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お爺さん
「……ロゼアさん、あれ」
僕は、思わずお爺さんを指差した。
「人間か」
「ええ、なんか落ち込んでいるみたいです」
ほぅ、と、ロゼアさんは息を吐いた。
「行ってみるか」
そしてそのまま、ザッ、ザッと歩いていく。
「え、ちょ、ちょっと待って、ロゼアさーん!」
止める暇もなかった。僕は、慌ててロゼアさんの後についていった。
「……失礼します、お爺さん、どうかなさいましたか?」
単刀直入か。
「こんなお時間にバスは来ませんよ。疲れているのでしたら、私で良ければお連れしっ……」
そこまで言って、ロゼアさんははっと口をつぐんだ。お爺さんの顔が、あまりにも深刻そうだったからだ。
「いえ……大丈夫ですよ。どうもありがとう」
お爺さんは、儚げににっこりと微笑んだ。
「あの」僕は、たまらず声を上げた。「何かあったんですか? あの、良ければお話し……して頂いても……あ、ダメですよね……」
「おい、ルエル」
ロゼアさんがたしなめたけれど、お爺さんはしばらく考えた後で、「はい」と一言だけ呟いた。
ゆっくりと顔を上げると、お爺さんはぽつりぽつりと語り出した。