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幕間『後始末』

お待たせしました。第6.5話です。短い上に超絶gdgdだがこんな体たらくで大丈夫か?(大丈夫じゃないry

史上最gdgdですが、俺にも何が言いたいのか分からないので内容把握できなくても問題ないです(問題だry




 幻想郷の中心くらいに広がる魔法の森。その入り口付近に、一軒の古道具屋が存在している。名を香霖堂と称すその商店は、現在絶賛営業停止中である。店舗の入り口に掲げられている看板が、魔砲の光という名の蹂躙を受けて跡形も無く消し飛んだのである。その周りの屋根諸共に。


「まったく……今回ばかりはツケとくわけにはいかないな。ちゃんと最低限の修繕はしてもらわないと」

「だーかーらー、いまそれを手伝ってるんだろ? 香霖こそ口じゃなくて手を動かせよ」

「その台詞、そっくりそのまま返品させて貰うよ。それに被害者の僕が動く理由はない」

「商人が言う台詞じゃないぜ」


 元々古い建物だったとはいえ、店舗は客に商品を提供する大切な売り場であり、なによりも自身の住居だった為、その店舗の店主・森近霖之助はこまめな清掃・整備を怠ってはいなかった。それを、魔法使いの少女・霧雨魔理沙が、魔砲の光で塵一つ残さず清掃してくれた。完全に有難迷惑である。


「なんで、俺まで手伝う羽目に……」

「連帯責任という奴だな。ま、頑張れ!」

「連帯責任を負わせる奴が自信満々に言うな」

「お前が大人しく負けてればこんなことにはならなかった」

「コイツ……」


 魔理沙がその魔砲を放つきっかけとなった模擬戦(弾幕ごっこ)の対戦相手である外来人・國崎悠人も、とばっちりを受けて一緒に店舗の修繕に当たることになった。確かに、間接的にではあるが自身にもその原因はあったわけだが……。諸悪の根源である魔理沙の開き直られた態度を取られると、それはそれで腹に据えかねるモノがあるというものだ。


「良いお茶が無事で良かったわ」

「霊夢! お前も手伝え!」

「やーよ、面倒臭い。壊したのは魔理沙でしょ」

「それ、僕のとっておきのお茶なんだけど……」

「それより喉乾いた……一番いい茶を頼む」

「そんな体力で大丈夫か?」


 香霖堂の破壊者・悠人と魔理沙が修繕作業に四苦八苦しているすぐ傍で、白い大きな長方形の箱(冷蔵庫)に座ってのんびりお茶を啜っているのは、終始傍観に徹していた博麗霊夢。その姿はまるで部外者だと言わんばかりの寛ぎようだった。確かに傍観者ではあるのだが。


「それより、さっきのアレはどういうカラクリなの? 結構重そうにしてたのに急に軽々と振り回しはじめたけど」

「それは僕も気になってた事だね。まさか片手で扱えるとは思わなかったよ」

「どんな汚い手を使ったんだ? はよ教えろ」

「お前ら……」


 霊夢の言うアレとは、先の模擬戦の際、悠人の持つ重量十キログラム超の大剣をまるで小枝のように軽々と振るった現象の事である。その時まで、悠人はその大剣を重そうに引き摺る様に扱っていたのだが、戦闘開始後しばらくして突然、そんな余韻を欠片も見せずに、まるで得物の中身が別の何かに替わったかのような変貌ぶりに、霖之助はおろか霊夢ですら驚愕を隠せなかったのだ。


「それが、俺にも良く分からないんだ。魔理沙に嬲られて、調子に乗るなよこの野郎! って思ったら、急に体に力が湧いてきて」

「火事場の馬鹿力って奴?」

「随分火力の高い火事だったんだね」

「嬲るとは酷い言いようだぜ」


 自分の体の中を駆け巡る様に迸った力の奔流、それが齎した刹那の万能感と微量の畏怖を己が身に感じる悠人だったが、この場に居る者たちは誰ひとりとしてそんなことに気付く性格ではなかった。霊夢と霖之助は暢気に返し、魔理沙に至ってはまったく関係の無い部分に反応する始末である。まぁ、元より悠人もこいつらにまともな反応など期待してはいなかったのだが。


