9話「約束」
「じゃ、そろそろ行こっか」
立ち上がったアラタに、また手を引かれ歩き出す。
「ユウがさっき話して落ち着いたのか、逆に怖くなったのか、俺にはわからない。でも安心して。絶対現世に戻してあげるから。約束」
パッと手を離され、小指を立てた右手を突き出される。
「あ……」
アラタのことを信用しきっているわけではない。でも、生きて帰れるなら信じてもいいのではないだろうか。
同じように右手を差し出すと、アラタは自分の指と絡めた。
『指切りげんまん、嘘ついたら針千本のます、指切った』
二人で歌い、指を離すと、アラタはまた手を繋ぎ、歩き出した。
少し歩くと、アラタは立ち止まり、手を離した。
「じゃ、ここでお別れ。このまま真っ直ぐ行けば帰れるから」
真っ直ぐと言われても、暗闇の中真っ直ぐ歩くことなんてできない。きっと方向感覚を失い、あらぬ方向にいってしまうだろう。
「ほ、本当に真っ直ぐ行けますか?」
「大丈夫。ユウが進んだ道が必ずあっているから」
そう言われて気がついた。真っ直ぐ歩くは、ただ進めばいいと教えてくれたことに。
「あ、できるだけ早歩きで行ってね。君まで巻き込まれたら困るから。怖くなったら走ってもいい。何かあったら叫んでもいいから」
「え?騒いじゃダメなんじゃ」
「俺の姿が見えなくなったらね。あ、ふざけて叫ぶとかはやめて」
「…わかった。アラタは、どうやって戻るの?」
そう聞くと、アラタは目を逸らした。
「俺は大丈夫だよ。案内人って言ったでしょ。こうやって迷い込んだ子を送ってあげるのが役目」
笑って答えられたが、記憶を巻き戻してみるとなんか色々おかしい。
優のことを"生贄"と言ったのに、"迷い込んだ子"に変えたし、神社のこととか色々教えてくれたくせに。自分のことはあまり教えてくれない。
「もし、俺が本当に"迷い込んだ子"ならいい。……生贄だとしたら、帰る方が迷惑じゃない?」




