第四話『幻想の神社』
霊夢と紫初登場。だけど霊夢はあんまり目立ちません。原作の主人公になんて扱いを(ry しばらくの間、タイトルには大した意味はありません。そのまんまです。なんとなれば中身が無いからね(蹴
「残念だけど、貴方を元の世界に還す事は出来ないわ」
「は……なん、だと?」
幻想郷の東端、外の世界との境界に位置する博麗神社で、幻想郷の妖怪・八雲紫の発した予想だにしなかった言葉に、外の世界よりの遭難者・國崎悠人は、早くも予定が頓挫した事に困惑した。
「ちょ、ま……なんで……あんたに頼めば元の世界に帰れると聞いたから――」
「普通はそうなんだけどねぇ、残念ながら、貴方は普通じゃないのよ」
「普通じゃ、ない……?」
ええ、と返してから、紫は続けた。
唖然とする悠人にその言葉が届いているのかいないのか、兎に角も、國崎悠人は、人間の里でも味わった仕打ち――初手難航な今後について、思考を巡らすことさえできず、ただ立ち尽くしていた(つまり話を聞いてなかった)。
人間の里より東へ進み、人の通る跡も疎らな獣道を超え、小高い丘の古びた石段の参道を登り切った先に、その神社は存在している。
博麗神社―――
外の世界と幻想郷の境に位置するこの神社には、普通の神社には無い、特別な役割を持っていた。大きくは博麗大結界と呼ばれる、幻想郷を存在させるために必要不可欠なシステムの管理と監視。小さくはその任を担う博麗の巫女の生活拠点及び収入源として機能していた。
「まぁ、お賽銭はあんまり、ていうか全然入ってないんだけどねぇ」
その神社の境内、自室の縁側に座って暢気に言うのは、この神社の巫女さん。代々、幻想郷と博麗大結界を守護する博麗の巫女―――博麗霊夢である。
年の頃は15,6と見える、あどけなさの残る可憐な少女である。通常の巫女服には有り得ない、スカート(袴と言うには丈が短すぎる)の裾にはフリル満載で、肩口と腋が大きく覗いている、巫女服としての共通点は配色が紅白を基調としている部分のみであるという、奇妙な意匠の装束を纏っているのが大きな特徴の一つだった。
「っても、生活にはそんなに困ってないわよ。裏には畑とか林檎の木とかあるし、その気になればその辺の森に猪でも獲りに行けばいいし」
もう一つの特徴は、その暢気さ。隣に座っている、悲嘆に暮れていると言うも生温い、絶望の底に叩き落とされたという状態を体現したかのように意気消沈している男――言うまでもない、悠人である――が気の毒に思えるくらい、物事を深く考えないその性格は、ある種の者たちに好かれている。普通なら『腹が減ったら猪を獲る巫女』などという、常軌を逸した存在であるはずなのだが……。
「気楽で良いな、あんたは……」
霊夢に好意を持っている『ある種の者たち』の一人こと八雲紫の言葉によって、今後の先行きに不安、というか絶望しか持てない悠人には、彼女のそんな性格がある意味羨ましかった。勿論、今この状況でそれを欲したりしない。いま欲しているのは現状を打破する何らかの解決策か、幻想郷での定住先だけである。
「だって、深く考えてもしょうがないじゃない。こんな時は、なるようにしかならないのよ」
このお気楽な巫女さんが言うと、説得力があるような気がして、無いような気もする。普段は面倒臭がりで他人の面倒を見たりする性格ではないと周囲から言われているが、沈みきった悠人を見かねてこうして話し相手になっているのも、恐らくは親切心などではなく、単純に『そうしたいから』なのだろう。
落ち込んだ人間を励ますお決まりの文句「元気出して」や「頑張って」などという言葉を使って相手を鼓舞するような事はしない。どころか、励まそうとしている気配すらない。お気楽に適当に、友達と普通の世間話をする感覚で暢気に喋っているだけなのだ。