「それより不思議なのはそのガラクタ(ガンブレード)だぜ。一体どうやって私の(魔力)を吸収したんだ? 普通の金属にそんな真似が出来るとは思えんのだが」

「うむ。『魔理沙を負かした』このガラクタ(ガンブレード)だが、刀身はミスリル合金と呼ばれる、魔力伝導率の高い特殊な金属を用いているんだよ」

「なるほど、だから魔力の無い悠人でも八卦炉を動かせたのか」

「いや、今はそこじゃなくて、なんでそんなファンタジーな金属を霖之助が持ってて加工まで出来たのかをだな……」


 ミスリルとは外の世界のファンタジー等で有名な架空の金属である。銀の輝きと鋼を凌ぐ強度を持ちながら鉄より軽い金属で様々なゲーム等で武器や防具の材質として登場することが多い。架空の金属だけに様々な伝承が存在し、霖之助の言う魔力伝導性云々の真偽を確かめる手段は無いが、現実として悠人の振るったガンブレードは魔理沙の星弾の魔力を吸収して八卦炉を稼働させるに至っている。


「まぁヒヒイロカネだって持ってたしな。」

「大抵の物は揃ってるわよね。欲しい物は無いけど」

「ふふ……まぁ、『無い物は無い』と言っても過言ではないかな」

「でも傘は無いんだな」

「『無い物』は『無い』からね」


 そんな適当で良いのか?と、あらゆる意味で幻想郷の破天荒さに慣れていない悠人は感じたが、深く追求するだけ無駄であるということは薄々感付いているのでこれ以上の言及は避けた。訊いたところで彼女達がまともな反応を返すとも思えないし。今も通じてるのか通じてないのか良く分からない話を展開してるし。


「ところで、アレの使い心地はどうだったね?」

「使い心地、と言われてもな……俺も必死だったし」

「ふむ……まぁ、どちらにせよアレを使いこなせそうなのはキミくらいしか居ないわけだが」


 妙に含みを持たせた言い方で霖之助が絡んで来る。彼とは会って間もない関係だが、その性格は大体把握することができる。故に、彼が何を言いたいのかもまた理解出来た。


「…………言っておくけど、俺は金なんて持ってないぞ」


 つまり、『その商品(ガンブレード)、買わないか?』ということである。具体的に言われるまでもなく意図を理解した悠人が先手を打って予防線を張るが、その抵抗も無意味だった。


「大丈夫だ、問題ないぜ。この店では後払い(ツケ)システムが通用する」

「いや通用しないから。キミが今まで買って(持って)いった商品の代金はまだ一銭も支払われてないから」

「ほら、大丈夫だろ?」

「そんな商売で大丈夫か?」


 キリッ、と無駄に自信に満ちた魔理沙の後押しが、遠回しに霖之助の商売を手伝っている。霖之助の言―――今まで彼女が買って(盗んで)いった商品代金が未だに未払いなコト―――が事実なら、果たしてそれは商売の手伝いになっているのか否か判断に困るが(なっていない)。ちなみに先刻から繰り返されている霊夢の『そんな~大丈夫か?』というのは、多分、彼女が今読んでいる外の世界から流れてきた書物の影響なのだろう。とりあえず大丈夫じゃないので無視しているが。


「まぁ……くれるというのなら有り難く貰うが」

「タダであげるとは誰も言っていないよ」

「ツケであげるんだろ?」

「キミはそろそろ黙っていなさい」

「そんな商売で」

「うるさい」


 あの一瞬の反撃を放った後は、悠人の体に漲っていた力も何処かに失せたように消え去り、あの大剣は元の重過ぎる荷物の体に戻ったわけだが。それでも、あの大剣を己が手で振るった瞬間の感覚は未だに体が覚えている。何物にも勝る万能感、目の前を塞いでいた壁を自分の手で突き崩した様な甘美な達成感が、悠人に再びあの感動を味わいたいという欲求を生んでいた。その欲求が購買欲に繋がるのに時間はかからなかった。


