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見習い悪魔。
十月三十一日、今日はハロウィーン。吸血鬼やゾンビ、悪魔が地上に降り立つ日。今年も、ジャック・オー・ランタンの魔除けなんてお構い無しに、沢山の悪霊達が夜の街をさ迷っています。
さて、ここに悪魔が一匹。名前はルエル、まだ少年の、小さな悪魔です。この悪魔――私達人間とそっくりです――が何をするのかと言うと、人の心を読み取り、魂を吸いとって捕らえてしまうのです。でも、見習い悪魔のルエルにはまだ難しいので、魂を吸いとりやすそうな人間を探すだけにとどまっているのでした。
でも、なかなか上手くいきません。魂の吸いとりやすそうな人間というのは、落ち込んでいたり怒っていたり、そういった負の感情が胸の中で渦巻いている人間です。ですが、それがなかなか難しいのです。ああ、あの人間は落ち込んでいる、と年上悪魔を呼ぶと、落ち込んでいたはずの人間が笑顔を見せていたりするのです。
人間というのはなんて変わりやすい不思議な生き物なんだろう、と、そんなことがある度にルエルは首を傾げるしかないのでした。