悠人にはそれが不快だとは思わない。下手に励まされても、霊夢の言うとおり『なるようにしかならない事は、なるようにしかならない』のだ。それならば、変に気張って無駄に足掻くより、彼女の暢気な姿を話を見て聞いて、自分もそれに倣うしかなかった。だが、しかし、もちろん、今すぐそんな悟りの境地に至る事などできない。深刻な状況である事には依然変わりないのだから。
「これからどうすればいいんだ…………」
「ん~……とりあえず、記憶を取り戻したら?」
「それが出来れば今頃は帰れてたんだよ、元の世界に……」
その言葉は、文字通りの意味である。なんとなれば、悠人が元の世界に帰れないのは、彼がここ幻想郷に迷い込むより前の記憶を失っていることに起因するからである。
先の八雲紫との会話に話は戻る。
「一口に元の世界に戻すと言っても、簡単な事じゃないのよ。いやまぁ簡単は簡単だけど」
「どういう意味だ?」
悠人の問いに、紫は手に持つ扇子で口元を隠し、瞑目して続ける。
「これは結構レアなケースなんだけど……時々、“幻想郷の外の世界じゃない世界”から、幻想郷に迷い込んで来る人間も居るのよ」
「幻想郷の外の世界、じゃない世界?」
「なにそれ、初耳なんだけど」
まるで謎かけのような言葉に困惑する悠人と、紫を挟んだ反対側の縁側に腰掛ける霊夢がそれぞれ問い返し追求する。
「一種のパラレルワールドってやつかしら?詳しく話すと長くなるから割愛するけど、幻想郷と外の世界とを隔てる境界の位相がずれて、本来行ける筈の外の世界とは別次元の外の世界に繋がる事があるらしいわ」
「らしいわ、って……アンタも分かってないの?」
霊夢の問いに、紫は肩を竦めて呆れ顔を作る。艶やかだが妖しい魅力を放つ唇からは、その顔に見合った呆れ声で、能天気な巫女さんを諭すように声を放る。
「その気になれば詳しく解明して解説してあげるけれど?」
「あー、アンタそーゆーのやりそうにないわよね。面倒臭がりだし」
「お褒めに預かり恐悦至極♪」
予定調和の様にスムーズな受け答えを暢気に交わす霊夢と紫。一方、完全に蚊帳の外に置かれている悠人は、暢気そうに見えて意外と頭の回転が速い少女達の話を理解しようと必死に思考を巡らせていた。
「つまり、どういうことなんだ?」
とはいえ、常人の理解の範疇を完全に凌駕している幻想郷の勝手をここに来て間もない悠人が易々と理解できるはずもなく、すぐに音を上げる。
「つまり、幻想郷と“地続きの外の世界”ではない異層世界から来た貴方を、その元の世界に返す為には、貴方とその世界を繋ぐ絆――記憶が必要だということよ」
幻想郷で普段『外の世界』と呼ばれるものは、文字通り幻想郷を覆う博麗大結界の外に広がる世界のことを指す。その世界と幻想郷は、強固ながらたった一枚の壁たる結界によって隔絶されている程度なので、紫の能力――境界を操る程度の能力を使えば行き来は非常に簡単である。
しかし、位相がズレている“外の世界とは違う世界”となると、そうはいかなくなる。パラレルワールドとは「もしもこうだったらどうなっていたのか」という可能性の分岐が生んだ並行世界である。その“可能性の分岐”の数は無限に広がる。「誰もが思う“もしも~だったら”」という可能性全てに「その先」を与えてそれぞれ別の世界として動かしていけば、それこそ概念のレベルだが世界は無数――まさに数える事など出来ない無数の並行世界が存在することになる。
そんな『無数の世界』の中から、一個人の生まれた世界を正確に探し出し帰還させるのは、普通なら不可能である。「通常なら」と付け加えたのは、それをやってのける事が出来る「普通じゃない」者がこの場に居るからである。
