9話「残りの時間」
「はぁ、どうすればいいんだろう」
海音のためにできること………。
無理だ。そんな専門知識がない高校生に何ができる。
すごく引っかかる。アラタの言っていた事がモヤモヤする。
もうアラタは正解を教えてくれているんじゃないか。
アラタとの会話をさらに遡らせた。
初めて話した時、あの時はアラタが憎くて憎くて仕方なかった。
でも、今ではそんな感じはしない。
態度が変わったようには思えないけど。
「…‥残りの時間!」
ハッと思い出す。
アラタと初めて会った時、去り際にアラタは言った。
『残りの時間をどうするかはお前が決めることだ』
海音との残り時間………。
海音にはしたいことがたくさんあるだろう。
きっと海音の未来は変えられない。
でも、今からならその時まで何かできることがある。
海音の人生に悔いがないようにさせることが。
大丈夫だ。絶対に。
海音を笑顔にすることは朝陽の得意分野だから。
それから、海音と一つ一つやりたいことを叶えていった。
もちろんアラタのことを言えるわけではない。
成功率が低い手術。海音も死を覚悟しながら今を生きている。
だから海音も朝陽の話に乗ってくれた。
「おうちでパーティーに……」
「ゲームセンター!クレーンゲーム面白いよ!」
「へぇ〜そうなんだ。いつかやってみたいな」
海音はゲームセンターに行ったことはない。
音がうるさく、頭が痛くなるので行けなかった。
「LIVEとかも行きたいね。俺も行ったことないから」
「外出ばっかじゃん。まぁ分かるけど」
物語などでよく出る「死ぬまでにやりたいことノート」。
そのノートを書くのは朝陽だ。
海音の手は震え、上手く書けないから。
「けほっ、けほっ」
「大丈夫海音!?」
「う、うん。大丈夫」
そう返すものの、浅い息を繰り返し胸を掴む海音。
どんどん体が弱っていく海音を見て胸が痛くなる。
でもやりたいことを着実にやり遂げていった。
でも、時間はどんどん流れていく。
残りのやりたいこともキツくなっていき、海音はベッドから起き上がれなくなった。
そして、手術の日も近くなった。
「海音、おはよう」
「お、はよう」
「大丈夫?」
「う、ん」
「…………………」
海音が死ぬ。
あの時は現実的には考えられなかった。
でも今、目の前の情景を見て悟る。
もう、諦めるしかないと。




