10話「生贄」
「もし、俺が本当に"迷い込んだ子"ならいい。……生贄だとしたら、帰る方が迷惑じゃない?」
「え?」
「俺は生贄なんだから、身を捧げ続けなければならないと思うんだけど…違う?」
「…まぁ、そうだけど……大丈夫だって。これまでもこういうことあったし。それに、ユウは帰りたくないのか?」
そう言われ、ハッとした。"生贄"というワードによって自然と責任を背負ってしまったが、そもそも生贄になんてなりたくなかったし、普通はお互いが合意の上ですることだと思う。聞かれたら絶対断ってたけど。
でも、村の人たちが協力して生贄を差し出しているとすれば、両親もじいちゃんも、優を生贄にすることに許可を出したのだろう。その事実は受け入れ難い。
そう考えてしまうと、思考はどんどんマイナスへ向かってしまう。
自分は生贄のためだけに育てられたのではないか。だから優に話すこともなく、捧げられたのではないか。じゃあ、ちゃんと役目を全うしなきゃ……。
「ユウ、ユウ!ストップ!」
「あっ……」
アラタに肩を揺さぶられ、思考の海から抜け出した。
「落ち着いて。……嫌なこと、考えてたでしょ」
図星をつかれ、こくりと頷く。あのままだったら、負の感情に溺れていたかもしれない。
「そんなことはない。だから安心して、大丈夫。俺も、話せることは限られているけど、少しだけなら」
そう言って、アラタは優の肩に手を置いた。
「大きな音を立てなければ絶対無事に帰れる。それを知ったうえで生贄を捧げてる。俺結構信用されてんだよね。まぁ、生贄が体験することとかなにも知らないけど。あと、この空間にいるのはユウだけじゃない、俺もいるだろ」
アラタの言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
気づいた瞬間、優は肩におかれたアラタの手を強く握った。
「アラタが、生贄になるってこと…?」




