8話「不幸」
どれくらい歩いただろう。ただ暗闇の中、手を引かれるだけ。
終わりが見えない闇に、少しずつ恐怖心が芽生えてくる。
ふと、アラタの足が止まった。無言で正面を向いている彼の表情は見えない。
「そろそろ出口だよ。少しだけ連れてってあげるけど、途中からは一人で行って。真っ直ぐ行けば大丈夫だから」
「…わかった」
少し不安な気持ちになりながらも答える。
「……疲れてきちゃった?少し休む?」
「大丈夫です」
「……早くここから出たい?それともゆっくりでも大丈夫?」
「ゆっくりでも大丈夫です」
「じゃあ休もうか。座って」
その場に座り込んだアラタを見て、同じように座る。
「ここは時間という概念がない。騒ぎさえしなければ無事帰れる。大きな声を出せば殺されちゃうけど」
「ころっ…!」
ついびっくりして声を出すとアラタに口を塞がれた。
「…そういうのだって」
「す、すいません」
「何事もなかったからいい。次からは気をつけろ」
「は、はい。……あの、殺されるって誰にですか?」
「それ、聞いちゃうんだ」
少しニヤっとしてアラタが言った。
「え?ダメ、だった?」
「いや、聞いても後悔しないなら」
「…‥‥聞かせてください」
少し悩んでから答えた。
「…いわゆる妖怪とか幽霊だよ。あの村から吸い取った不幸によって、生み出された。そいつらは生まれて数年したら人の魂を喰うようになるからね。その前に倒すのが望ましい」
「不幸……」
ふと思い出した。清水と内田が言っていたことを。
『作物は育つし、天気もいい感じに収まるし、そこまで大きな事件は起きてないし』
『世帯数は少ないとはいえ、深刻に過疎化が進んでいるというわけでもないし。やっぱり神のご加護でもついてるんじゃね』
村にとってマイナスなことはあまり起きてない。今回のレポートによって気づいたことだ。
でも、それは本当に人ならざるものが関わっていたからなんだ。
「かしわ神社が村の不幸を吸い取る場になっている。だから、お前はいわゆる"生贄"だ。化け物たちが村を襲ってこないようにするための」
生贄……?
「じゃあ、やっぱり俺…」
死ぬんじゃ。
そう言う前に、アラタが口を開いた。
「ここにいるのはユウだけじゃない。そのために俺がいる。それに、殺さずに神社で飼うことも生贄と呼ぶしね。だから大丈夫、死なせはしない」
命を捧げられているのか、身を捧げられているのかわからないが、少し安心する。ただ、アラタを信用してもいい相手かは、いまだに謎だが。




