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第五話『お客様は神様なのか?』

gdgd回は続くよどこまでも(殴

霖之助登場回。彼は二次創作では変態キャラ扱いされることが多いですが、俺は変人キャラ扱いで通します。あれ、あんまり変わんね(ry




 香霖堂―――


 幻想郷の中央東部に位置する人間の里から少し離れた地域に広がる、魔法の森と呼ばれる広大な森林地帯の入り口付近に建てられた一軒の古びた建物が、幻想郷で唯一外の世界の道具を取り扱う商店である。建物の周辺にはどこかで見た事あるような無いようなよく分からない種々雑多のガラクタがまるでゴミのように積まれている。その様相を端的に言い表すならゴミ屋敷という形容が相応しいだろうか。


 ともかくも、“古道具屋”という名の意味をこれでもかと(間違った意味に於いても)アピールしている香霖堂の外観に、その姿を初めて見た外来人・國崎悠人は絶句するしかなかった。


「…………これ、営業してるのか?」


 恐らくはこの店を初めて見た者達が総じて呟いたであろう言葉を、悠人もまた口にした。店名を示す看板が掲げられた屋根のすぐ下、店内への入り口周辺のみ足の踏み場があるという状況である。余程特殊な商売でない限り、これほど奇特な店舗などあるわけがないのだ。だが、しかし、この店―――香霖堂は、特殊で奇特な商売をやっている店だった。


「おーっす、香霖~」

「こんにちわ、霖之助さん。お茶の用意は出来てる?」


 まるで自宅に帰ってきたかのような気楽で遠慮の無い様子で、魔理沙と霊夢が店の扉を開けると同時に口を開いた。随分と図々しい奴らだ、と呆れながら悠人もその後を追う。


 店内は明かりが少なく薄暗かったが、それでも、悠人にはこの店の異常さを感じ取ることができた。店内のありとあらゆる場所―――床に、壁に、天井に、壁際の床に、隙間なく所狭しと詰め込まれている(並べられている、という形容が向いていないのは確定的に明らか)、得体の知れない無数の何か。店の外に積み上げられているゴミの様な何かと同じものでないのなら、乱雑に置かれているこれらが、この店に陳列されている商品だということになる。


「やぁ、魔理沙に霊夢。勿論、そんな用意は出来ていない」


 魔理沙と霊夢の声に呼応して、奥にあるカウンターの向かいから、客ではない来客の入店に気付き、手に持つ本に落としていた視線を上げる人影が立ち上がった。ずかずかと店内を進む魔理沙と霊夢の後に付いていくと、次第にその風体が明るみになっていく。


 青色を基調にした奇妙な意匠の服装に身を包んだ細い長身。ボサボサでクセの強い短い銀髪の下にはアンダーリム(レンズ上部のフレームが無いタイプ)の眼鏡を着用した整った輪郭。レンズの奥から覗く視線は鋭くも険の無い穏やかなもの。一見して好青年の印象を抱く男が、霊夢と魔理沙以外の、客と思しき来客―――悠人に視線を固定して歩み寄って来る(ちなみに霊夢の言ったお茶の用意云々は彼女流の挨拶みたいなものなので無視した)。


「君が、さっき魔理沙が言ってた外の世界から来た人だね」


 さっき、というのは、先程神社で話した香霖堂の手伝い云々の際に魔理沙が話したのだろう。勝手に噂話のネタにされるのは気に入らないが、自己紹介の手間が省けるので良しとしよう。などと思いながら、悠人が口を開く。


「國崎悠人……だ。よろしく」


 自らの名前を名乗る一瞬、歯切れが悪くなったのは、その名が真に自分を指すものであるという確証が無いからである。一応、自分の顔写真付きの身分証明書があるにはあるが。


「僕は森近霖之助。見ての通り、この香霖堂で商いをやっている」


 幸い相手、霖之助の方は悠人の躊躇には気を留めず自分の自己紹介と共に右手を差し出した。悠人も躊躇いを振り払うような心持ちで、霖之助の手を取る。思えば幻想郷に来て、こういう感じで他者と挨拶を交わしたのは始めてなんじゃないか?などと思う悠人である。