 流石は商売人と言ったところか。しかしそんな霖之助の手腕を以ってしても、彼女達(魔理沙と霊夢)が居るだけで彼の目論見は一瞬で瓦解する。口を塞いでいないと無駄な補足というか何というか……余計な邪魔だけは必要以上にしてくれる。とりあえず霊夢は一言で黙らせることに成功した。


「それなら、ここで働きながら払っていけば良いのではないかしら?」


 その時、何処からともなく、霊夢でも魔理沙でもない少女の声が一同の居る空間に響いた。その声は、この場に居る誰もが聞いた事のあるものだった。そして同時に、この場に居る誰もが、出来れば厄介になりたくない者の声だった。その声は彼らの頭上、虚空に走った空間の切れ目から響いている。


「あー、悪いが紫さん。僕の店は従業員を雇えるほど繁盛してはいないのだが……」


 空中に開いた異空間の隙間から、紫色のドレスと長い金髪を揺らして現れたのは、境界を操る妖怪・八雲紫。相も変わらず神出鬼没な登場だなぁと、恐らく今までの会話の流れも把握しているのだろうと察した霖之助は、その辺の説明を省いて紫の提案をゆるりと受け流す。


「大丈夫、問題ないですわ。私からも多少の支援ならできるので。現に、既に河童の修繕部隊をこちらに向かわせているので、夜までには店の修理も完了できると思いますわ」

「随分根回しが良いわね。アンタ何考えてんのよ?」


 まるでこうなることが予測できていましたと言わんばかりの紫の用意周到さに、感謝の念より疑惑の目を向ける霖之助に代わって霊夢がその真意を問い質す。紫が霖之助に必要以上に肩入れする理由が分からないのだ。まぁこの妖怪のやる事は殆どが常人には理解できないことなのだが。


「先の模擬戦(遊び)を観て、『(悠人)』の(能力)に興味を持ったの。出来れば傍に置いて観察していたいのだけれど、生憎私も忙しくてね」

「それって―――」

「俺の……力?」

「ほう、悠人の能力なぁ。私も気になってたんだが、コイツは一体どんな能力()を持っているんだ?」


 紫―――万物を見透かしたような口振りで胡散臭い言葉を連ねる彼女の微妙に含みを持たせた言い方に微かな違和感を感じる霊夢だが、己が身に宿っているらしい力とやらが気になる悠人と、同じくその力に“模擬戦とはいえ”敗北した(ということにしてやろうと思う)魔理沙が会話に割って入ってきた。


 その言葉を待っていましたと言わんばかりに内心で笑みを漏らし、しかし表面上は表情を変えず説明を始める。


「彼……悠人の持つ能力は、感情の昂りを力に換える程度の能力……簡単に言えば、怒りを感じればその分だけ体に力が漲るといった具合かしら」

「やっぱり火事場の馬鹿力だったんだな」

「中正解♪」


 感情とは、生物が持つ自己の認識を確立させる要素の一つであり、物事に感じて起こる気持ちを指す。外界の刺激の感覚や、観念によって引き起こされる、ある対象に対する態度や価値を決定付ける脳の反応である。


 感情の昂りとはその名の示す通り、喜び、怒り、哀しみ、驚き等の感情が一定の境界線を超えて生じる過剰反応であり、大抵の場合は興奮に我を忘れたり、酷く沈鬱な気分に陥ったり、吃驚して心臓が止まったりすることを示す。


「いや、最後のは違うと思うぜ」

「一見したところ、この能力には強化の上限が見えない……つまり、その気になれば私ですら凌駕する程度の力を得ることだって可能な能力なのです」


 魔理沙の(予測済みの)突っ込みを無視して、まぁ生身の人間には無理でしょうけどね、と付け加えた紫の言葉を聞いて、勘の良い霊夢は彼女()の意図を看破した。なるほど、確かに使い方次第では唯の人間が持つには過ぎた力である。下手をすれば幻想郷の存続に関わる程の力を発揮する恐れもある。幻想郷を愛する紫にとって、不穏な存在は極力排しておきたいところなのだろう。


