捨てられた小さなロボット
⚫︎凪
27歳。OL。恋人に捨てられ落ち込んでいた。
⚫︎ロボット
公園のゴミ箱に捨てられていた小さなロボット。
ある雨の日。
「俺達、終わりにしよう。」
私は、5年も付き合っていた恋人に振られた。
あっけなかった。
理由は結婚願望がないから。
私が結婚を匂わせ始めたことがきっかけだったらしい。
公園をとぼとぼと歩いていると、
やがてゴミ捨て場に捨てられていた小さなロボットのおもちゃを見つけた。
カゴの中に投げ込まれたらしい。
右耳にヒビが入り、体は茶色く汚れてしまっていた。
「あなたも捨てられてしまったのね。」
本当はよくないことだと分かっていたけど、
このままでは廃棄されてしまう。
そう、私のように。
私はロボットをアパートに連れて帰ることにした。
彼との思い出が詰まったアパートへ。
すぐに引っ越す予定だ。
幸い、彼が引っ越し費用を渡してくれているからなんとかなるだろう。
ロボットをハンカチで拭くと、ベッドサイドのサイドテーブルに座らせた。
手足の可動域が広いのでだいたいの姿勢は作れそうだ。
おそらく、音が鳴る機能か歩く機能が付いていたのだろう。背中の部分の蓋を開けると電池が抜かれた跡があった。
中は錆びれていて直すのは難しそうだ。
♦︎
次の日の朝。
凪は悪夢にうなされていた。
恋人から別れを告げられるシーンだけがループする、そんな夢だった。
「うう・・・。」
その時、遠くの方から声が聞こえてきた。
「て、きて、起きて!」
「わ!?ゆ、夢?・・・。」
目が覚めると、昨日拾ってサイドテーブルに置いたはずのロボットが私の鎖骨に乗り、顔を覗き込んでいた。
「おはよう。」
「え!?あなたは昨日の・・・?」
パッとサイドテーブルの上を見ると、やはりそこには何もない。その代わりに私の上にいる。
「そうだよ!私を拾ってくれてありがとう。」
ロボットが私の鎖骨から降りて右横のベッドに移動する。
「まだ夢を見てるのか・・・。」
「夢じゃないよ。」
ロボットが自由に喋ったり動いたりしている。
「凄い技術だ・・・。」
「それより、どうして昨日は泣いていたの?」
「えーと、恋人に振られて・・・。」
「それは悲しいね。」
「あなたは?」
「私?私はねー、壊れたからいらないって捨てられたの。まだ5歳くらいの男の子だった。」
す、ストレートだ・・・私より酷い捨てられ方かもしれない。
「でも今動いたり喋ったりしてるじゃない?」
「これは元々の機能じゃないよ。歩いたり座ったりはできていたけどね。」
「じゃあ、今のは・・・。」
「魔法かな?」
「ま、魔法・・・。」
いや、仮に会話できるロボットができたら、それはもう魔法だ。
「私たち、捨てられちゃったけどさ、一人じゃないって思うんだ。だから、これからは一緒にいようよ。」
「一緒にいてくれるの?」
「もちろん!それで、今までの悲しいこと全部吹っ飛んじゃうくらい楽しい思い出いっぱい作ろう!」
「明るいのね、あなた・・・えーと、ちなみに名前はあるの?」
「名前はなかった。あなたが付けてくれる?」
「私が付けていいの?」
「うん。だってずっとあなたじゃお互い呼びにくいでしょう?」
「そ、そうだね。水色、海、ブルーハワイ、ラムネ・・・。」
「ラムネ可愛い!」
「じゃあ、ラムネにしようか?」
「うんうん、するするー!」
なんだかホッとするな。
今さっきまで苦しくて死にそうだったのに。
ラムネちゃんの存在がそうさせてくれるのかも。
「あなたのお名前は?」
「私は凪。」
「凪ちゃん、これからよろしくね!」
「うん、こちらこそよろしく。ラムネちゃん。」
こうして二人は一緒に暮らすことになった。
一緒に海へ行ったり、山に登ったり、動物園に行ったり、水族館に行ったり。
そうしていくうちに、凪とラムネの心の傷は少しずつ癒えていくのだった。