「面倒臭がりの香霖が自分から挨拶に出向くとはな。何を企んでいるんだ?」

「随分と失礼な言い方だな。お客様に自分から挨拶をするのは商人として当然のことだろう」

「霖之助さんって商人だったんだ」


 魔理沙が少し驚いたような面白がっているような真意を読み取れない不明瞭な、解りやすく言うなら悪戯っぽい笑みを浮かべて霖之助をからかう。からかわれた霖之助は至極当然と言った感じの平静な表情で反論する。霊夢のボケなのか素なのかよく分からない発言は相変わらずスルー。


 魔理沙の発言が真実だとすると、この霖之助という男は面倒臭がりで自分に有益な事でない限りは自ら積極的に行動することはないようだ。そしてその霖之助の発言から、彼の行動の真意が読み取れた。


「俺は別に何か買いに来たわけじゃ……」


 どうやら霖之助の眼鏡には悠人が目新しい客に見えたようだ。確かに店内に入ってから周囲をきょろきょろと忙しなく視線を泳がせていたわけだが、それは別に目ぼしい物品を探していたわけではない。意味不明な物で溢れ返った混沌の坩堝の様な店内が珍しかっただけである。


「もうそろそろ梅雨の時期だからね。傘の一本くらいは持っててもいいんじゃないかな?」


 だが霖之助の方が全く意に介した様子は無い。溜まりに溜まって不要になった大量の在庫、もとい、お客様の所望する商品を薦めるべく、執拗にセールストークを展開してくる。店内の中央壁際辺りのガラクタ、もとい自称商品を漁ってひっくり返して売り払いたい、もといお客様に提供したい商品を探し出す。


「この傘なんてどうかな?大きさも男性用だし……」


 そう言って霖之助はガラクタの山の中から一本の、それなりに小奇麗な唐傘を取り出して見せる。彼の言う通り、長さは成人男性が使っても問題ない程度の防雨面積を持っている事が見て取れた。実際に広げて見せようと霖之助が取っ手にある“トリガー”を引き絞ると―――


 ッガウゥン―――!!!!!


 と、物凄い爆発音、というか発砲音を響かせて、傘の石突“に空いた空洞(銃口)”から勢い良くマズルフラッシュを閃かせて鉛弾(弾丸)を撃ち出した。店の天井に穿たれた穴を見るに、実弾のようである。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 四者しばしの沈黙。やがてその静けさにバツの悪さを感じた霖之助が、


「うん、これは違うな」


 と何事も無かったかのように開き直ったので、他三人も今の光景は見なかったことにした。


「そんなことより、香霖よ。今作ってるって言ってたアレ見せてくれよ」

「ああ、お茶の事かい?」

「お茶ならもう私が淹れてるわよ」


 銃声の余韻と硝煙の香る店内の沈黙に耐え切れず、また話題の切り替え時とばかりに魔理沙が話を切り出した。霖之助の自然なボケには、いつの間にか奥の居間に上がり込んでいた霊夢が自然にツッコミに見せかけたボケという名のツッコミを入れる。


 三者の流れるような自然な(明らかに不自然なのだが)会話の応酬を眺めて、一人取り残された風情の悠人は、この三人の付き合いが長いということを勝手に悟った。


「お前がハマッてるって言ってた変な工作の事だよ」

「ああ、アレか。実はもうすぐ完成するんだ。良かったら見て行くといい」


 最初からそのつもりで来たんだぜ。と言って魔理沙が先程まで霖之助が座って本を読んでいた(実は本を読みながら作業をしていた)カウンター裏まで歩いて行く。悠人もそれに倣って魔理沙の後を追う。なんだ、今日の俺は親猫の後にくっついて行く仔猫みたいだな、などとどうでもいい事を考えながら、魔理沙の頭越し(と言っても魔理沙の身長は低いから普通に立っているだけで十分向こう側は見える)からカウンターの上を覗いて見た。


「僕が造った道具の中では、八卦炉以来の傑作かもしれないね」


 そう自慢げに言いつつ霖之助が手で示したのは、カウンター裏の作業台上に横たわる鉄色の物体。中央に縦方向に向かって切れ目の入った分厚い鉄板の様な部位は外側に行くに連れて薄くなりエッジ部分はまるで刃の様な鋭さを持ち、先端部分は刀の切っ先を思わせるほど鋭利に尖っている。反対側には、なにやら原始的だが複雑な機構の機械の様な部位で盛り上がっており、その先にはまさに日本刀の様に紐で巻かれた拵えの柄が伸びていた。その全容を纏めて言うなら、『妙にゴツイ刀身を持つ機械仕掛けの日本刀』といった具合か。刀身が既に日本刀の体を成していないのが最大の問題だが。


