12話「代償」
呆れたようにアラタは、はぁ、とため息をつく。
「なんでそんなこと言うのかなぁ」
「え?」
アラタが何か言ったが、聞き取れず戸惑う。
「なんでもないよ。……本当になんでもきいてくれるんだよね」
「う、うん!」
若干後悔しつつ答えると、アラタは優の頭の上に手を置いた。
「……仲良くして欲しい子がいるんだ」
「誰?」
「俺のせいで嫌な思いをさせちゃった子。きっと仲良くなれるよ、ユウなら」
「…それは、誰のことなの?」
「……内緒」
「条件が鬼畜すぎるんだけど…」
「大丈夫だって。で、きいてくれるよね」
「……わかった。頑張って探し当ててやる!」
確証もなく意気込むと、アラタは申し訳なさそうな表情をした。
「実は、生贄なった人には代償を払ってもらわなきゃいけないんだ」
「代償?」
「ああ。内容は言えない。代償を払えばここから出れる。ただ、代償をどう捉えるかは自分次第だ」
「………」
代償。その言葉が、ずっしりと心に重く響く。
「生贄の役目は代償を払い、身を一定の期間捧げること。その一定期間を俺が受け継いでいる。結構話し込んじゃったね。そろそろ行こうか」
アラタがまた手を引き、歩き出す。
「……俺、本当は志木新って言うんだ。ここに来た時に捨てた名前だけど」
「え……?」
「ユウは言わなくて大丈夫。はい、このまままっすぐ進んで。ここでお別れ。あとは一人で行くんだよ」
笑顔でそう言い放つ新。
「え、でも……」
「いいからいいから。出会えてよかったよ、ありがとう。じゃあな」
心の中で確信する。もう、本当に会えないこと。だから本名を教えてくれたこと。……会えないというより、会わない方がいいこと。
「っ、またね!新!」
そう言って走り出す。
ナニカの叫び声、大きな足音、ただならぬ気配。
怖い。怖い。姿は見ていないのに、恐怖心がどんどん増す。
ごめんなさいごめんなさい、村のせいで。
心の中で何度も謝りながらひたすら走った。




