7話「アラタ」
「おはよう。遅くなってごめん」
意味がわからず首を傾げる。マジで何言ってんだこいつ。
困惑していると繋がれたままの手に、少し痛みが走った。手を強く握られている。その感覚から、これは夢ではないことがわかる。
「あの……!」
「しっ。静かにして、気づかれる」
人差し指を唇に押し当て、静止を促す男性。
気づかれる?誰に?周りは何の気配も感じない。
「……俺はここの案内人みたいな者だ。今から君がちゃんと帰れるように送る。だからバレないようについてこい。わかったか」
静かに頷くと、男は腕を引っ張ってどこかへ連れていく。
「あ、俺はかた……」
「名前は言うな。"とられるぞ"」
「え?」
「……俺はアラタ。お前は?苗字は言わなくていい」
男性、改め「アラタ」は、声を密かに伝えてきた。
「ユウです」
「よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
そこから会話は続くことなく、ただどこかへ連れていかれるだけ。
聞きたいことはたくさんあるけど、気まずくてなかなか聞けない。
「あの、ここはどこですか?」
勇気を振り絞って聞く。案内人だから知らないことはないはずだ。
「……分かりやすく言うなら、あの世とこの世の狭間みたいなとこ」
アラタはそう答えた。
「…え!俺死んだ?!」
「…半分正解だな。今のお前は現実世界では仮死状態になっている」
「仮死状態?」
「ああ。その状態を利用してユウの意識をこっちに持ってった」
「は、はぁ……」
答えてもらえたものの、意味が理解できない。
でも、こうなっている時点でおそらく常識は通用しない。考える事をやめ、繋がれた手を強く握った。