「あー、なんだいこれは」


 その巨大刀身疑日本刀を見て、魔理沙がもっともな疑問を口にした。恐らく後ろで見ていた悠人だけでなく、この物体を見た全ての人が同じような疑問を抱くことだろう。それだけ、二人(霊夢は既に奥の居間で寛いでいてこちらには興味を示していなかった)の目の前にある物は異質だった。


「これはね、ガンブレードと呼ばれる、剣と銃を融合させた感じの武器だよ」


 魔理沙の問いを待っていたかのような口振りで霖之助は説明を始める。


 彼が言うには、このガンブレードなる武器は外の世界から流れてきた雑誌に載っていたもので、たまたま製造に必要な機材が揃っていたから造ってみようと思った、という思い付きから生まれたものらしい。その雑誌の情報によると、ガンブレードは大剣に銃のメカニズムを組み込んだ特殊な歩兵用近接兵器で、斬撃と同時にトリガーを引き発砲の衝撃で刀身を振動させ相手に大ダメージを与える事ができるという。用途は主に重装甲の兵器や重装備の対人用に開発されたものらしい。しかしながら大剣と銃を組み合わせた結果、重量が人間が扱うには重過ぎるということが判明し量産には至らず、一部のマニアックな傭兵のみが使用していた。


「らしいよ?」

「いや、らしいよ?じゃなくてだな……」


 雑誌に載っている記事の要点を読み出しながらの説明の最後をそう締め括った霖之助に、魔理沙が呆れたような力の抜けた突っ込みを入れる。これではいつもと立場が逆じゃないか、と困惑する魔理沙を無視して、霖之助は更に語り出す。その説明は既に人に聞かせる為のものではなく、自分の蘊蓄(知識)を垂れ流して悦に浸る自己満足の域に達している。


「本来ならこのガンブレードは実弾を使って衝撃を生み出し打撃力を増すものなのだが、僕はこの機構をヒントにオリジナルのガンブレードを造ってみたんだ」


 そう言うと霖之助は台上に載るガンブレードの柄を持ち、機関部から垂れ下がる様に伸びるトリガーらしきレバーを引き絞った。すると、ジャキンッ!という鋭い金属音と共に、刀身の中央に入った切れ目が広がった。切れ目を中心に刀身が左右に分割されたのである。


 そんな謎のギミックを披露されて更に困惑する悠人と魔理沙が霖之助に視線を戻すと、彼は自身の作品の雄姿を誇るような笑みのドヤ顔(眼鏡のレンズをキラリと光らせるオマケ付き)を見せ付けてきた。全く意味が分からない。


「このように、刀身が分割して機関部にある銃口から直截弾幕を撃ち出して射撃武器として使用することもできるんだ。更にこのガンブレード、機関部の動力炉にミニ八卦炉と同等のものを使用している為、小さな魔力で大きな火力を期待できる優れ物なんだ」


 もはや二人は「へぇ~」と力無く返すしか出来る事が無い。よくもまぁ、こんな工作に熱意をもってのめり込めるものだと感心すらしてしまう。男の子は何歳になっても童心を忘れないというが。


「で、このガラクタは何の役に立つんだ?」


 魔理沙が、誰もが疑問に思っていた事を問い質す。

 果たして返ってきた答えは、


「役に立つか立たないかは、買った人次第さ」


 つまり、売り物(商品)にするだけである。

 アホらしい、と小声で呟いて、魔理沙は近くに置いてある大きな壺の上に腰掛けた。「あー、あんまり面白いモノじゃなくて悪かったな」と悠人に謝るでもなく謝って、すぐ傍の棚に並んでいる本を取って(ページ)をめくり始めた。悠人も魔理沙に聞こえるか否かという程度の疲れた風な小声で「いや」と返したが、魔理沙は既に本を読み始めて反応は無かった。


(幻想郷って、変な奴ばっかりだな……)


