ルミネートとソーセオスト
「そもそも、九歳のガキと俺がペア組んでんのが間違いなんだ」
午後十時。人も捌けてきた通りを歩きながら、ロゼアさんは溜め息をついた。
「七歳差だぜ、七歳差。おかしいだろ。隊長に問い詰めても『パートナー同士の歳が離れていることなどよくあることだ』とかほざきやがるし。年齢を考えて言えよ。俺の歳ならまだペアのサポートの方やってたっておかしくねぇよ」
「でも……僕って規格外ですよね?」
「ああ、ルミネートの一年実習だろ」
――ルミネート。魔界にある、唯一の良質悪魔輩出学校。ソーセオスト(魂吸引や吸血鬼撃退を仕事にしてる)を将来の目標にした六歳から十二歳までの子供が通い、その間にその基礎を勉強していく。
中でも各学年で最も優秀だった生徒には、実際のソーセオストとペアを組んで行われる一年間の現場実習、通称一年実習が待っている。その第四学年代表が、なんの間違いなのか僕になったわけだ。
「はい、そうですけど……」
「お前みたいなのが一位なんだと思うと、なんとも言えねぇ気分になるな。はっきり言わせてもらえば、俺の頃と比べてお前は術式もなにもかも俺より下だ。全然ダメ」
その後も返事が小さいとか行動が遅いとかブツブツ呟いて、ロゼアさんはまたはーっと溜め息をついた。すごい言われようだなぁ……。
「ロゼアさん、ルミネート行ってましたっけ?」
いや、とロゼアさんはマフラーを巻き直した。
「俺はご存知の通り金が無かったから行ってねぇよ。子供の頃はずっと内職してた。ほら、シャーペンを組み立てるやつ」
そうだったのか。でも、ロゼアさんがガツガツ音を立てながらシャーペンを組み立てている姿が、あまり想像できない。
「でも、ソーセオストになるのって、試験に受からなきゃいけないんじゃあ……?」
「ああ、まぁそれは、俺のカリスマ的なセンスでなんなく。お陰で今のとこは最年少ソーセオスト」
随分若いなぁとは思っていたけど、最年少だったのか。全然気づかなかった。
「最年少で、術式使いこなせて魂吸引数も多いんですかぁ。すごいですね!」
「ま、まあな」
ロゼアさんは、満更でもなさそうな顔をして腕組みをしている。意外と顔に出るタイプなのかも。
「で、探してんのかよ」
話がぐるりと一周戻ってきてしまった。そうだった、お喋りしてる場合じゃなかった。
「いや、見つからなくて……」
「馬鹿野郎、なに手間取ってんだ……、って、おんなじことやらせんなよ。早く探せ、そして見つけろ」
「は、はいっ」
返事くらいちゃんとしろ、とロゼアさんに殴られまた涙目になりながら、僕は落ち込んでいる人間を探し始めた。
あれから、殴られ小突かれ怒鳴られながら人間を探していた。怒られるのに疲れて、僕は、ロゼアさんからふっと視線を外して道路の反対側に目を向けた。
――そして、見つけた。バス停のベンチに、一人のお爺さんがぽつんと座っているのを。