八雲紫――境界を操る能力を持つ、幻想郷でも神に匹敵する強大な力を持つ妖怪。幻想郷を幻想郷たらしめる博麗大結界の展開にも関わった妖怪の賢者とも呼ばれている彼女の能力を用いれば、その無数の世界から特定の世界を探し出すことは、可能ではある。しかし、彼女も万能に限りなく近い存在だが、完全な万能ではない。勿論、制約は存在する。
「無数に広がる並行世界から貴方の生まれ故郷の世界を探し出すことは、私の力を使えば不可能ではないけれど、時間もかかるし確実であると断言は出来ないわ」
境界を操る妖怪として人智を超越した頭脳を持つ紫は、ズバ抜けて数字に強い。人間が生み出したスーパーコンピューターでも解析に数日・数週間はかかる計算を、彼女は1秒にも満たない短時間で解を導き出す。紫ならば本気を出さずとも、無間の底の深さも、北斗七星が北極星を食べるまでの時間ですら、一瞬で求めてしまう。そんな紫をして「時間が掛って不確実」と言わしめるほど、並行世界の無限分枝の数は途方も無く多いのだ。
「だから、私は求める解の式に、ひとつヒントを充てるの。未知数が二つある方程式で一つの項が判明していれば、解を求めるのはとても簡単になるでしょう?」
数学はよく分からなかったが、ここでいう「一つの項」が悠人の持つ元の世界での記憶を指すならば、方程式を解く、つまり悠人の故郷たる世界を探す難易度は大幅に低くなる、ということである。今までも紫は、稀によく現れるそういった並行世界から幻想入りしてきた者達の世界を、記憶という名の絆=解明している未知数の項を頼りに探し出しては送り返してきたらしい(極稀に幻想郷に居付いた者もいたようだ)。今回も、通常なら悠人を元の世界に送り返すことは容易い事だったはずだ。それを困難極まりない事にしている原因が、つまり―――
「……記憶喪失って、結構不便なところも多いんだな」
記憶を失って困る事の項目にそんなモノが含まれていたとは、と心情を呟くように吐露する悠人。よくよく考えれば、迷い込んだ先が幻想郷でなくとも、見知らぬ土地で自分の帰る場所の記憶を失えば路頭に迷うのは当たり前のことであった。
「どうしても元の世界に帰りたいのなら、記憶が戻るまでは大人しくしてたほうがいいわね。もし間違えて元いた世界と限り無く似ているけど微妙に違う世界に行ったら、面倒な事が起きるでしょう?」
「……ああ、“その世界の俺”に出会ったりとか」
「見てるだけのこちらからすれば、それもそれで面白いのだけれどね」
悠人の意外と回転の速い頭から導き出された即答に密か感心して、妖艶でありながらも可愛らしい笑みで冗談めかした事を言ってのける紫。ここに来る前に魔理沙――幻想郷に迷い込んだ直後の悠人を死の危機から救い出してくれた命の恩人たる少女――に聞いた「頼りになるが胡散臭い奴」という言葉を思い出した。
確かに、言っていることは微妙に解り辛いがその言葉には何かの確信めいた重さがあり奇妙な説得力を感じる。しかし、彼女が時折浮かべる妖しげな微笑が、聞く者にその確信を疑わせ説得力を揺らがせる、つまり嘘っぽい虚言に聞こえる、ということだ。
とはいえ、現状で信じられるのはこの美しくも妖しくて胡散臭い八雲紫という女性(見てくれは少女に見えなくもないが、身に纏う雰囲気が年長者の気配を感じさせる)だけなのだ。藁にも縋る思いとはまさにこの事である。
「記憶が戻るまでは定住確定か……問題は、どこに住むか、だ……」
「ま、頑張ってね~記憶が戻ったら何時でも元の世界に還してあげるわ」