 やれやれだ、と心中で溜め息を吐くこと一瞬、視線をガンブレード(ガラクタ)に戻そうと首を捻ると、目の前に霖之助の眼鏡が現れた。


「うわ!?」

「そういえば、君は外の世界からやって来たんだったね」


 突然、至近距離に現れた霖之助から慌てて距離を取った悠人に視線を固定しながら、光を反射してキラリと閃く眼鏡のブリッジを指でクイと押し上げ、口の端を不敵に釣り上げる怪しげな微笑みを見せる霖之助(変人)。その雰囲気に、悪徳商人のような胡散臭い気配を察知して悠人は身構えた。


 果たして悠人の予知した通りの言葉を霖之助は口にする。


「買 わ な い か ?」


 ウホッ、いい武器……とでも言えばいいのだろうか、などと馬鹿な事を考える一瞬の間を置き、悠人は即座に首を横に振る。


「いや、俺は金持ってないし、そんな武器とか使った事無いし……」


 言葉を濁してなんとかしてこの悪徳商人の魔手から逃れたい悠人である。実際にこちら(幻想郷)へ迷い込んだ際に財布は落としたらしく、所持品は着ている衣服と自分の顔写真入り身分証明のみ。外の世界の通貨が幻想郷で使えるか分からないし、更に悠人に武芸の心得もあるはずがなく、買ったところで無用な荷物が増えるだけである。


 だが、この悪徳商人にとって客の都合はどうでも良いものだった。ただ買って貰えればそれでいいのである。後の事は買った客だけの都合であり、どんなクレームが来ようと反論する用意は―――


「おいコラ悪徳商人。お客様は神様だったんじゃないのか?」


 切羽詰まったような勢いで悠人に詰め寄っていた悪徳商人こと霖之助の頭を、魔理沙がハードカバーの本の背表紙で殴りつけて黙らせた。頭頂部に受けた衝撃で極彩色に染まる視界を揺らがせ一瞬意識を失うもすぐに立ち直る。ハッと目が覚めたような顔をする霖之助は、まるで毒気を抜かれたような雰囲気で、一瞬自分が誰なのか分からないといったような素振りまで見せる始末である。


「あ、ああ―――すまない、どうやら興奮していたようだ……いや、久しぶりのお客だったのでね」


 なるほど、どうやら香霖堂の経営状況は芳しくないらしい。久しぶりに来店した客を絶対に逃がすまいと、切羽詰まった店主(霖之助)は人格が変わるほどの勢いで悠人に商品(ガラクタ)を買わせようと迫ってきたのである。常から『お客様は神様』の理念を忘れず、尚且つ店の利益にも繋がり万人が得をする商売を心掛けている霖之助にとってあるまじき醜態を晒したわけだ。


「とはいえ、これから幻想郷に住むにあたって丸腰では心許無いんじゃないかい? 人里にはもう滞在できないんだろう?」

「ん、いや、まぁ……」


 幻想郷に迷い込んで来て、魔理沙の助けを借りて訪れた人間の里―――幻想郷で唯一の人間の集落―――での一時滞在か定住を期待していたのだが、その希望を自らの失態で打ち砕いた例の事件(というか珍事)についても、やはり魔理沙から伝わっていたようだ。やり直せない現実と揺ぎ無い事実を突き付けられて言葉を濁すしか悠人には出来なかった。


 幻想郷は人間と妖怪が共存する世界であり、外の世界とは大結界によって隔絶されている。結界で閉ざされて幻想郷が成り立ったのは明治時代であるが、それでも、幻想郷に於いて外の世界の常識は通用しない。妖怪に突然襲われて喰われても、自身の不注意ということで片付けられる。なんとなれば本来、人間と妖怪は襲い襲われ、退治し退治される関係なのだから。


 一応、幻想郷に住む人間を、幻想郷の妖怪は襲って捕えて喰らうことは禁止されている。幻想郷は人間と妖怪と自然、それらの要素が絶妙なバランスを保って成り立っている。妖怪が人間を無秩序に喰らい続ければ人間の数が減り、結果として妖怪も糧を失い消える運命を辿る。妖怪が消えれば幻想郷も存在出来ない。だからといって、人間を襲わない妖怪はその存在意義を失いやがては消え逝く運命にある。妖怪は肉体は頑丈に出来ていても精神的な揺さ振りに弱いのである(ルーミアみたいな能天気な妖怪は例外かもしれないが)。


