7話「生きていたい」
「あ、さひ」
病室に入るや否や気まずそうに朝陽の名を呼ぶ海音。
「久しぶり、海音」
「ひさ、しぶり」
ぎこちなさそうに返し、目を逸らされる。
「海音、この前はごめん。俺のわがままなのに海音に付き合わせちゃって」
「……な、んで朝陽が謝るの?」
「え?」
海音が声を震わせながら言った。
「俺が死にたいって言ったから、命を軽くみたことがいけないのに。朝陽は何も悪くないよ、当たり前のこと言っただけだよ」
海音の言うとおりだ。でも、なぜか海音に謝らないと自分の気がすまなかったのだ。
「うん、そうだね。けど俺が海音を苦しめたことに変わりはないから謝った」
「なんでそういうところは真面目になるんだろうね」
ふふ、と微笑んだ海音を見て安心する。
「体調はどう?」
「前よりは大丈夫。このまま何もなければ前の病室に戻るって」
「そっか。とりあえず無理だけはしないでね」
「わかってるよ。朝陽は元気?」
「元気だよ」
「なんか、いっつもこの会話してない?」
「たしかに」
2人で笑い合う。
このじかんがずっと続いてほしかった。
「そろそろ帰らなきゃ」
いつの間にか時間が経っていて、帰らなければいけなくなった。
「あ、ねぇ朝陽」
「ん?」
海音に引き留められて上着を取ろうとした手を止める。
「あの事は、お母さんたちに言わないで」
「………うん、わかった」
なんとなく海音は言ってほしくないんだろうなって思ったから、まだ両親には言っていなかった。
「あとね、手術受けようと思う。まだ、生きていたいから」
自身の胸を掴み、海音が言う。
静かな決意を感じる声色に自然と目を見開いてしまう。
多分、他の理由もあるからだけど。
「うん、じゃあ明日看護師さんに言おうか」
「あ、お母さんたちにはちゃんと自分で言いたいから内緒にしてて」
「わかってるって」
「うん。じゃ、また明日」
「またね、海音」




