11話「救いたい」
「アラタが、生贄になるってこと…?」
そう言うと、アラタは気まずそうに視線をそらした。
その動きで答えを悟ってしまい、手の力がさらに強まる。
こんなの、絶対おかしいに決まってる。
合意なく捧げられたとはいえ、一応村の住民。この時さえ我慢すれば、村のためにも自分のためにもなるはずだ。少なからずメリットはある。
でも、アラタとは村で会ったことがない。おそらく村には住んでいないと思う。全く無関係の人間を巻き込むのは、おかしいと感じてしまう。
優の手を軽く振り払い、真剣に向き合う。
「大丈夫大丈夫。生贄の代わりの役目をするだけ。そもそもこの空間に住んでるようなものだから、遠慮しなくていいよ」
「…………」
余裕そうに笑うアラタを見て、なんともいえない気持ちが湧いてくる。
「アラタは……人間じゃないの?」
あの世とこの世の狭間の案内人。
人間か人外か微妙なラインに立つアラタは何者なのか。
「さぁ、どうだろうね」
先ほどと似ているようにも見える笑みでアラタは答えた。
どこか切なさそうな、悲しそうな感情も含んだその笑みは、アラタの底知れない闇を感じる。
救いたい。
その言葉が頭の中に浮かんだ。
できることならば、アラタのことを救いたい。アラタが何を思って闇を抱えているかはわからないが、とにかくこの空間から二人で抜け出したい。
「アラタ、一緒にここから出よう!俺はアラタが人間でもそうじゃなくても、一緒にいたいから」
「さっきまで信用してなかったのに、急にどうした?嬉しいけどそれは無理だよ。どっちかはここに残らないといけない、絶対に」
「でも………」
「俺は、好きでここにいる。だからユウとここを出るつもりはない」
少しずつ感情がおかしくなっている気がする。上がったり下がったり落差が激しくなっている。自分の心についていけない。
だからだろうか、おかしな方向に思考が向くのは。
「俺ちゃんと帰るよ、一人で。だから、一つだけアラタの言うことなんでもきく。そしたら、アラタの気持ちは晴れる?」
「……俺、落ち込んでるなんて一言も言ってないけど」
「俺が、なんかモヤモヤするの!」
思いのままアラタに言葉をぶつける。
「ユウって神様とかじゃないでしょ。もし俺が無理難題言ってきたらどうするの」
「大丈夫。アラタは優しいからそういうのは言わない」
「信用しすぎでしょ俺のこと」