 そこで幻想郷では、人間と妖怪が気軽に戦うことが出来る、ある画期的なルールを導入して妖怪の地位低下を回避している。そのルールとは―――


「まぁアレだ。実際にソレを使えるかどうか試してみたらいいんじゃないか?」


 突拍子もない話だが、ある意味では妥当な意見を口にする魔理沙。確かに、いくら護身用として手に入れたとしても、使えなければ買う意味が無い。道具というのは持ち主に正しい使い方をされてこそ本来の力を発揮する。いくら優れた道具だろうが、ただ飾って置くだけでは道具も浮かばれないだろう。道具屋であり、また道具に対して人一倍思い入れの強い霖之助ならよく分かる話である。


「なんなら弾幕ごっこの模擬戦でもやればいいんじゃない?」


 三人の話を聞き付けた霊夢が奥の居間から顔を出す。霖之助のプライベートエリアである自室のちゃぶ台の上には、空になったお茶と煎餅の器が見えた。あらかた霊夢に喰い尽されてしまったようだ。それを見て霖之助が苦いお茶を飲んだ時よりも渋い顔をする横で、霊夢は平然とした顔で意見を述べる。


「知ってて損は無いと思うけど? 幻想郷の掟(スペルカードルール)ってやつも」


 ―――スペルカードルール


 無闇に人間を喰らうわけにはいかない妖怪の、また力の無い人間でも強力な妖怪と対等に戦えるように出来る為に、妖怪の賢者(八雲紫)博麗の巫女(博麗霊夢)が考案・導入した、最も美しく、最も無駄な遊び。攻撃の全てに名前と意味を持たせ、最も美しい技を繰り出した者が勝つ、そんな決闘方法である。


「スペルカード……慧音も言ってたな。具体的にはどんなルールなんだ?」


 幻想郷で最も有名(メジャー)な遊びであるスペルカードルールであるが、もちろん外の世界からやってきた外来人の悠人にはその詳細は分からない。丁度良い機会だと思って詳細を訪ねてみる。


「まぁ噛み砕いて言うと、勝敗の決定方法が“美しい方が勝者”って感じかな」


 魔理沙の言は噛み砕き過ぎて良く分からなかった。


「まぁ百聞は一見にしかずだぜ。実際にやってみれば分かる」


 まだるっこしい説明が苦手なのか、それとも早く体を動かしたくてウズウズしているのか、魔理沙は落ち着かない様子で店の入口へと歩を進めて行った。霊夢も表情こそあまり変化は見られないが、心なしか内面ではウキウキしている様子である。面倒臭がりという評価に定評のある霊夢らしからぬ態度だが、協力してくれるというのだから気にしないでおこう、などと心中で呟く悠人は、いつの間にか椅子に座ってガンブレードの最終調整を行っているらしい霖之助に声をかける。


「と、いうことになったんだが……」

「ああ、話は聞いていたよ。僕としてもコレの試験運用くらいはしておきたいからね。壊さない程度に使っていいよ」


 そう言って霖之助は席を立った。台の上に重厚な身を鎮座させているガンブレードとやらを目の前で見て、悠人はこの異形の大剣を振るって戦う自分の姿を幻視した。年頃の少年が抱く無邪気な妄想だが、不思議と気恥かしさは無かった。忘れていた(悠人の場合は二重の意味でも忘れているが)子供の頃の無邪気さをふとを思い出したかのような感覚。コレを造っている間の霖之助も、もしかしたらそんな気持ちを抱いていたのかもしれない。


「じゃあ、ちょっと借りてくぜ」


 悠人が何気なく口にした言葉に、何故か霖之助がクスリと微笑んだ気がした。気にせずそのまま大剣の柄を握り込み、軽く力を入れて持ち上げ―――


「―――ッ!?」


 ―――られなかった。分厚い鉄板と複雑な構造の機械で出来た鉄の塊は、まるで台の上に張り付いているかのような錯覚を抱かせるほど―――重かった。


「まぁ、10kgくらいあるんじゃないかな」

「………………」


 実際、僕も持ち上げることすら儘ならないよ、ははは。と他人事のように笑う霖之助に、悠人は呆れたような、恨みがましいような視線を横目で送るしかできなかった。




某有名ゲームの主人公君の武器が幻想入りしてきたのは、悠人君があの男をモチーフにデザインされたキャラだから、というのはあまり関係ない(何

次回、久しぶりの戦闘回。模擬戦だからユルいと思う(なによりgdgdry

あと、今回で書き置きは全て消化したので次回から亀更新になります。ご了承下さい。

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