戯れのつもりなのか悠人の頭を扇子でポンと叩いて、悠人にとって一番難しい事を心なしか楽しそうな声音で言い残して、紫は空間の裂け目に出来た異空間の中に姿を消した。彼女を知る者達の間で「スキマ移動」と呼ばれている、境界を操る紫独自の移動方法だったが、そんな超常現象を初めて目の当たりにしても大して感慨を受ける事が出来ない程、悠人の感情は深く沈んでいた。
「はぁ…………」
先の紫との会話を思い出して、しかし今の自分にはどうすることもできないこの状況に、無力感に打ちひしがれている悠人。出来る事といえば、この絶望的な感情を音にしたかのような溜め息を吐く事くらいである。
「溜め息吐かれると気分が沈むからやめて」
「………………」
それすらも霊夢に咎められて、最早沈黙するしかない悠人だった。
「相も変わらず情けない面してんなぁ」
そんなどうにも居た堪れない状況にある悠人を救いに、あるいは更に叩きのめしに、新たな来訪者が二人の前に降り立った。小柄な体に白のブラウスと黒のベストとスカートを纏い、柔らかにウェーブのかかった金髪に載せられた鍔広の大きな黒い三角帽子。古臭い竹箒に座って空から舞い降りたそのシルエットはさながら典型的な魔女のそれを想起させる。そして、可憐な、と形容するのが相応しい幼くも整った顔立ちに顕れている、強気な笑みと意志の強さを感じさせる金色の眼が、暗く昏く沈んだ心持ちの悠人に見た目以上の明るい印象を与えている。
霧雨魔理沙―――幻想郷に迷い込んで初めて出逢った普通の(と言っていいのか分からないが)人間。迷い込んで即、妖怪に捕食されそうになった自分を助けてくれた命の恩人。一晩の宿を借りた上、人間の里への案内から、ここ博麗神社へ自分を運んできてくれた少女。何かと世話になっている恩人と言うべき相手に、悠人は尚も沈んだ心根表情で対応、
「なんだ、お前か痛っ!?」
「なんだとはなんだ、なんだとは」
しようとしたら、殴られた。箒で。もはやこの暴力的な挨拶は習慣化してしまったのか。
「あっちの用事はもう済んだの?」
「ああ、雑用みたいなもんだったからな」
二人のコントの様な応対には大した興味を示さず、霊夢は己が思った事を迷いなく口にする。良く言えば誰の如何なるしがらみにも囚われない自由な、悪く言えば空気を読めない割り込み発言だが、殴られるだけの悠人にとってはむしろ仲裁に入ってくれて有り難い限りだった。
「雑用の度に店の商品盗られて、霖之助さんも大変ねぇ」
「労働の対価に準じた報酬を受け取ったまでだぜ」
昨日、悠人は人間の里に住む寺子屋の先生である上白沢慧音に一晩の宿を借り夜を明かした。悠人が元の世界に帰る、もしくは幻想郷に定住する上での知恵を借りる為に慧音から頼まれた仕事――とある妖怪の少女の面倒――を完遂したそのお礼として。
その翌日、朝早くから里に現れた魔理沙に連れられて、悠人は博麗神社にやってきたのだった。昨夜のうちに慧音が八雲紫と相談して、翌日博麗神社にて悠人が元の世界に帰れるよう手配してくれていたのだった。その事実を知った悠人が、慧音のあまりの細やかな気配りに感動して危うく涙腺を崩壊させかけたのは余談。その時「この白黒とは大違いだ」と口を滑らせて、この白黒こと魔理沙に箒の柄頭でアッパーカットを喰らったのは更に余談。
こうして悠人は幻想郷の東端にあるこの博麗神社で紫と霊夢に会い、
絶望という名の事実を突き付けられて現在に至るのだった。
「霖之助さん、最近変な工作にハマってるんだって?」
「ああ、外の世界から流れてきた雑誌の影響らしい。その為の材料集めを頼まれたんだ」
悠人を神社に送り届けた直後、魔理沙は用事があるからと言い残してさっさと離脱していた。その用事というのが、いま彼女達が雑談の話題にしている事なのだろう。その中に混ざる一つの単語に、大した興味も無くただの好奇心で反応して訊いてみる。
