右側には左手の、そして左側には右手の形をした手型だ。しかもそれが刻まれている壁面も、他とは異なったデザインとなっている。

 ここで二人はそれに近づき、ファメルの炎で確認しながら、何気なく呟く。

「これって……」

「もしかして……」

 そして彼らは互いの顔を見つめ合い、全く同時に頷く。

「…………せーのっ!」

 その掛け声とともに、二人は互いに片方の手を、同時に型へとはめ込ませる。その様子はまさしく、神殿入口の大広間で、そこに彫り込まれた足型に対して二人が実践した行動そのものだった。

(もしあの時と同じだったら……!)

(ここから次へ進めるはず……!)

 彼らはそう確信していた。心の声であったはずなのに、まるで直接声を合わせているかのように、その思惑は見事に一致していた。


 暫く二人がこの状態を保ち続けたその時だった。

「…………!?」

 彼らがはめ込んだ二つの手型を引き離すように壁面が突如として両断され、ゆっくりとその隙間の幅が増していく。

 するといきなり隙間の向こう側から、強烈な輝きが差し込んできた。

「うっ!?」

 二人の眼に容赦なく襲い掛かる輝きに、思わず彼らは両腕で顔面を覆う。

「な…何が起こったの!?」

「分からねぇ!分からねぇけど……」

 これまで暗く閉ざされた空間にい続けた為に、突然の輝きに未だ慣れそうもないファメル。しかしそれでも彼はこう断言した。

「お…オレ達が思い浮かべた事……やっぱり間違ってなかったみてぇだな……!」

「う……うん!」

 ファメルの言葉に対し、自らの首を縦に振る光。

 そして徐々に目も慣れ始め、ようやく輝きの“向こう側”へと視線を送れるようになった二人。恐る恐るその先を見つめてみる。

「…………なっ!?」

「こ…ここって……!?」

 その時彼らは驚愕した。

 二人の目に飛び込んできたもの、それは巨大な“空間”であった。まだ外側からしか確認していないのだが、そこからでも広々としていると理解出来る程だ。

 早速その内部へと足を踏み入れる二人。先程行き止まりと思われたあの箇所と同じく、大量の砂が敷き詰められた床に、彼らの片足が触れる。

 内部は二人の想像を越えた広さを誇っていた。入口から見上げた天井の位置があまりにも高く、目が眩んでしまいそうな程である。そのすぐ近くの壁には巨大な松明が並んでおり、この空間に明るさをもたらしている。

「さっきの眩しさの原因って、あの松明の灯りだったんだな……」

 その灯りを確認しながら呟くファメル。

「そうみたいだね…………え?」

 突然光の動きが停止した。ファメルはすぐにその理由を問う。

「?…どうした光?」

「ねえ…あれってもしかして……」

 そして光はそのまま、空間奥のある一点に向けて指差す。その一点に対し、自らの視線を集中させるファメル。

「…………!!??」

 その時ファメルは目を見張った。

 彼が呟いた“あれ”の正体、それは入口から最も奥にある設けられた台座であった。更に注意深く見ると、その中心に“何か”が備わっている事に気づいた。

「も…もしかして…あれが……?」

 光がそう尋ねながらファメルに視線を移し変える。その直後に彼もまた、光の顔を強く見つめた、これまでにない満面の笑みを浮かべながら。

「…ああ!…遂に見つけたんだよ、オレ達!あれこそ間違いなく、お前だけの“武器”さ!!」

 そして二人は改めて、奥にある台座に備わった“それ”を見つめ直す。迷宮を彷徨い続けようやく金銀財宝を見つけ出した冒険者の如く、驚きの光と笑顔のファメルから見た“それ”は、何処となく神々しさを感じさせる。

「……さて、こうして見つけたからには立ち止まってる時間はねぇ。さっさと手に入れて、ここから脱出しようぜ!」

「あ…うん、そうだね。行こう!」

 光にとってもはや何の異論もなかった。早速“それ”に向かって走り始める二人。一面に敷かれた砂の影響で少々動きにくかったものの、今の彼らにそんなものは関係ない。逸る気持ちを抑えきれないまま、二人の姿がこの空間の中心部を通過しようとする。


 その時だった。

 突然何か頑丈な物が崩壊するような破壊音がその場に響き渡る。そうかと思えば、今度は彼らが立つ地面が、とてつもない震動に苛まれる。その衝撃の影響で立っていられなくなり、その場に激しく倒れこむ二人。

「う、うわぁ!?」

「じ、地震かっ!?」

 突然の出来事に動揺を隠せない二人。

「…………!?」

 未だ揺れが収まらない中、彼らが倒れ込んだ中心部の砂が突如として沈み込み、巨大な蟻地獄が完成した。

 幸い二人ともどうにかその場から離れていた為事なきを得る事は出来た。しかし……、

(な…何だろう?…この…胸騒ぎ……)

(このドキドキ…まだ何か待ち受けてるって事か……?)

 言葉は違えど、彼らは揃って胸に手を当てながら、同じ思いをめぐらせていた。


 その時だった。突然蟻地獄の底から、“何か”が噴出してきたのだ。

「!!??」

 その時二人の目前に姿を現したもの、それは――――。

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