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死神さん  作者: もか
第1章「双子のはなし」
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3話「甘えないの?」

……くそ、無かったことにしようとしたのに。

「俺、お兄ちゃんだよ、かわいい弟が甘えてくれるなら本望だよ」

「なんでそういう時だけお兄ちゃんぶるの?」

なんとなく聞いてみた。特に理由もなく。

「!…………」

海音はびっくりした表情になったあと、スッと大人な表情になった。

聞いちゃいけないことだったかな。

後になって焦り出す。深刻な質問ではないと思っていた。

「……決まってるじゃん」

口角を上げ、にこりと笑顔を浮かべる。

「いつも俺が迷惑かけてばかりだから。今みたいにお兄ちゃんになれる機会ってあまりないでしょ」

さっきまで苦しそうだったのが嘘のように饒舌に喋る。

「迷惑だなんて思ってない、海音のことが大切だから」

力なくベッドの上に置かれている手を取り握る。

「ううん、迷惑だよ。病気さえなければ入院することも、治療も手術も、何も無かった。学校にも行けたし、普通の生活を送れた。家族との思い出も、もっといっぱいつくれた……。なのに?」

「うん。たしかにそうかも知れない。でも俺が一番許せないのは何もしていない海音が、病気で苦しんでいることだよ!それが一番嫌」

「朝陽…………」

目を潤ませ、ジーンときたとでも言うように目を合わせてくる海音。

「ところでさ、普通に喋れるよね」

「あは、ばれた?」

てへ、っとお茶目っぽい笑顔を見せる海音。

「いやわかるよ。普通そんなに喋れないでしょ」

「そっかぁ、そうだね。俺よりも苦しんでいる人はたくさんいるもんね」

苦しんでいる人………。

「…………」

「やだなぁ、そんな顔しないでよ。ほらおいで」

海音は朝陽の頭を撫で、両手を広げる。

「…………」

朝陽は無言で海音の腕の中に入る。

「大丈夫だよ。朝陽は苦しまなくていい。ここにいる人たちは普通に暮らしている人を妬みなんかしない。憧れているとは思うけどね」

………見抜かれてた。

海音よりも苦しんでいる人がいることぐらい分かる。でも朝陽からしたら海音も充分苦しんでいると思う。

そんなことを考えたら、なに不自由なく生活している自分が申し訳なく感じた。

「逆に、病気だから可哀想みたいな目で見られるのが一番嫌だから。苦しいし辛いけど一生懸命生きて、頑張っているんだから。人それぞれだけど、俺は病気だからって幸せじゃない人はいないと思う。俺もこの体だからって不幸だと思ったことはない。申し訳なくなるだけで」

朝陽を抱きしめ、頭を撫でながら海音が言う。

「海音…………」

自然と海音の名を呟き、胸元に頭をぐりぐりと押しつけながら海音に言った。

「海音も、甘えたいときは甘えてね」

「!……うん!」

海音は嬉しそうに答え、朝陽の頭を撫でる手を早めた。

「海音くーん、熱測りますよー」

『あ………』

看護師さんを見た朝陽たち、朝陽たちを見た看護師さん。

三人の声が綺麗にハモった。

「あ、ちょっとお取り込み中でしたね……」

「ち、違います!」

「違わなくないよ。熱測るなら朝陽から離れなくてもいいよね?」

長年の付き合いか、やけに看護師さんと仲良しな海音。

「結果が変わるかも知れないから、一応離れておいてね。あと、朝陽くんに会うのはいいけど、安静にする約束じゃ……」

「あ!さ、さっきまで安静にしてました!」

「え、海音そんなに症状悪かったの!?」

「なるほど、安静にしてなかったのね」

「あ、あさひー…………」

なんでバラすのー、と海音が訴えかけてくる。

あ、無意識に言ってしまった。

「ふふ、二人とも本当に仲良しね」

「それほどでも」

そんな海音を見て結局元気なのか、元気じゃないのか分からなかった。


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