「それと、悠人が香霖堂(ここ)に住む事と何の関係があるのよ?」


 霊夢には紫の狙いが殆ど分かっているが、念の為に確認を取る。間違ってたら気分的に何か嫌だし。果たして紫は霊夢の読んだ通りの答えを示す。霊夢がそこまで読んでいる事を更に見越しての妖しい笑みを浮かべながら。


ここ(香霖堂)なら、彼の力が暴走しても大して被害は大きくないでしょう?」

「いやいやいやいやいやいや……それはちょっとあんまりなんじゃないかな……?」


 なるほど、その際の店舗修理費を前払いする意味で、紫はここまで支援したのか。その程度に考えている魔理沙の横で、霊夢は尚も鋭い視線を紫に向けている。まだ、他にも狙いがあるのではないかと眼光で訴えるが、紫は気付かない振りをして話題を戻す。


「破壊された店の修理、そして(悠人)が滞在している間の支援はこちらが受け持つ。この条件でどうかしら、店主さん?」

「ふむ……確かに悪くは無い条件だが……タダより高い物は無い、という言葉があるのはキミもよくご存じだろう?」

「ツケだろ?」

「…………」


 強大な力を持っていながら、その行動律の不可解さと言動の胡散臭さに定評のある紫の言葉を素直に受け入れられるほど、霖之助も馬鹿ではなかった。霊夢と同じ様に何か裏があるのではと勘繰ってはいるが、しかしその表情は意外にも温和な、普段の霖之助が普通の客相手に接待する際のそれであった。疑いの言葉を口にし牽制をしているように見えるが、彼の中では既に結論は出ているらしい。紫の―――真意が不明瞭な―――好意に甘えるという結論が(そして、もういい加減面倒臭くなってきたので魔理沙は全面的に無視することにした)。


「まだここに住むと言ってないんだが……俺の意志は無視なのか……?」


 事ここに至って、ようやく話題の中心に挙がっていた人物が会話に割り込んできた。その人物とはもちろん、今宵の宿も心配な外来人にして迷い人たる悠人の事である。そんな状況下にある今の彼に選択肢など有るわけがないのだが、一応、若さ故の反抗的なポーズを取ってみる。


「別に文句があるのなら他所へ行って貰っても構わないよ? 夜の幻想郷で野宿をするのは些かスリリングだと思うけどね」

「お世話になります」


 即決だった。過酷な幻想郷で生き抜く為には、無駄なプライドなど必要無いのだ。


(って、そんなのでいいのか?)


 答えの出ない自問自答に対して『背に腹は代えられない』と内心で自己弁護を図る。『なるようにしかならない事は、なるようにしかならない』―――数刻前に神社で霊夢に言われた言葉が蘇る。


(なら、なるようにしかならない範囲でやれることをやるだけさ)


 半ば開き直りに近い感覚で、悠人はそう決意した。

 何を成すにも、まずは自分の気持ち次第なのだ。

 幻想郷を生き抜く術を図らずも体得した悠人だった。






「………………」


 話が纏まったらしい一同の会話を聞きながら、巫女は一人不信の表情を内心に抱き沈思する。彼女が持つ天性の勘が、不穏な気配を感知しているのだがそれを確認する術は持ち合せていない。直截的に訊いたところでこの胡散臭い妖怪が馬鹿正直に真実を明かすとも思えない。


 常は楽天的で『頭の中が春ですよ』と言われる程、何も考えていないような彼女―――博麗の巫女・霊夢が普段使わない頭を高速で回転させて悩んでいる。彼女の勘がそうさせている。常には有り得ない事である。つまり、今の霊夢は常には無い何かを無意識の内に感じ取っているということに他ならない。


 それが、未だかつてない未曾有の大異変がこの幻想郷を襲う事の予兆だったということを、今の彼女には知る由もなかった―――




既に完成してしまっている第七話との辻褄合わせに満身創痍(殴

次回・紅魔館編突入。と言いたいところだけど、最悪もう一話挟む事になるかもしれない。どちらにしろお待ちいただけたら幸いです。日本語がおかしいのは超眠いからだという事にしておこう(ry

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