「霖之助さんって?」
「私の幼馴染みたいなもんだ」
「外の世界から流れてきた品物を売ってる古道具屋さんよ」
悠人の気の抜けた声音の問いに、男前な口調だが可愛らしくも力強い声、悠人とは別の意味で気だるげだが妙に力強い風韻を持つ声、二人の少女の声が即座に返ってきた。会話に割り込まれたことに不快感を感じている様子は特にない。これが二人の素なのだろうと、問いの答えではない部分にどうでもいい感想を抱く悠人である。
「結構変わってる奴だけど、話してると面白いぜ」
「そうなのか」
ついさっき悠人を殴り飛ばした本人と、殴り飛ばされた当人が何の隔たりも無く会話をしている。魔理沙の方は過ぎた事を気にしない性格だったから。悠人の方は過ぎた事を気にするほど心に余裕が無い状況だから。それ故に発生した二人のこの奇妙な現象に、霊夢は密かに微笑んで軽く提案してみる。
「なんなら、挨拶でもしてきたら?」
どうせ他にすることも無いんでしょう?と続ける霊夢は、どこか楽しげな雰囲気を纏っていた。二人の言う「霖之助」とやらはそんなに面白い、あるいは凄い人物なのだろうか。考えるでもなく考えていると、少し興味が湧いてきた。
「そうだな……行ってみるか」
「私もたまには顔見せに行こうかしらね~」
「じゃあ行くか。彼奴も久しぶりの客で喜ぶと思うぜ」
霊夢の言う通り、特に何もする事が無い、出来る事が無い悠人は丁度良い暇潰しが出来るならと霊夢の提案を受けた。提案した霊夢も乗り気で、座っていた縁側から勢いよく腰を浮かせて伸びをした。話が纏まったと見て魔理沙も飛び立つ姿勢に入る。幻想郷では珍しくない光景らしいが、人間の里に住む、真の意味で普通の人間以外の人妖は例外無く普通に空を飛ぶことが出来る。箒を使って飛ぶ魔理沙は元より、箒すら使わずその身一つで空を飛べる霊夢も。
「それじゃ、行きましょ」
言うが早いか、霊夢は軽く地面を蹴り体を宙に浮かせた。まるで彼女の周りだけ重力が無くなったかのようにフワリと浮かび上がるその光景は、幻想的で可憐な雰囲気だった。紅いスカートと白い袖のフリルがまるで花弁のように広がり風に舞う姿が見る者を魅せる。
「おう!」
反して、魔理沙の方はそんな霊夢とは対照的だった。箒の柄に跨るのではなく横に腰掛けるように上品に座ってはいるが、溢れる力感が霊夢とは別種のものだった。魔理沙の足下に風が巻き埃が舞い上がる。発射直前のミサイルの様な、そんな緊張感を漂わせている。そしてその緊張が最高潮に達した瞬間、魔理沙は地面を蹴りつけて空に飛び立つ。霊夢の緩やかな飛翔と真反対の、正に撃ち出された弾丸の様な飛び立ち方だった。
「ッ!……ん、あれ?」
魔理沙の飛翔の風圧に一瞬体を吹き飛ばされそうになった悠人は僅かな気合を振り絞りその場に踏み止まった。そして、気付いた。
「まさか、俺は歩きか……?」
國崎悠人は外来人である。幻想郷の普通じゃない者達は普通は飛べるが、悠人は普通の人間である。普通の人間は飛ぶことはできない。外の世界の常識が通用しない幻想郷でも、それは常識である。平然と、当然のように空を往く彼女達を見れば忘れそうになるが、常識である。故に、その常識の範疇にある普通の人間である悠人は、勿論、飛ぶことなど出来はしない。
「なんだかなぁ……」
既に空の紅点と黒点になった二人の少女を、悠人は地を這いずる思いで追いかけた。
パラレルなんたらがどうとかの話は俺の適当な設定です。一応参考にした資料があるにはありますが、難しくて何書いてるのか分からなかった(殴
次回、あの道具屋店主登場。