14話「離れたくない」
夕方、一人で帰りながら今日のことを思い出す。
暑いけど死にそうなくらいではない。心地の良い日差しに、雲ひとつない青空。圧倒的お散歩日和だった今日。夕方にもなれば、沈む夕日と綺麗なオレンジ色の空になり、ノスタルジックな雰囲気を作っている。
レポート作りも順調に進み、原稿まで完成した。あとは、発表の練習をするだけ。
「ただいまー」
家のドアを開け、いつも通りリビングに行ってカバンを置くと、珍しく父さんの方が早く帰っていた。
「あ、ただいま」
「おお、おかえり。優、ちょっと話があるんだ」
「…急に何?」
またもや珍しい。父さんからの話…何かしたっけな。
ソファに横並びで座り、真剣な眼差しの父さんに少し緊張する。
「実は、引っ越すことになったんだ」
「……は?」
「そこまで遠い場所じゃない。ただ、前の支部より遠いとこに転勤することになってな、通えないことはないんだが、会社も援助してくれるということで、近くに引っ越そうと思う」
「急すぎるよ!」
「今日決めたからな。学校も転校することになる」
「いつ引っ越すの?」
「優の夏休みが明けるまえには引っ越したいな」
「俺の気持ちは無視かよ!」
「転校したくないのか?」
「……そうだよ」
「ふぅん。前までは学校なんてつまんない、みたいな顔していたのにな」
「今クラスの子とレポートを作ってるんだ。じいちゃんにも、そのレポートを発表するって言った。やっぱ、懐かしいなって。クラスメイトと仲良くするの、楽しいなって」
「…あまり強制的にはしたくないが、仕方ないことだ。それに、じいちゃんたちは村に住み続ける。もう一生会えないわけじゃない。今時は連絡手段も沢山あるし」
「そうだけど……」
あまりにも納得がいかなくて、何度も反論する。
「そのレポートってのはなんだ?」
「夏休みの宿題。村をテーマにして、清水と内田とレポートを作った」
「……わかった。学校に相談してみる。在学してはないが、レポート発表だけは参加できるか掛け合ってみる。もしそれで許可が出たら満足するか?」
やっぱり引越しを辞めることは無理そうだ。でも、せめてレポート発表ができるなら……。
「…わかった。頼んでお願い」
父さんにそうお願いして、リビングから出た。




